熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

幻の輝き”辻が花”の華麗さ――久保田一竹辻が花回顧展

2005年03月18日 | 展覧会・展示会
   今、日本橋高島屋で素晴らしい展示会「一竹辻が花・回顧展」が開かれている。着物に描かれた幽玄華麗なこの世とも思えない様な鮮やかな絹の輝きが見る者を圧倒する。
まず、入場すると、四季夫々に輝く精緻な錦絵の様な富士をモチーフにした素晴らしい造形が目を驚かせる。上部に富士の頂上が位置するので、裾野にかけての色彩の目の覚めるような変化とグラジュエイション、それに、微妙に浮き出して踊っている模様の豊かさに驚嘆する。
   友禅職人としてスタートした一竹が、国立博物館で遭遇した一片の小裂・辻が花の精緻を尽くした微妙な美しさに触発されて、江戸初期に姿を消したこの幻の造形を求めて独学で修行、60にしてやっと満足の行く作品に到達したとか。その後の25年に燃焼しつくした一竹の華麗な辻が花の世界が、縦横無尽に羽ばたいている、そんな異世界空間がこの会場である。
   胸を打つのが、未完に終わった連作「光響」、着物が何枚か連続で微妙に変化しながら一つの絵を構成している。その中でも最後の「宇宙」――80枚で構成するとか、真ん中に大きな太陽の弧が描かれていて、紅蓮のコロナが渦巻き咆哮しながら宇宙を圧している。中心の「宇」と下の「宙」は完成して居るが、周縁と上部は下絵だけで未完、しかし、29枚の下絵が、その壮大さを示して余りある。
   <光響>80連作の宇宙はこうなる!(Conposition of the "Symphony of Light" wiil be like this.) 死地を彷徨ったシベリヤで見た壮大な夕日が瞼から離れないと言う、一竹の究極のテーマ・平和への希求が胸を打つ。フランスの文化勲章シュヴァリエ賞を得、欧米各地で絶賛を博したと言うが、私も、随分世界各地の美術館や博物館、文化遺産等を周ったつもりだが、一竹辻が花の世界は、それに伍してヒケを取らない。
   会場には、一竹の筆などの道具、自作の羽織の紐、それに、世界から集めた素晴らしいトンボ玉の数々が展示されていて、ビデを室では、一竹能・舞衣夢(マイム)が上映されていた。会場には、一竹の華麗な衣装を纏った能面をつけた等身大の翁と二人の女人像が能舞台を再現する。
   歌舞伎や能の錦の衣装も素晴らしいが、この精緻を極めた絞りが浮き立つ染色による辻が花の美しさは、また、格別である。普通、展覧会場では素通りすることが多い、今回は、長い時間を会場で過ごした。素晴らしい感激の時間を持って幸せであった。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 華麗なウイーン・フィル・サ... | トップ | アルミンクのベートーヴェン... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

展覧会・展示会」カテゴリの最新記事