熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

AARP(全米退職者協会)ビル・ノベリCEOが語る

2007年03月16日 | 政治・経済・社会
   日経のシニア・ライフ・シンポジウムの竹中平蔵教授の後に、AARPのビル・ノベリ最高経営責任者が、大林尚日経論説委員との対談で、全米退職者協会の活動やベビーブーマーたちの動向などについて語った。
   50歳以上3600万人の会員を擁する世界最大のシニアNPOなのだが、会員にとって最もベネフィットとなっているのは、ノベリ氏も言っていたしホームページを開いても最初にクリックすべき位置にあるのが「Menber Discountd and Services」であるから、多くの商品やサービスに対する会員への割引販売や特典であるのが面白い。

   機関紙には、老人の生活を豊かにするための記事や公告が満載されているようだが、何処となく生活共同組合的なニュアンスがある。
   しかし、3600万人と言う国民の2割に近いメンバーを擁する団体であるから、シニア市場には抜群の影響力を持っており、政治的にも極めて強力な圧力団体であることには間違いない。
   話は全く違うが、エレクトリック・コンシューマー商品のメーカーの競争相手は同業の精密電気機器メーカーではなく、ヤマダ電機だと言われているが、正にこの世界と同じ現象である。

   1958年に退職した女性教員が、退職後に十分な年金もなく医療保険もない状態で多くの退職者が困っていることを実感して、高齢者の生活安定の為の戦いの場として創設された団体で、その後全米に組織を拡大して、老人差別撤廃や高齢者の生活の質の向上の為に活動を続けている。
   また、政府の高齢者政策に多大な影響を与え国連での国際高齢者会議での中心的な活躍をするなど発言権を増す一方、高齢者に対しても、自律と社会への貢献を呼びかけるなど多才な活動を行っている。

   アメリカの場合は、GMやフォードの経営を大きく圧迫している要因は企業年金や従業員健康保険関連の支出だと言われているが、逆に言えば、企業で働いている人々には手厚い厚生福利の恩恵が与えられているが、失業したり退職したりすると、生活が大変だと言うことなのであろう。

   日本では、国民健康保険制度が完備していて、所得や年齢、或いは、場所に関係なく国民は等しく上質な医療サービスを受けることが出来る。
   しかし、アメリカでは、公的な健康保険制度は、高齢者保険であるメディケアと低所得者保険のメディエイドの2種類しかなく、その他は一切民間の健康保険で、企業の健康保険制度から排除された低所得者は、殆ど健康保険に加入していないので、一度病気に罹ると死と直面せざるを得なくなる。
   クリントン政権時代国民健康保険制度を導入しようと言う動きがあったが、叩き潰されて日の目を見ていない。
   AARPが、老人健康保険や年金等についても活発に行動を起こしているようであるが、目的が老人退職者の地位向上、保護と言ったことなので、格差拡大による弱者保護と言う方向とは一寸違うのかも知れない。

   ところで、このシンポジウムは、日経とAARPとの共催だったが、後半のパネル「2007年問題とリタイアメント新創造」は、どうも生活臭が強そうだったので端折って帰ってしまった。
   AARPのノベリ氏は、何人かの役員を伴って来日していたが、日本にも「日本退職者協会」創立の動きがあるのであろうか。
   とにかく、職縁社会も薄れつつあり、団体や協会には比較的無頓着な日本人であるから、アメリカのような運動になるとは思えないが、団塊世代のリタイアメントが引き金になって、老人、退職者、などと言ったジャンル分けでかたまるのは、企業のセグメンテーション戦略ならイザ知らず、あまり好ましいようには思えない。

   大量生産・大量消費の工業社会の旗手として画一教育に訓練されて近代日本の成長発展をを支え続けてきた団塊の世代だが、竹中先生の説によると一番塊として見られるのを嫌がる世代だとか。
   個性豊かな八方破れの新生活文化を創造するような新しいライフスタイルを生み出して、イノベーションの起爆剤となるかも知れないのである。
   チャップリンが言ったと言う「夢と勇気とSOME MONEY」、新しい予感を感じて大きな世代が動き出したのである。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 英国の企業買収委員会の自主... | トップ | 松下ウェイ(2)・・・松下... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

政治・経済・社会」カテゴリの最新記事