goo blog サービス終了のお知らせ 

ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~四国制圧~

2014-07-24 | 散華の如く~天下出世の蝶~
変その当日に、明智様の不穏な動きを察知し、
殿の居られる本能寺に走った老いぼれ上人と、
変後に、サルが取り仕切った殿の葬儀で、
殿の御遺体を運んだとされる近習、古新。
どうしてか…?
私はこの古新と共に行動することになる。
古新「帰蝶様、私も、京見学に付いて行って宜しいでしょうか」
帰蝶「ならぬ、早々帰られよ」
京見学…?
私は、ここに遊びに来たのではない。
殿が次に何をしようとお考えなのか、
現地調査を…、
「それに、小姓二人も連れて回れるか」
古新「なら、蘭…お前、明日帰れ、な」
そう言われてすんなり、
ぺっこりと頭を下げて、
蘭丸「は…」
スクッと立ち上がり、
「では私、これにて失礼致します」
さっさとこの場を退席。
帰蝶「蘭…?」
明朝には、もぬけの殻。
安土に帰ってしまった。
どうやら、
殿の傍仕えの方が、
気が休まるようだ。
それに蘭は、
私に疑いの目を向けていたし…。
“血の繋がりは、濃うございます”
私が、四国長宗我部制圧の足枷だと思っているのだろう。

散華の如く~蘭丸と、古新~

2014-07-23 | 散華の如く~天下出世の蝶~
帰蝶「御噂は、兼ね兼ね承っておりました」
清玉(せいぎょく)上人「何の噂かは知らぬが、恩を仇で返す坊主は、おらぬ」
帰蝶「世は非情、報恩無碍。仇となって地に落ちた坊主を存じておりまする」
床から出て…、
塩川「御方様、今宵はもう遅く、ここに…」
帰蝶「いや、南蛮寺で厄介になる」
清玉「おやおや、よほど坊主が憎いらしい。では…」
私たちを南蛮寺まで送るつもりか?
後ろに控える若僧に手で合図した。
帰蝶「御助け頂き、ありがとう存じます。後日、しっかりとお礼を…」
手で、お構いなく…と送迎を断り、
さっさと帰ろ…と?
「こ、古新?な、なぜ、そなたまでここに?」
殿と義兄弟の池田信輝(恒興)の次男坊で、
古新(こしんた)。後に名を輝政に改める。
信輝は古新を殿の近習(きんじゅ、奉仕)に出していた。
蘭丸と同じ年であり、稽古を付ける時も一緒であった。
※輝政は後に姫路城主となり、姫路城を現在の白鷺の姿に改修する。
古新「御屋形様にお許し頂き、蘭の京見学に付いて参りました、ね?」
その、しゃぁ~しゃぁ~とした態度…信輝譲りか。
蘭丸「…」
帰蝶「小姓が二人も殿の傍から離れて、」
注意しようとしたら、
蘭丸「力と坊も、今や立派な小姓」
我ら森兄弟を見くびるなと言わんばかりに睨んできた。
こういう鋭い視線を平気に向ける所は、可成様譲りか。
それに、森の五…いや、今は四兄弟…その結束は強い。
強くしているのは、おそらく、殿。
父を早くに亡くした森の子鬼たち、
殿に対する忠誠も深く、義理堅い。

散華の如く~織田軍師様~

2014-07-22 | 散華の如く~天下出世の蝶~
帰蝶「…で、織田軍師様は、私が明智様と繋がっている、というのか?」
蘭丸「血の繋がりは、濃うございます」
帰蝶「…で、事が済むまで、ここに?」
蘭丸「必要なモノがあれば、ここの住職に何なりと」
蘭丸の後ろから、のっそり、
老いぼれ坊主が入ってきた。
帰蝶「貴方様…、どこかで、」
一度?お会いしたことがある。
どこだったか、思い出せない。
沢彦様より、さらに年が上か。
阿弥陀寺の住職「懐かしや、マムシの姫君よ」
懐かしい…?
マムシの姫?
私がマムシの娘時代に会った坊主か?
帰蝶「私、いつ、どこで、住職様の説法を、お聞きしましたでしょうか?」
住職「いやいや、彼此三十年も前、この首を賭けて、マムシ殿に説教した事があって…」
鋭い視線を隠すように、
細い目をさらに細めて、
にっこ…と、薄気味悪い笑みをを浮かべて、
父マムシと、私の幼少期を重ねて見ていた。
帰蝶「父に説教するとは何と命知らずの御坊様か」
住職「織田家に拾われた命…いつでも捨てる覚悟」
帰蝶「殿の、拾い癖…私のマムシ時代からなのか」
住職「父の代、代々の癖にございましょう」
帰蝶「父…義父様?」
住職「私、信秀様に拾われ、軍師をしておりました」
帰蝶「義父様の軍師…」
住職「平手(信長の教育係)と共にマムシに頭を下げた事が、まるで昨日のことのよう…」
和睦のため、娘を人質に出せと父に迫ったのは、
帰蝶「貴方が、清玉…上人様?」

散華の如く~軍師としての、役回り~

2014-07-21 | 散華の如く~天下出世の蝶~
つまり、
帝との繋がりを絶つため、
明智様に国替えして頂く…と?
確かに、明智様は、昔から帝との繋がりが濃い。
朝廷の存在は殿の天下布武に遠く、邪魔な存在。
ここで武と官を切り離しておかねば、
“何も分かっておらん、のう”
天下を手中に収めながら、義兄に謀反を起こされ、
討死した我が父道三の、二の舞を踏むことになる。
帰蝶「明智様は、私の御従兄で…」
蘭丸「…」
言われなくても、分かっていますよと、
言わんばかりに一つ、コクッと頷いて、
キリッとした端正な顔と、
父譲りの鋭い目を向けた。
「ですから帰蝶様にはここでしばらく、ごゆるりと過ごして頂き」
帰蝶「殿が、私に隠居…しろと?」
蘭丸「御屋形様も事が済み次第、隠居されるとの事にございます」
帰蝶「済み…次第?」
蘭丸「御屋形様五十年の節目で天下総仕上げ、戦国乱世は終わる」
帰蝶「言うておくが、乱世が終われば、そなたらの役目も終わる」
蘭丸「軍師たるもの、時代が終わり、世が移っても、この役に終わりはございませぬ」
生涯天を目指せぬ軍師、
時に、主の影となって、
死に行く運命(さだめ)。
帰蝶「そなたを軍師として育てたのは殿…よもや、辛い思いをさせていているのでは…」
蘭丸の母、勝寿院様が蘭に贈った具足、
“南無阿弥陀仏”
軍師として役回りを悲観した母の思い、
蘭丸「御屋形様に拾われ、軍師として生まれ変わった事に一寸の迷い後悔もございませぬ」

散華の如く~蘭丸 VS.明智~

2014-07-20 | 散華の如く~天下出世の蝶~
目の前が真っ暗になって、気が付いたら、
私はどこか知らぬ場所で寝かされていた。
塩川「御方様…」
帰蝶「ここは?」
塩川「大事ございませぬか?」
帰蝶「ここ…まで、そなたが、私を運んだのか?」
塩川「体調優れぬのなら、そう仰って頂かないと」
彼女は、悉く、私の問いを覆してきた。
帰蝶「一体、誰が、私を、ここまで運んだ?」
塩川「…。ここのご住職様がたまたま通り掛かり…、手をお貸し下さいました」
帰蝶「ご住職が…?」
塩川「は…、運が良うございました」
帰蝶「ここのご住職…さぞ、お若いのであろうな?」
塩川「…」
彼女は口を一文字に結び、黙していた。
私の質問に答えたくないのだと思った。
帰蝶「礼を言わねば…、ご住職をこれへ」
すると、
す…と、
襖が開いて、
「蘭丸…」
頭を下げた。
蘭丸「申し訳ございません」
帰蝶「殿は、私が信用出来ぬ故、そなたを寄越した、そう解釈して良いな?」
この質問に対しても、悉く、覆してきた。
蘭丸「元々ここの住職は、近江の坂本に居られました」
帰蝶「近江…?」
蘭丸「御屋形様は私に近江を下さると」
帰蝶「そんなはずはあるまい。近江は」
蘭丸「明智様に、近江は重かろうと、そう仰せで…」

散華の如く~宗教の自由と、命の選択~

2014-07-19 | 散華の如く~天下出世の蝶~
有馬青年が勉学に戻った後、
私たちもマリアに一礼して、
賛美称賛を潜って、
南蛮寺を後にした。
ぐるりぐるり廻る寺と聖堂と、殿の言葉…、
“神も仏も、人を救うとは思えぬ”
人を救うのは人であり、
人を陥れるも人である。
信用信心は他の心から生まれ、
裏切りは人の心から生まれる。
信用できる人間か否かは、
宗教で決まるのではなく、
人の心で決まると言った。
しかし、心とは個々それぞれ異なった見解を持つ。
特にこの戦国時代、宗教が二極化し、古い戒律と、
新しい宗教観との狭間で苦しむ大将大名が増えた。
家臣が一人改宗すれば、一つ、問題が勃発し、
収拾が付かなくなり、切腹も出来なくなって、
“腹が切れぬなら、斬首も止む得まい”
結局、そうなってしまう。
「…もし、私が…」
塩川「御方様…?」
そういう状況に陥ったとしたら、
その時は、
“生か、死か…決めるのは天である”
40を半ば過ぎた頃から、
殿は死に対して、厳しくなった。
そして、冷静になってしまった。
対する私は、紅蓮の炎、多くの屍を見過ぎて…、
魂が、とても弱く、かなり脆くなってしまった。

散華の如く~自由とは…~

2014-07-17 | 散華の如く~天下出世の蝶~
本能寺の変の後、明智様によって捕縛されたヤスケは、
ここに連行され、青年十郎を尋ねて、肥前に向かった。
なぜ、幼い蘭丸兄弟を皆殺しにした明智様が、
黒人家来のヤスケだけをお見逃しなさったか?
それは、私がここに居たからであろうと思う。
帰蝶「そう、ここで神学を…。ヴァリニャーノ氏に習い、よう励まれよ」
有馬「は…、あの、安土方様、」
帰蝶「何か?」
有馬「洗礼を、御受けにならないのですか?」
帰蝶「わざわざ、神の洗礼を受けるまでもなく、毎日毎日が殿の洗礼」
塩川「然様、織田家に嫁いでからというもの日々鍛錬にございますね」
有馬「信長様の洗礼…」
帰蝶「そなたも、もう少し大きくなれば、受けるであろう、主の洗礼」
有馬「は…」
帰蝶「覚悟しておくが良い」
何とはなしに口にした“覚悟”であったが、
彼は切支丹であるが故に受難を強いられた。
秀吉の伴天連追放に苦しみ、さらに、
家康天下で起きた事件の責任を取り、
妻ルチアの前で家臣に首を落させる、
という非業の最期を遂げたとされる。
この時代、それぞれがそれぞれに、
宗教という枠組みの中で苦しんだ。
“神だの、仏だの、堅苦しい、のう?”
結局、
神の洗礼も、
仏の戒律も、
便宜形式上、
後の人間が作った、規則であり、
人の自由を制限するモノである。

散華の如く~切支丹大名~

2014-07-16 | 散華の如く~天下出世の蝶~
不意に視線を感じ、
後ろを振り返ると、
じぃ…と私を見つめる、少年がいた。
背丈、年の頃、蘭丸と同じくらいか?
帰蝶「あの…」
塩川「無礼であろう。そなた、この方は織田信長正室の、」
そこまで言うと、
彼はハッとして、
「安土方様とは知らず、ご無礼をお許し下さい。私、有馬 十郎 鎮純(しげずみ)と申します」
礼儀正しく、
頭を下げた。
帰蝶「有馬…肥前の?」
有馬「は、大友様の勧めで、ここセミナリオへ来ました」
ソルディ氏の話によると、
彼は早くに父を亡くし、長兄を亡くし、
四歳という若さで有馬の家督を継いだ、という。
肥前という切支丹には恰好の土地に生まれながら、
ずっと切支丹に反抗し、入信を拒んでいたらしい。
それが、どういうわけか?
秀吉の家来である、大友宗麟の影響か?
それとも、イエズス会の熱心な勧めか?
13の時、人生の転機が訪れる。
ある牧師に神学を学ぶうちに、
ソルディ「ヴァリニャーノが連れて来たセイネンで、」
アレッサンドロ・ヴァリニャーノ氏はイエズス会の司祭であり、
修道士育成のためのセミナリオ(神学校)を設立した一人である。
この年1580年、セミナリオの少年4人が使節団として西洋に旅立つ。
これが天正遣欧少年使節で、この中に、この青年、有馬 十郎もいた。
彼はこの船の中でヴァリニャーノ氏の洗礼を受けたとされる。
※同年、肥前にもセミナリオ、修道院セミナリョが作られた。

散華の如く~迷いとズレと、揺らぎ~

2014-07-15 | 散華の如く~天下出世の蝶~
殿の思い描く、
泰平の世とは?
天下布武とは?
この疑問は晩年の、
私の課題となった。しかし、
果たして、殿の課題とは…?
ソルディ「オヤカタサマに、コレなど、イカガにございましょう?」
彼らは殿の好みそうなモノを熟知していた。
異国の美しきモノ、珍しいモノ、
日ノ本にはないモノを献上して、
帰蝶「さぞ、…殿も喜びましょう」
一つ、また一つと殿の所蔵品が増え、
私の嘘が一つ、また一つ積み重なる。
この貢物の意味が分からないのでなく、
“神は、貢いだモノのみ救うのか?”
多くの貢物には、何の意味もないのだ。
“布施寄進で人を救う仏と同じか?”
仏は焼き討ち、神は磔、
“なぜ、誰も声を上げぬ?”
救ってくれと、なぜ、声を上げぬ?
なぜ、我が前に出て、命乞いせぬ?
救いの声が上がらない現実と、
己可愛さだけに生きる人間と、
神と仏と自身に絶望していた。
“人の心気が読めぬモノは要らぬ”
殿が目指される理想郷、天下布武と、
私の思い描く泰平の世にズレが生じ、
彼らの話を聞くたびに、私の心に迷いが生じた。
それを、チクリ、チクリと伴天連は刺していく。
伴天連に刺された所から心に揺らぎが生まれた。

散華の如く~本当の泰平とは…~

2014-07-14 | 散華の如く~天下出世の蝶~
ヤスケの古巣は、嘘の居城。
にこにこ、朗らかに笑って、
我らを歓迎するこの者たち。
崇拝するのは天主デウスか、
イエスか、マリアか、殿か。
ただ、もし殿が失脚したら、
掌をコロッと返すであろう。
一時だけの脆い信頼である。
人は義に動かず、利に動く。
短く薄い歴史の関係である。
篤い信仰とは、何であろう?
私は、教え込まれて感化された宗教心より、
異国の智慧や世の美しくモノが好きである。
デウスがどうしたこうしたという話よりも、
古来の宗教感覚を払拭した話が好きである。
“日ノ本の神々は、まだまだ小さい…のう”
初めて知った西洋の味、丸ボーロのような西洋菓子に、
味を足す事でより深くなる宝石の琥珀のような飲み物。
足す、引きを繰り返し磨かれる文化に魅了されていた。
ただ、どちらかと言えば、何も足さない方が馴染み易い。
私は殿のように常に変化、革新に邁進する性格ではない。
何を足して、何を引けば、調和するのかが、分からない。
私は殿のようにごくごく、異国文化をぐいぐい吸水する、
そんな器用な性格でも、舌でも、心でも、頭でも、ない。
人を足したり、首を切ったり…、それで良いのだろうか?
それで、
世の泰平天下布武が来るのか?
いつか、
坊主と伴天連が和合するのか?
私には、分からない。