熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ステファニー ケルトン:財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生(1)

2022年09月16日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   ステファニー ケルトンの「The Deficit Myth: Modern Monetary Theory and the Birth of the People's Economy財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生」をようやく手にした。
   現代貨幣理論 (MMT)については、以前から話題になっていて知っていたが、均衡財政こそが健全であって国家債務の増加などもってのほかとと言う考えであったから、国家の財政赤字は通貨発行権を有する政府が国債を発行して対処できると言った理論に、反発を覚えて、真面に向き合わなかったのである。
   財政赤字は殆ど国民経済にとって有益で有り必用なものだ。均衡予算という見当違いな目標を追い求めて、不十分な財政出動で景気回復を遅らせた。などと言った考えにはついて行けなかったのである。
   
   ニューヨークタイムズのベストセラー評では
   経済学に関する数十年で最も新鮮で最も重要な考え方であり、公正で繁栄した社会を構築する方法について、これまで考え方とは根本的に異なる、大胆な、新しい理解を提供する。
   更に、
   ステファニー・ケルトンの現代貨幣理論 (MMT) 論は、政府の赤字、財政危機は悪だとする新古典派経済学の常識、すなわち、神話をコテンパンに論破して、貧困や不平等から雇用の創出、医療保険適用範囲の拡大、気候変動、回復力のあるインフラストラクチャの構築に至るまで、重要な問題にどのように対処するのが最善かについての理解を劇的に変えてしまう。
   政府は無尽蔵に必用な通貨を発券できいくらでも返済可能なので、通説のように、企業や家計のように予算を組むべきであり、赤字は次世代に害を及ぼし、民間投資を締め出し、長期的な成長を弱体化させ、深刻な財政危機を惹起するなどと心配することはない。
   MMT は、狭い予算の問題から、より広範な経済的および社会的利益追求へと問題領域をシフトする。 MMT は、マネー、税金、赤字支出の重要な役割を理解するための重要な新しい方法を提示して、社会としての可能性を最大化できるように、リソースを責任を持って使用する方法を再定義する。 MMT は、新しい政治と新しい経済を想像し、希少性の物語から機会の物語へと移行する力を与えてくれる。
   と最大級の好評であるが、読み方によっては、違ってくるであろうと思うと興味深い。

   根本的な理解の違いは、これまで、財政という世界の中心は、納税者だと考えられてきた。それは、政府には独自の資金が全くなく、政府の活動を賄う資金は、すべて、我々国民が拠出しなければならないと考えられていた。
   しかし、MMTでは、あらゆる政府支出を賄うのは納税者ではなく、通貨の発行体、すなわち政府自身であると言う認識に立ち、これまでの理解を根本的に覆し、税金が政府支出の財源であると言うのは幻想である。と言うのである。
   確かに、先に、政府の支出や貸し出しがあって、マネーが民間経済に回って経済が動き、納税が可能となったのである。
   外国との取引を無視すれば、政府の赤字が民間の黒字であるから、政府の赤字が膨らまなければ民間の経済は縮小する。

   さて、ケルトンは、MMTについて、赤字を束縛してきた財政赤字の神話6つを糾弾している。
   1.政府は家計と同様に収支を管理しなければならない。
   2.財政赤字は過剰な支出の証拠である。
   3.国民はまな何らかのかたちで国家の債務を負担しなければならない。
   4.政府の赤字は民間投資のクラウディングアウトに繋がり、国民を貧しくする。
   5.貿易赤字は国家の敗北を意味する。
   6.社会保険や医療保険のような「給付制度」は財政的に持続不可能だ。もはや国にそんな余裕はない。
   ケルトンは、これらの項目に1章ずつ割いて、悉く論破している。
   まず、初歩的な例として、収入と支出で収支の辻褄を合わさなければならない企業や家計と違って、通貨発行権を持ち信用創造可能な打ち出の小槌(?)を持っている国家財政を、同じ原則で管理するのはおかしいなど、
   いずれにしろ、MMT論に立って経済を見れば、世界が違って見えてくるのが面白い。
 
   MMT論でも、やはり、政府支出の規律は重要であって、借金は、インフレをもたらさない限り、である。
   「自由通貨を持つ国にとって、政府支出が過剰かどうかを判断するバロメーターは、赤字国債の残高ではなく、インフレの程度であるる。」という。
   
   今回は、イントロ段階に終ったが、まだ、半信半疑なので、もう少し、勉強しないとダメだと思っている。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 何でも値上げの昨今、Amazon... | トップ | 庭の夏草の除草が大変であった »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

書評(ブックレビュー)・読書」カテゴリの最新記事