熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

低炭素社会:時代の潮流を見誤った経団連の転進

2008年02月23日 | 地球温暖化・環境問題
   経産省が、地球温暖化対策に対して、EUのキャップ&トレード方式の導入を検討するとの日経記事を読んで、2月21日に、経団連の自主規制方式に対して疑問を呈するブログを書いたが、同日に、経団連の御手洗会長が、大分での記者会見で、EUの排出権取引を容認する姿勢を示したと、翌日の日経朝刊が報じた。
   その記事のタイトルが、”EUの排出権取引、経団連会長が容認姿勢「潮流踏まえて検討」”と言うのだから、その時代認識の甘さと言うか、ビジョンと定見の無さに呆れざるを得ないが、これでは、榊原英資教授でなくても、「日本は没落する」と言わざるを得ない。

   経団連は、1997年に、「経団連環境自主規制計画」をぶち上げて、10年以上も、排出権の公平な割り当てが困難であるなどと理屈をつけてEU型のキャップ&トレード方式に執拗に反対し続けて来ており、
   御手洗会長は、12月の鴨下環境相との会合においても、地球温暖化ガス排出の上限を設けるキャップ&トレード型の国内排出権取引制度の導入に反対し、バリで開催中のCOP13において不合理な総量規制を受け入れるなど安易な妥協をしないように釘を刺していた。
   年頭での会合においてもこの見解を踏襲した発言をしており、環境省が、今年に入って、省エネ実績連動を軸とした「ベンチマーク方式」の導入など日本型排出権取引を検討に入ったが、これにも産業界は、EU方式だとして強く反対してきた。
   2月18日の日経とのインタビューで、経団連地球環境部会長である猪野博行氏が経団連の自主行動計画で、地球温暖化防止に十分対応出来ると言い切っており、低炭素社会に向かっての世界の潮流を考慮しようとする姿勢は微塵も無かった。

   ところが、アメリカ次期大統領がEU方式の導入を示唆し、経産省がこれに追随する姿勢を示し、福田首相が環境問題に対する有識者会議を設置する等と言った雪崩現象が起きてきた所為か、舌の根も乾かない内に、「欧米などの世界の潮流を踏まえて、環境問題をテーマとするサミットの主催国として、これを成功させるためにも検討して行くのがカギになる。」と言うのだから、何をか況やである。
   ここで気になるのは、この発言は、経団連の重要な方針の転換であるから、本来なら経団連の然るべき会議で機関決定されるべき重要案件だと思うのだが、経団連のガバナンスはどうなっているのであろうか。
   何れにしろ、地球温暖化対策にとっては良い方向に向かっているので、もう、これ以上何も言うまい。

   20世紀は安価な石油に依存して成長拡大してきた産業社会であったが、アメリカのような石油漬けの消費大国ではなく、幸いなことに、2次に渡る石油危機の為に、日本企業は省エネ技術の涵養に努めて生産技術や製品の質の向上に励んだ結果、そして、個別企業のCSR指向の経営努力のお陰で、産業の低炭素社会への対応は進んでいる。
   しかし、それは、個別企業ベースの努力であって、日本全体としてのエコイノベーションへの取り組みや、エコプロダクツ・エコサービスの創造への努力は勿論のこと、エコ社会への経済社会全体や法制度の整備などは、政府が強力なイニシャティブを取ってこなかった為に、EUと比べれば格段に遅れてしまっている。

   もう一つ温暖化対策について疑問なのは、福田首相が立ち上げる地球温暖化問題に関する懇談会(低炭素社会懇談会)の構成メンバーだが、福田首相は、「良いメンバーだ。電力・鉄鋼は日本の産業界の6割くらい温暖化ガスを排出している。そういう人に積極的に協力して欲しいという思いもあった。」と言っているのだが、そのこと事態がミスキャストではないのかと言うことである。
   産業界からのメンバーは、トヨタ、東京電力、新日鉄だが、これらの業界は、地球温暖化に最も貢献(?)し宇宙船地球号を追い詰めてきた会社であり、そのために見かけ上は、最も温暖化対策にも努力して貢献しているように見えるのだが、キャップ&トレードの排出権規制に執拗に反対してきた日本産業界のエスタブリッシュメント企業であり、足枷にこそなれ益になることはないと思われる。
   ソニーなどクライメート・セイバーのメンバーのように、しっかりとした経営哲学とビジョンを持って地球環境問題に取り組んでいる先進的な企業からメンバーを選ぶべきであろう。

   しかし、メンバーの中に山本良一東大教授が入っているので、十分にカウンターベイリング・パワーを発揮して貰って、本当に日本が低炭素社会のリーダーとなるような提言をしてくれることを期待したい。
   政府の地方分権改革推進委員会の丹羽宇一郎委員長が、後から鉄砲の玉が飛んでくるのを覚悟で引き受けたと言っていたが、このくらいの覚悟でないと、洞爺湖サミットで日本は赤恥をかくだけに終わってしまう。   
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