中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

復職後、部長からヒラに

2017年10月30日 | 情報

「復職後、部長からヒラに」久光製薬社員が提訴
産経新聞 17.10.26

約1年の休職後、3回にわたり降格、減給されたのは違法として、
久光製薬(東京都千代田区)の男性社員(58)が、部長職の地位確認と未払い賃金約965万円の支払いを求め
東京地裁に提訴したことが26日、分かった。
弁護人によると、男性は子会社の副社長を務めるなど20年以上にわたり主に広告分野で活躍。
しかし、通販健康部の部長だった平成21年、会社の指示で参加した自己啓発セミナーをきっかけに適応障害となり
約1年間休職。復職後、3回にわたり降格されて一般社員となり、給与は約29万円減らされた。
男性は「『今は病気を良くすることだ。また戻れるから』と説明され総務部に異動となったが、
その後も2度にわたり降格された。会社にだまされたようなものだ」と訴えている。
久光製薬は「コメントは差し控える」としている。

(考察)
結論は、「降職は可能だが、降格は難しい、」です。
なお、小職が述べるより、参考になる情報を見つけました。
(独)労働政策研究・研修機構のHPより、いただきました。
http://www.jil.go.jp/rodoqa/07_jinji/07-Q15.html

降格については、人事上の降格か懲戒処分としての降格かをまず区別する必要があります。
人事上の降格は、役職(職位)の引下げに関しては企業に裁量が認められ、
権利濫用等にあたらない限り行うことができますが、資格(職能資格)の引下げは、労働契約上の根拠、
降格に値する能力低下の有無、企業の権利濫用の有無などがより厳しく問われることになります。
降格には (1)職位(役職)を低下させる降格(昇進の反対)と
(2)資格(職能資格)を低下させる降格(昇格の反対)があります。
同じ「降格」の表現を用いるので、中身がどちらを指しているのか事案ごとに注意する必要があるでしょう。
また、以下では人事権の行使の一環としての降格について解説しますが、
懲戒処分として降格がなされる場合もあります。その場合は、懲戒処分として法規制を受けることになります。

人事権の行使としての降格について、まず (1)職位(役職)の低下(昇進の反対)の場合、
使用者の裁量の幅が広いのが特徴です。成績不良、適格性の欠如など業務上の必要性があれば、
権利濫用(労契法3条5項)にあたらない限り裁量によって行うことができると解されています
(東京地判平成2・4・27 エクイタブル生命保険事件 労判565号79頁など。
理論的には、職位の引下げに関しては使用者の裁量で行うことができるということが、
一般に労働契約の内容として含まれていると解されます)。

次に (2)職能資格の低下(昇格の反対)の場合、(1)に比べて使用者の裁量の幅が狭いとされるのが特徴です。
理由として、職能資格の低下は多くの場合基本給の変更をもたらす労働契約上の地位の変更といえるからです
((1)の場合は、役職手当等が減ることで収入額は減少したとしても、
資格に基づく基本給は変わらないと考えるわけですね)。
よって、(2)の降格を適法に行うためには、前提として労働契約上の根拠が必要です。
降格に対する労働者の同意や、就業規則上の(合理的な)根拠規定が必要ということになります
(広島高判平13.5.23 マナック事件 労判811号21頁)。
そして、たとえ労働契約上の根拠があったとしても、実際に降格に値する能力の低下があったか否か、
使用者側に権利濫用があったか否かが法的に問題となります
(東京地判平成16・3・31 エーシーニールセン・コーポレーション事件 労判873号33頁など)。
例えば、降格に際し基本給が著しく大きく引き下げられるといった事情があれば、
権利濫用の判断の際に考慮されることになるでしょう。(成蹊大学法学部准教授 原 昌登氏)


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