中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

SC(ストレスチェック)制度の準備情報・質問編⑱

2016年04月06日 | 情報

Q:ストレスチェックマニュアル65頁では、従業員が医師の面接指導を受ける際に、職場を離れることになりますが、
その際には、上司にその理由を伝える必要がないと記されています。
「〇面接指導は原則的には就業時間内に設定しましょう。
日時の設定に関しては、曜日や時間帯を柔軟にして、対象者が面接指導を受けやすい環境を整える配慮が必要です。
また、就業時間内に面接指導を受ける際には、必ずしもその理由を伝える必要はありませんが、
労働者の上司等の理解を得ておくことも重要です。」
しかし、弊社の就業規則では、離席する場合は上司の許可が必要としています。
無断で離席できるのは、生理的現象のみであり、もし無断で離席すれば、懲戒の対象になります。
どのように対処したら良いのでしょうか?

A:前回の質問編⑰と似た質問です。しかし、多くの疑問、質問が寄せられていますので、詳しく解説します。
それに、個人情報保護の観点、労務管理上の問題等、制度運営上、とても重要な問題と認識しています。

ご質問の通り、民間の事業場では、通常の場合、上司あるいは管理職の許可なしには、職場から離れることはできません。
それでは、どのようにすれば良いのか。
まず、ストレスチェック制度の具体的な実施要領を調査審議する、御社の衛生委員会において、
具体的な面接指導のプロセスを、ステップごとに確認します。
すなわち、当事者が医師の面接指導を、就労時間内に受けるわけですから、
どうしても職場を一時的に離席することになります。
これは、面接指導の対象になるすべての従業員が、同様の状況に直面することになるのですから、
面接指導を受ける場合は、上司の了承・許可を受けなければならないと、原則を取り決めます。
そして、上司には守秘義務を課します。そして、個人情報の漏えいには該当しないこととする、
例外規程を、御社のストレスチェック制度の実施要領に規定します。
このようにすれば、個人情報保護法のしばりを回避することができますし、
上司・管理職と当該従業員との人間関係も壊れる心配もなくなります。
ちなみに、重複しますが、「氏名」は個人情報の対象として、個人情報保護法の第2条に、記載されています。
もうひとつ、大切なことを。
部下から、面接指導の希望者が出たら、上司の心境はどうでしょうか?
事前に、管理者教育も必要になるでしょう。
準備が不十分だと、社内、事業所内に「気まずい」雰囲気が充満することになります。
職場環境改善どころではなくなる危惧もあります。
ストレスチェック制度が引き起こす影響の大きさを理解しましょう。

なお、小生の推測ですが、ストレスチェックマニュアル65頁に記載されている文章は、
行政が個人情報保護法に抵触することを危惧した証左に他なりません。
ストレスチェックマニュアルには、いくら法的拘束力がないといっても、
稚拙な説明であると言われても致し方がない箇所が散見されますね。

コメント
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