長崎平和宣言(2017年)

2017-08-23 16:00:05 | 桜ヶ丘9条の会
長崎平和宣言(2017年)
「ノーモア ヒバクシャ」
この言葉は、未来に向けて、世界中の誰も、永久に、核兵器による惨禍を体験すること がないように、という被爆者の心からの願いを表したものです。その願いが、この夏、世 界の多くの国々を動かし、一つの条約を生み出しました。
核兵器を、使うことはもちろん、持つことも、配備することも禁止した「核兵器禁止条 約」が、国連加盟国の6割を超える 122 か国の賛成で採択されたのです。それは、被爆者 が長年積み重ねてきた努力がようやく形になった瞬間でした。

私たちは「ヒバクシャ」の苦しみや努力にも言及したこの条約を「ヒロシマ・ナガサキ 条約」と呼びたいと思います。そして、核兵器禁止条約を推進する国々や国連、NGOな どの、人道に反するものを世界からなくそうとする強い意志と勇気ある行動に深く感謝し ます。
しかし、これはゴールではありません。今も世界には、15,000 発近くの核兵器がありま す。核兵器を巡る国際情勢は緊張感を増しており、遠くない未来に核兵器が使われるので はないか、という強い不安が広がっています。しかも、核兵器を持つ国々は、この条約に 反対しており、私たちが目指す「核兵器のない世界」にたどり着く道筋はまだ見えていま せん。ようやく生まれたこの条約をいかに活かし、歩みを進めることができるかが、今、 人類に問われています。
核兵器を持つ国々と核の傘の下にいる国々に訴えます。
安全保障上、核兵器が必要だと言い続ける限り、核の脅威はなくなりません。核兵器に よって国を守ろうとする政策を見直してください。核不拡散条約(NPT)は、すべての 加盟国に核軍縮の義務を課しているはずです。その義務を果たしてください。世界が勇気 ある決断を待っています。
日本政府に訴えます。
核兵器のない世界を目指してリーダーシップをとり、核兵器を持つ国々と持たない国々 の橋渡し役を務めると明言しているにも関わらず、核兵器禁止条約の交渉会議にさえ参加 しない姿勢を、被爆地は到底理解できません。唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約 への一日も早い参加を目指し、核の傘に依存する政策の見直しを進めてください。日本の 参加を国際社会は待っています。
また、二度と戦争をしてはならないと固く決意した日本国憲法の平和の理念と非核三原 則の厳守
を世界に発信し、核兵器のない世界に向けて前進する具体的方策の一つとして、 今こそ「北東アジア非核兵器地帯」構想の検討を求めます。

私たちは決して忘れません。1945 年8月9日午前 11 時2分、今、私たちがいるこの丘 の上空で原子爆弾がさく裂し、15 万人もの人々が死傷した事実を。
あの日、原爆の凄まじい熱線と爆風によって、長崎の街は一面の焼野原となりました。 皮ふが垂れ下がりながらも、家族を探し、さ迷い歩く人々。黒焦げの子どもの傍らで、茫
然と立ちすくむ母親。街のあちこちに地獄のような光景がありました。十分な治療も受け られずに、多くの人々が死んでいきました。そして 72 年経った今でも、放射線の障害が被 爆者の体をむしばみ続けています。原爆は、いつも側にいた大切な家族や友だちの命を無 差別に奪い去っただけでなく、生き残った人たちのその後の人生をも無惨に狂わせたので す。
世界各国のリーダーの皆さん。被爆地を訪れてください。
遠い原子雲の上からの視点ではなく、原子雲の下で何が起きたのか、原爆が人間の尊厳 をどれほど残酷に踏みにじったのか、あなたの目で見て、耳で聴いて、心で感じてくださ い。もし自分の家族がそこにいたら、と考えてみてください。
人はあまりにもつらく苦しい体験をしたとき、その記憶を封印し、語ろうとはしません。 語るためには思い出さなければならないからです。それでも被爆者が、心と体の痛みに耐 えながら体験を語ってくれるのは、人類の一員として、私たちの未来を守るために、懸命 に伝えようと決意しているからです。
世界中のすべての人に呼びかけます。最も怖いのは無関心なこと、そして忘れていくこ とです。戦争体験者や被爆者からの平和のバトンを途切れさせることなく未来へつないで いきましょう。
今、長崎では平和首長会議の総会が開かれています。世界の 7,400 の都市が参加するこ のネットワークには、戦争や内戦などつらい記憶を持つまちの代表も大勢参加しています。 被爆者が私たちに示してくれたように、小さなまちの平和を願う思いも、力を合わせれば、 そしてあきらめなければ、世界を動かす力になることを、ここ長崎から、平和首長会議の 仲間たちとともに世界に発信します。そして、被爆者が声をからして訴え続けてきた「長 崎を最後の被爆地に」という言葉が、人類共通の願いであり、意志であることを示します。
被爆者の平均年齢は 81 歳を超えました。「被爆者がいる時代」の終わりが近づいていま す。日本政府には、被爆者のさらなる援護の充実と、被爆体験者の救済を求めます。
福島の原発事故から6年が経ちました。長崎は放射能の脅威を経験したまちとして、福 島の被災者に寄り添い、応援します。
原子爆弾で亡くなられた方々に心から追悼の意を捧げ、私たち長崎市民は、核兵器のな い世界を願う世界の人々と連携して、核兵器廃絶と恒久平和の実現に力を尽くし続けるこ とをここに宣言します。
2017 年(平成 29 年)8月9日
長崎市長 田上 富久

加計学園の獣医学部を認めた国家戦略特区は「憲法違反」(日刊ゲンダイ2017年8月9日)

2017-08-23 09:47:21 | 桜ヶ丘9条の会
加計学園の獣医学部を認めた国家戦略特区は「憲法違反」
2017年8月9日日刊ゲンダイ

 安倍内閣の不正義を許さない――。文科省の大学設置・学校法人審議会(設置審)が25日にも結論を下すとみられている加計学園の獣医学部新設問題で、ついに法曹界が怒りの声を上げた。「加計学園問題追及法律家ネットワーク」(共同代表・梓澤和幸、中川重徳両弁護士)が、獣医学部の新設は「裁量権を逸脱・濫用する違憲かつ違法の決定」である疑いがあるとして、7日、国家戦略特区諮問会議で認定に至った経緯を確認するための質問状を安倍首相らに送ったのだ。

 質問状では、獣医学部の新設には、2015年6月の閣議決定で設けられた、既存の大学・学部では対応困難な場合や、近年の獣医師需要動向を考慮する――といった「石破4条件」を満たすことが不可欠だったにもかかわらず、議事録を確認する限り、加計学園では「具体的な検討・検証を経て共通認識に至った形跡が窺えず、石破4条件を充足するとされた確たる根拠は不明」と指摘。
特区認定が、憲法65条や内閣法4条の趣旨に反する――としているほか、国家戦略特区基本方針では、〈諮問会議に付議される調査審議事項について直接の利害関係を有する議員は審議や議決に参加させないことができる〉(特区法)とあるのに、加計孝太郎理事長と親しく「利害関係を有する立場」の安倍首相が認定したのは「違法なものというほかない」と断罪している。

 さすが法律家のグループだ。加計問題を「水掛け論」とトボケている安倍首相とは違い、法律に照らして的確に問題点を突いている。安倍首相は法律家グループの質問状に対して論拠を示して正々堂々と答えるべきだろう。

 指摘通りなら加計学園の獣医学部新設は違法となるわけだが、野党内からは、そもそも国家戦略特区自体が「憲法違反」との声が出始めている。

「憲法14条は、すべての国民は法の下の平等にあり、『政治的、経済的又は社会的関係において差別されない』と規定し、憲法95条は、地方公共団体のみに適用される特別法は、当該地方公共団体の住民投票で過半数の同意を得なければ、国会は制定できない――とある。しかし、国家戦略特区は住民の意思など全く関係なく、特定の地域に恩恵をもたらす仕組み。つまり条文の趣旨を明らかに逸脱しています」(司法ジャーナリスト)

 設置審が「憲法違反」の獣医学部新設を認可したら、日本は法治国家ではなくなってしまう。“壊憲”しか頭にない安倍首相にとっては、何とも思わないのだろうが、国民にとっては冗談じゃない。何が何でも新設を認めたらダメだ。