奇跡への絆

図師ひろき

延命の判断

2011年05月18日 22時40分20秒 | Weblog
 公務以外はじいちゃんのそばにいるようにしています。

 心拍数は毎分100前後…血圧は上が90前後で下が40前後…呼吸数は30~35…酸素の血中濃度が低くなると、異常を知らせるブザーが鳴り始めます。
 酸素の流量は毎分15㍑…看護師をしているおばでさえ

 「こんなたくさん吸わせてるのは始めて見る…」

 と言うほど、なんとか呼吸が続いている状態です。

 そんな時、主治医から

 「現在は貧血状態にあります…輸血をすれば状態が改善される可能性があります…どうされますか?」

 と治療提案がありました、その旨を親父に伝えました。

 すると親父は

 「俺は詳しいことは分からん…お前が決めろ。」

 私に判断が任されました。

 「輸血をすれば意識レベルが回復して、意思疎通が可能になりますか?しゃべれるようになる可能性がどれほどありますか?」

 「…やってみないと分かりませんが、可能性は高いとは言えません…」

 迷いがなかったと言えば嘘になりますが、心が決まるまでの時間は長くありませんでした。

 「輸血は見送らせてください…このまま安らかに看取ることができれば十分です。」

 そう伝えた後で、じいちゃんの姿を見た時、不安な気持ちが一気に込み上げてきました。

 “少ない可能性にかけてみるべきではないか…”

 “その判断は正しいのか…”

 “じいちゃんは、その判断を望んだのか…”

 「やっぱり輸血を…」

 主治医にお願いする衝動に駈られました…

 それでも

 “介護が必要な状態になって、じいちゃんとこれからどうしたいかを一番聞いたのは俺。”

 “じいちゃんはむげな延命を望んではいなかった。”

 “じいちゃんは家での暮らしを切望していた。”

 “今できる最善は、手を握り、静かに見送ってあげること…”

 家族も納得してくれました。

 今、また酸素血中濃度低下を知らせるブザーが鳴りはじめました…


 家族の看取りは誰しもが通る道です。

 家族の延命判断を委ねられることは何も特別なことではありません。

 是非、大切な人と語り合ってください。

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