閣議決定を次々逸脱 安保法制の与党協議(中日新聞 核心 2015年2月26日)

2015-02-26 19:10:32 | 桜ヶ丘9条の会
閣議決定を次々逸脱 安保法制の与党協議 

2015/2/26 中日新聞

 安全保障法制の新たな方針を定めた昨年7月の閣議決定に基づく与党協議で、米軍など他国軍の戦闘支援の範囲を可能な限り広げようとする政府・自民党の姿勢が鮮明になっている。閣議決定は自衛隊の活動地域を拡大する内容だが、それを超えるような案を次々と提示しているのだ。慎重な議論を求める公明党は懸念を強めている。

■変更

 安保法制の閣議決定のうち、自衛隊による海外での戦闘支援に関する最大の変更点は「非戦闘地域」の考え方をなくしたことだ。

 政府は従来、憲法九条が紛争を解決する手段としての武力行使を禁じていることを踏まえ、可能な支援は他国軍の戦闘行為と「一体化しないこと」と定義。「非戦闘地域」「後方地域支援」との表現を使って自衛隊の活動内容を決めてきた。インド洋の公海上での給油や、激戦地から離れたイラクの地方都市での人道復興支援が実例だ。

 だが、閣議決定で「非戦闘地域」でなくても「現に戦闘を行っている現場」以外なら支援できると転換。激戦地の近くで他国軍の支援が可能になる。例えば、街が破壊されていても、直接の戦闘が行われていなければ活動できるという政府側の見解もある。安倍晋三首相は「戦闘を行っている現場になる場合は、直ちに活動を中断する」と説明するが、これまでと比べものにならないほど自衛隊が危険な任務に従事する可能性が出ている。

■拡大

 実際に自衛隊を派遣できるようにするには法整備が必要。法案づくりに向け、自民、公明両党が中身を議論しているが、政府・自民党の主張は閣議決定の内容をはみ出している。閣議決定には「必要な支援活動を実施できるようにするための法整備を進める」と書いてあるだけだが、政府・自民党はあいまいな表現を根拠に、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の制定を主張している。

 これまで政府は、朝鮮半島有事などを想定した周辺事態法以外は、目的と期間を絞った特別措置法で対応してきた。対する恒久法に目的や期間の限定はなく、政権の裁量で自衛隊派遣を判断できる。

 「閣議決定で示された新たな考え方の実例がないのに、いきなり一般法(恒久法)なのか」。公明党の北側一雄副代表は二十日の与党協議で、政府・自民党をけん制。公明党側には、事態のたびに特措法で対応すべきだとの意見がある。

■記載なし

 ほかにもある。閣議決定は戦闘支援が必要になる場面を「国際社会が国連決議に基づき一致団結して対応するようなとき」と指摘し、国連安全保障理事会の決議を唯一の具体例に挙げた。だが、政府は与党協議で「国連決議がある場合に限定すべきではない」と明言。閣議決定に記載のない他国軍への弾薬の提供や、発進準備中の航空機への給油も解禁したい考えだ。

 さらに、政府は周辺事態法の改正も提案。同法は日本周辺で「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」が起きた際の米軍支援が目的だが「周辺事態」の概念をなくして範囲を広げ、対象を米軍以外の他国軍に広げることも求めた。いずれも閣議決定では一切触れていない。

 与党協議座長の高村正彦自民党副総裁は一月に「閣議決定の中身に過不足ない法案にしてもらいたい」と述べていたが、政府・自民党の提案は明らかに閣議決定の内容を超えている。公明党幹部は「いつでもどこでも自衛隊を派遣できるような法律は通らない。しっかり議論しなければならない」と強調する。

◆「PKO以上の厳格な要件必要」 海外派遣で公明・北側副代表 

 公明党の北側一雄副代表は二十五日、安全保障法制をめぐる党検討委員会で、国連平和維持活動(PKO)以外の国際的な平和協力活動や、他国軍の後方支援のため自衛隊を派遣する際、PKO参加五原則以上の厳格な要件が必要と政府側に求めた。

 北側氏は要件について「日本が参加したいのであればPKO参加五原則以上の原則があって初めて容認される」と強調した。検討する際の観点として「派遣の正当性」「憲法が禁じる『他国の武力行使との一体化』回避」「隊員の安全確保」を例示した。

 PKO協力法は参加要件として(1)紛争当事者間の停戦合意(2)当事者による日本のPKO参加への同意(3)中立的立場の厳守(4)以上のいずれかが満たされなくなった場合の即時撤退(5)要員の生命保護など必要最小限の武器使用-の五原則を掲げている。

 会合で政府側は恒久法の必要性について「普段から各国と連携した情報収集や訓練が可能で、派遣のための調査や、迅速な準備が可能だ」と説明した。これに対し公明党側から「(恒久法の方が)迅速に対応できるとは言い切れない」と反発する意見が出た。

(政治部・中根政人、金杉貴雄)