中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

衛生委員会は、難題ですか?(第5編)

2016年04月25日 | 情報

さて、意外と質問が多いのが、「常時50人以上」とは、に関連する疑問です。

まず、安衛法は、企業単位ではなく、事業場単位で法令が適用になることを理解してください。
この考え方が理解されていない、または、理解されにくいようです。
法18条、令9条において、
「事業者は、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、一定事項を調査審議させ、
事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。」
と規定していることは、周知の事実です。
なお、安全委員会も(法18条)も、ほぼ同様に規定されています。

さて、「常時50人以上」とはの解説です。というよりも再確認です。
厚労省の通達、基発602号(昭和47.9.18)において、
「常時〇〇人以上の使用労働者」とは、「常態として使用する労働者が〇〇人以上という意味であり、
当該労働者には常用労働者だけでなくパートタイマー、日雇労働者等の臨時的労働者も含まれる。」であり、
「継続して雇用し、常態として使用しているのであれば、たとえ、週1回勤務でも、常時使用する労働者である。」
と解説されました。

派遣労働者は、基発第0331010号(平成21年3月31日)
「派遣労働者に係る労働条件及び安全衛生の確保について」において、
「事業場の規模には派遣元、派遣先それぞれで派遣労働者数をカウントする」
とされています。

つまり、継続して雇用し、常態として使用しているのであれば、たとえ、週1回勤務でも、常時使用する労働者であれば、
常用労働者だけでなくパートタイマー、日雇労働者等の臨時的労働者、及び派遣労働者も含めてカウントすることになります。

以下は、当ブログからの再掲です。参考にしてください。
ストレスチェックの準備情報① 2015年9月9日

1.衛生委員会は、50人以上の労働者を使用する事業場ごとに設けるとありますが、「事業場」とは何ですか?
・事業場とは、一定の場所で事業が継続的に行われる作業場のことです。
従って、企業単位ではなく、事業場単位で、法令が適用されます。
例えば東京に本社があり、都道府県所在地に支店があれば、それぞれが一つの事業場となります。
ただし、同じ場所にあっても、工場の中にある診療所や食堂のように労働の態様が全く異なる場合は、
別の事業場として扱うこともできますし、出張所のように別の場所にあっても、
著しく小規模で自ら何らの意思決定をしない、独立性のない事業場は、すぐ上の事業場と一括して扱います。
企業としては、こうした原則の範囲内で、「事業場」を確定いただくことになりますが、
労基署は、実態として法令順守されていることを重要視していますので、ある程度の運用は認められると考えています。

2.衛生委員会は、50人以上の労働者を使用する事業場ごとに設けるとありますが、なぜ、50人以上なのですか?
・法令上、衛生委員会の場合は、「事業者は、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに」(法18条、令9条)となっています。
まず、「常時50人以上」とは、常態として使用する労働者が50人以上ということですので、
当該労働者には、常用の労働者のみではなくパートタイマーや日雇労働者のような臨時的労働者も含まれることになります。
なぜ、50人かということですが、小生の承知している限り、50人に決定的な根拠はなく、決め事であるということです。
ですから、これが30人でも、100人でもよいのですが、法令で50人としているということで理解してください。

3.事業所の人数が、ある時は50人以上、ある時は50人未満になりますが、衛生委員会はどのように運営したらよいのでしょう?
・実態として、事業場の労働者の人数が、前月は50人以上、前々月は50人未満、半年前は40人、という状況が起こりますが、
その都度、「法令通り」にと言われても、企業も労基署も困りますので、労働者の人数に多少の増減があっても、
一度設置した(安全)衛生委員会は、継続して実施することが望ましいと考えます。

4.法令通りに解釈するのならば、同じビル内に、上位と下位とで、50人前後の事業所がふたつありますが、
これを統合しても構いませんか?
・筆者の考えですが、労基署は、企業の組織、意思決定の決まり方などは知り得ない立場ですので、
法令の精神が順守されているのであれば、統合することは全く問題のないことと考えます。
反対に、場合によっては分割することも可能です。

5.衛生委員会の委員について、人数、資格、立場等はどのように考えればよいのでしょう?
・安全委員会の委員は、法17条、衛生委員会の委員は、法18条、安全衛生委員会の委員は、法19条に、明確に規定されています。
しかし、私見ですが、事業所の責任者が委員長、衛生管理者、安全管理者、産業医が常任の委員になっていれば、
結果として、事業所全体の意見が集約できればよいのであって、あとは事業所責任者の判断で、
人数、資格、立場等を任意に決めればよいと考えています。あまり杓子定規に考えなくても、よいのではと考えています。
問題は、実態です。
全ての質問に共通するのは、
・企業の担当部門のみなさんが、真摯に問題に対処している様子が窺える
・大切なのは、「かたち」ではなく、法令の精神を順守することであるということです。
なお、法令の精神とは、法第1条・目的を指します。
「労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、
責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより
職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。」

 

 

 

 

 

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