中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

(プラス情報)発達障害の人材

2024年06月15日 | 情報
発達障害の人材 企業熱視線…ニューロダイバーシティ 多様な能力 生かせる環境整備
2024/06/13 読売

発達障害や精神障害のある人の特性を理解し、活躍を促す取り組みが企業で注目されている。成長戦略としての意味合いが強く、背景には、多様な能力を積極的に生かそうという「ニューロダイバーシティ」と呼ばれる考え方がある。(編集委員 二階堂祥生、社会部 田中文香)

採用時から工夫
 プラント大手・日揮ホールディングス傘下の「日揮パラレルテクノロジーズ」(横浜市)は、グループ各社のIT関連業務を請け負うため、2021年に設立された。現在、主力となっているのは発達障害や精神障害のあるエンジニア32人と身体障害者の2人で、6人のマネジャーがサポートする。
手がける内容は多岐にわたる。例えば、グループが進める月面開発プロジェクトに関し、日揮パラレル社は月面のメタバース(仮想空間)作りをサポートしている。ほかにも、過去のデータをもとにプラント設計を最適化するソフトや、社内情報を横断検索できる機能を提供するなど、従来は社外に発注するか手つかずだった仕事を次々と形にしており、依頼や問い合わせが急増しているという。
エンジニアが抱える特性は、人とのコミュニケーションが苦手だったり、感覚が過敏でオフィスの光を苦痛に感じたりと様々だ。一方で、集中力を維持したまま継続して物事に取り組んだり、高い創造力を発揮したりと、独自の強みを持つ人が多くいる。日揮パラレル社では、各自がそれぞれの特性に応じて働けるよう、多くの工夫をこらす。
採用時には、業務をベースにした課題を解いてもらって能力を見極め、自身の特性などを明確にしてもらう。
請け負うのは、重要でも緊急性の低い仕事に絞り、各人が自分のペースで働けるよう、チームではなく個人単位で割り当てる。
完全在宅勤務を認め、基本的に働き方は自由。あくまで仕事の成果を重視する。他方、 進捗しんちょく 状況や体調などは毎日報告してもらい、マネジャーが相談に乗ったり、アドバイスしたりする。
当面は毎年10人程度のペースで雇用を増やす計画で、応募倍率は7倍に上るという。 阿渡(あわたり) 健太社長は「働く環境が整いさえすれば、高い能力を発揮する人材は多い。外部からの仕事を増やすなど、さらに事業を広げていきたい」と話す。

欧米先行
 発達障害などがある人の高い集中力や知識を生かす動きは、2010年頃から欧米の企業で浸透してきた。ソフトウェアのテスト業務を手がけるデンマークの企業が先駆けとされ、マイクロソフトやIBMといったIT大手が導入したほか、金融や製造など多くの企業が取り入れている。
あわせて広がったのが、「ニューロ」(神経・脳)と「ダイバーシティー」(多様性)を組み合わせた「ニューロダイバーシティ」という考え方だ。本来は、個々人の多様な特性を尊重しあい、社会の中で生かしていこうという広い概念だが、実際には企業経営の文脈で使われることが多い。女性や人種的少数派の登用など多様性を重視する経営の一環と言える。

人事・組織 見直す契機
日本企業の採用意欲は、総じてまだ高いとは言えない。経済産業省が公表した委託調査によると、障害者全体の就職率が46・2%だったのに対し、発達障害がある人は33・1%だった。働いていても、周囲の十分なサポートを受けられず、本来の能力を発揮できないケースが少なくないとされる。
ただ、国内でも以前から、ITやゲームなどの企業が、高い集中力を持つといった優れたスキルに着目し、社員に採用している。就職支援を手がける企業もある。
最近では日揮をはじめ積極的な企業が増え始め、ニューロダイバーシティという考え方も少しずつ広がっている。
武田薬品工業は22年、拠点のある東京・日本橋周辺の企業などに呼びかけ、「日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト」を始めた。現在は16企業・団体が参加し、講演会を開くといった啓発活動に取り組んでいる。
4月10日に東京都中央区で開いたイベントには、約10の企業・団体が参加し、発達障害のある人に仕事の経験を聞いたうえで、自社で採用する場合にどのような対応が必要になるかを議論した=写真=。
このほか、東京都は3月、「成長戦略としての障害者雇用」のタイトルで、ニューロダイバーシティへの取り組み方や実例などをまとめた事例集を出した。
一段の広がりに向けて、課題は何か。
日本では、新卒学生を一括採用し、様々な部署を経験させてスキルを身につけさせる「メンバーシップ型」の人事制度が一般的で、専門的なスキルよりコミュニケーション能力が重視されがちだ。一方、発達障害などがある人に対しては、職務内容を明確にする「ジョブ型」が基本になり、調整が必要になる。
また、中小企業にとっては、多様な働き方を認める余力がなかったり、ノウハウが乏しかったりといったハードルが指摘される。
とはいえ、企業にとってニューロダイバーシティに取り組むメリットは、人材の確保だけではない。障害がある人と一緒に働くなか、社員の間で不得意なことをカバーし合う機運が高まり、挑戦的な活動がしやすくなるといったメリットがあるとされる。
野村総研メドテックコンサルティング部の高田篤史氏は、ニューロダイバーシティについて、「既存の人事や組織のあり方を見直し、生産性を高めるための重要な考え方だ」と指摘。「導入するのは難しいように思われるが、実際はマネジメント(経営管理)の工夫で対応できる面が大きく、企業は積極的に取り組む必要がある」と指摘する。

◆発達障害= 生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、行動面や情緒面に特徴がある状態を指す。対人関係を築くのが苦手だったり、こだわりが強かったりする「自閉スペクトラム症(ASD)」、注意が持続しにくい「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、知的発達に問題はないが読み書きや計算が困難な「学習障害(LD)」などがある。
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