ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

誰が、その言動、許可した?

2011-09-12 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
「何すんのッ!」腕を振り解いた拍子に、高く結った女の髪が…ふわさっ、と胸に当たった。
斯波「女が、一人…」そいつの顔を見たら…知らない女だった。当たり前だ。そんなわきゃ、ない…「こんなとこほっつき歩くなッ。お持ち帰りすっぞ」と脅したら、
「出来るモンなら…」キラッ、クナイ(両刃忍具)を「やってみなッ」チラつかせた。
斯波「ここらのモンじゃねぇな」見慣れない顔。それに、この道がどんなだか知らないようだ…「と!?」クイッと隆坊に腕を引っ張られて、
与一「ちょっと…」止めた。声に聞き覚えがあって…「もしかして、愛(めぐ)さん…?」
愛「あら、与一」高く鋭く、冷たい声…、
与一「やっぱり…そうだ」忠さんから、気をつけろ、と注意されていたが、
愛「どう、結婚生活は?ツネ様の妹君…平家の姫様、しかも宮中一の美人。当然、幸せよね」
与一「…」源氏の妹で清盛の娘…しかも、美しいと誉れ高いからこそ心配で、それに、
斯波「何が言いてンだ?」
愛「宮中じゃ、引く手数多の美人」クスッと笑って「そんな方を貰えて、良かったわね」
与一「と…」当然、そんな彼女を、この目じゃ…「とにかく、戻りましょう」と諭すと、
愛「ふんッ」腕を振り払い、ふさふさぁ…柔らかい黒髪を振り乱し、走り去った。
斯波「ンだぁ?ありゃ」後姿は似てる、だが…、
トーンを落として、ドスの利いた声で「何モンだ、アイツ?」と問い質した。
与一「…継さんの、妹さんです」
斯波「妹?」黒髪を目で追って「お前を、知っての事か?」
与一「…」出た。斯波さんの繊細な所…こういうのが一番嫌いなんだ。
斯波「ん?」俺の胸倉掴んで「どうなんだ?」
与一「…」知らないはずない…だが、
斯波「チッ」俺が自白しないと分かって、パッと手を放し「何だ、あの言動は?」
与一「…」俺の口を割らせるつもりですか?「ちょっと…」抵抗したかったが、斯波さんの怒りがピークに達して、迷ったが「前に…許婚を亡くしました」と彼女の事情を自白した。
そして、料亭までの帰り道、三年ほど前の、彼女と、伊勢さんの話をした。
斯波「斬首の刑…」
与一「それからです。彼女は、自暴自棄になって…」
斯波「で、誰が、人に毒を吐いて良しと許可した?えぇ?」と、まるで、俺への拷問…でも、
与一「すみません」彼女の心を知りながら未然に防ぐ事が出来なかった。俺たちの責任だ。