久しぶりにギルフォードのジムの家で泊まり、旧交を温めた。
ジムは、ロンドンに本社がある英国きってのエンジニアリング会社の社長を長く務めていて、普通のイギリスの富裕層のように、本拠の住居をカントリーに持っていて、ロンドンに職住近接の家を持って活動すると言った二重生活ではなく、このギルフォードの広大な庭園を備えた邸宅でトカイナカの生活をしていて、列車通勤で通していた。
彼は天文気象やメカに趣味のあるエンジニアで、私は典型的なジャパニーズ文系だったが、非常に気があって、日本からイギリスに行った時には、ロンドンのジェントルマンクラブのRACか、このジムの家を定宿としていた。
さて、先回は、このギルフォードからブリティッシュ・レイルで列車を乗り継いで、ストラトフォード・アポン・エイボンに向かったが、今回は車で行くことにした。
その日は休日で、街のレンターカーオフィスが休みなので、前日の夜、ヒースロー空港のレンターカーオフィスに出かけて借りておくことにした。英国では、何処でもカーリターンが出来るので、帰国時に返すことにして、ジムに頼んでヒースローまで連れて行ってもらった。
JALカードでディスカウントが利くのは、ハーツとバジェットだが、バジェットを常用していたのでバジェットにした。普通には、ジャンルやクラス別に価格リストがある筈だが、そんなものはなく、ドンナ車が欲しいのか、予算はいくらだと聞くだけで、いい加減も良いところである。保健付きで70ポンド(1万円)と言うので、何時もベンツなのだが、フォードのモンデオ2000CCを借りた。ジムの後についてギルフォードに向かったが、案の定管理が悪くて、ガソリンが満タンに入っていなくて、途中でガソリンを入れなければならなかった。
翌朝、アブラハム夫妻に感謝して、今秋の日本での再会を期して、9時過ぎにギルフォードを出発した。M25とM4を経由して、そのまま、ロンドンに入れば良かったのだが、今回は、センチメンタルジャーニーでもあったので、帰国前に住んでいたキュー・ガーデンを通ってゆくことにした。24 リッチフィールド、キューガーデン、丁度地下鉄の駅前で、正面大通り突き当たりに世界一の王立植物園キュ-ガーデンの正面入り口があり、毎日観光客で賑わう。
その日、ロンドンで、もうひとつ、旧友の大手建設会社の社長であったマイク・アレンとホテル・リッツでランチを楽しむ約束をしていた。
キューガーデンの家の前を通って、いつも通勤でベンツを走らせていた懐かしい道をロンドンに向かった。
クロムウエル通りも、自然博物館やヴィクトリア・アルバート博物館の前あたりから急に車の流れが悪くなり始めた。ナイツブリッジに入ると、セールの張り紙をした店が多くなるが、恒例のハロッズのセールは終っていた。良く工事や事故で通行止めになるハイド・パーク・コーナーのバイパスが問題なかったので、スムーズにピカデリー大通りに入った。リッツの前を通り抜けて、フォートナム・メーソンの角を右折れして、リッツの裏にあるNCPの駐車場に入ろうとしたが満車だった。仕方がないので、大通りを越えて、前に事務所があったオールド・バーリントンの駐車場を目指したが、建物自体が工事中で閉鎖されていた。
こうなれば、頭の中は真っ白。久しぶりのロンドンだし、ロンドンでは劇場街やシティの駐車場くらいしか知らなくて、繁華な中心街の適当な駐車場が頭に浮かばない。ロンドンの殆どの道は一方通行なので、前に走る以外に方法がない。リージェント通りのアクアスキュータムを横切りソーホーに入ると、うらぶれたレストランや店、いかがわしいピンクサロン風の佇まい、雑然とした露店、ただでさえ狭いとおりなのにごった返している。Pのマークを便りに車を走らせ、NCP空車の看板を見つけて、ホッとして車を入れた。入り口で、黒人の係員が、カードをくれて、車をそのままにしておけと言う。繁華なNCPは、能率を旨として、プロが車を裁くのが普通なので、一寸嫌な気がしたが、仕方なくキーを残して外に出た。リッツから随分離れてしまった。急に汗が噴き出してきた。
約束の12時半まで、すこし時間があったので、途中、リージェント通りのモス・ブラザーズに立ち寄った。ピカデリー・サーカスにかけてのリージェント通りのカーブの美しさはリージェント・カットの語源どおり美しい。
この店は、ロンドン屈指の礼服店で、あらゆる種類の礼服やドレス等のレンタルで有名で、随分お世話になった。まず、最初はタキシードだが、これは、パーティ、レセプション、オペラ等の観劇、正式な会食等、何かの時にはお世話になるので、すぐに購入した。しかし、年に1回くらいしかない、ホワイト・タイ、これは最高の正装で、シティのギルドホールで開催される英国建設業協会の年次総会でフィリップス殿下など王室が主賓のレセプション、そして、アスコットの競馬でのシルクハットとグレーのモーニング、などは、この店で借りた。いつ行っても、胴長短足の私に合う礼服を探し出してくれるのは感服している。
さて、今回は、この秋に長女が結婚するので、モーニングを買おうかと思って店を訪れたのである。前回、アスコットで借りたモーニングがグレーではなく黒であったし、ぴったり合っていたので、さがせばあるだろうと思ったのである。
地階の礼服部に下りて、値段など関係なく、モーニングが欲しいんだと伝えると、一応44かと聞いてくれたが、適当に探してくれと言うと、奥の方から一つのハンガーを持ってきた。
余談ながら、日本では、誂えもそんなに珍しくなく、イージー・オーダーが普通のようだが、イギリスでは、首吊りが一般的で、場合によって多少手直しするのが普通だと聞く。背広(サビル・ロー)通り1番地の女王陛下の軍服誂えで有名なギーブス・アンド・フォークスでも、大概みんな首吊りを買っていて、セールの時には客が殺到するが、良いものは精々10%程度のディスカウントである。
セール中ながら、1階の既製服売り場には人がいたが、礼服売り場の客は私一人で、礼服に関しては総べて私に任せてくださいと言った感じの紳士然とした店員が、まず、私に上着を着せてサイズを確認した。勿論、手の部分ははるかに長いが、肩から腹、胴回り関してはほぼ満足な様子であった。次に、試着室に入ってズボンを合わせろという。これも、恥ずかしながら、相当折り返さないと長すぎてダメである。
今日、ロンドンを発つので、手直しをして日本に送ってくれるよう頼んだら、明日、テーラーが来るのですぐに直せるから明日来てくれと言う。と言われても、シェイクスピア観劇を諦めるわけにはいかない。
結局、彼がピン留めしてくれた所をそのままにして日本に持ち帰り手直しすることにした。
ミラノのカナリ製の立派なモーニングで、免税価格で約9万円、安いのか高いのか分からないが、次に、次女の結婚式もあるので、2回レンタルするつもりで買った。
急いで、マイクに会うために、ホテル・リッツに向かった。
映画「ノッチングヒルの恋人」の舞台である。
ジムは、ロンドンに本社がある英国きってのエンジニアリング会社の社長を長く務めていて、普通のイギリスの富裕層のように、本拠の住居をカントリーに持っていて、ロンドンに職住近接の家を持って活動すると言った二重生活ではなく、このギルフォードの広大な庭園を備えた邸宅でトカイナカの生活をしていて、列車通勤で通していた。
彼は天文気象やメカに趣味のあるエンジニアで、私は典型的なジャパニーズ文系だったが、非常に気があって、日本からイギリスに行った時には、ロンドンのジェントルマンクラブのRACか、このジムの家を定宿としていた。
さて、先回は、このギルフォードからブリティッシュ・レイルで列車を乗り継いで、ストラトフォード・アポン・エイボンに向かったが、今回は車で行くことにした。
その日は休日で、街のレンターカーオフィスが休みなので、前日の夜、ヒースロー空港のレンターカーオフィスに出かけて借りておくことにした。英国では、何処でもカーリターンが出来るので、帰国時に返すことにして、ジムに頼んでヒースローまで連れて行ってもらった。
JALカードでディスカウントが利くのは、ハーツとバジェットだが、バジェットを常用していたのでバジェットにした。普通には、ジャンルやクラス別に価格リストがある筈だが、そんなものはなく、ドンナ車が欲しいのか、予算はいくらだと聞くだけで、いい加減も良いところである。保健付きで70ポンド(1万円)と言うので、何時もベンツなのだが、フォードのモンデオ2000CCを借りた。ジムの後についてギルフォードに向かったが、案の定管理が悪くて、ガソリンが満タンに入っていなくて、途中でガソリンを入れなければならなかった。
翌朝、アブラハム夫妻に感謝して、今秋の日本での再会を期して、9時過ぎにギルフォードを出発した。M25とM4を経由して、そのまま、ロンドンに入れば良かったのだが、今回は、センチメンタルジャーニーでもあったので、帰国前に住んでいたキュー・ガーデンを通ってゆくことにした。24 リッチフィールド、キューガーデン、丁度地下鉄の駅前で、正面大通り突き当たりに世界一の王立植物園キュ-ガーデンの正面入り口があり、毎日観光客で賑わう。
その日、ロンドンで、もうひとつ、旧友の大手建設会社の社長であったマイク・アレンとホテル・リッツでランチを楽しむ約束をしていた。
キューガーデンの家の前を通って、いつも通勤でベンツを走らせていた懐かしい道をロンドンに向かった。
クロムウエル通りも、自然博物館やヴィクトリア・アルバート博物館の前あたりから急に車の流れが悪くなり始めた。ナイツブリッジに入ると、セールの張り紙をした店が多くなるが、恒例のハロッズのセールは終っていた。良く工事や事故で通行止めになるハイド・パーク・コーナーのバイパスが問題なかったので、スムーズにピカデリー大通りに入った。リッツの前を通り抜けて、フォートナム・メーソンの角を右折れして、リッツの裏にあるNCPの駐車場に入ろうとしたが満車だった。仕方がないので、大通りを越えて、前に事務所があったオールド・バーリントンの駐車場を目指したが、建物自体が工事中で閉鎖されていた。
こうなれば、頭の中は真っ白。久しぶりのロンドンだし、ロンドンでは劇場街やシティの駐車場くらいしか知らなくて、繁華な中心街の適当な駐車場が頭に浮かばない。ロンドンの殆どの道は一方通行なので、前に走る以外に方法がない。リージェント通りのアクアスキュータムを横切りソーホーに入ると、うらぶれたレストランや店、いかがわしいピンクサロン風の佇まい、雑然とした露店、ただでさえ狭いとおりなのにごった返している。Pのマークを便りに車を走らせ、NCP空車の看板を見つけて、ホッとして車を入れた。入り口で、黒人の係員が、カードをくれて、車をそのままにしておけと言う。繁華なNCPは、能率を旨として、プロが車を裁くのが普通なので、一寸嫌な気がしたが、仕方なくキーを残して外に出た。リッツから随分離れてしまった。急に汗が噴き出してきた。
約束の12時半まで、すこし時間があったので、途中、リージェント通りのモス・ブラザーズに立ち寄った。ピカデリー・サーカスにかけてのリージェント通りのカーブの美しさはリージェント・カットの語源どおり美しい。
この店は、ロンドン屈指の礼服店で、あらゆる種類の礼服やドレス等のレンタルで有名で、随分お世話になった。まず、最初はタキシードだが、これは、パーティ、レセプション、オペラ等の観劇、正式な会食等、何かの時にはお世話になるので、すぐに購入した。しかし、年に1回くらいしかない、ホワイト・タイ、これは最高の正装で、シティのギルドホールで開催される英国建設業協会の年次総会でフィリップス殿下など王室が主賓のレセプション、そして、アスコットの競馬でのシルクハットとグレーのモーニング、などは、この店で借りた。いつ行っても、胴長短足の私に合う礼服を探し出してくれるのは感服している。
さて、今回は、この秋に長女が結婚するので、モーニングを買おうかと思って店を訪れたのである。前回、アスコットで借りたモーニングがグレーではなく黒であったし、ぴったり合っていたので、さがせばあるだろうと思ったのである。
地階の礼服部に下りて、値段など関係なく、モーニングが欲しいんだと伝えると、一応44かと聞いてくれたが、適当に探してくれと言うと、奥の方から一つのハンガーを持ってきた。
余談ながら、日本では、誂えもそんなに珍しくなく、イージー・オーダーが普通のようだが、イギリスでは、首吊りが一般的で、場合によって多少手直しするのが普通だと聞く。背広(サビル・ロー)通り1番地の女王陛下の軍服誂えで有名なギーブス・アンド・フォークスでも、大概みんな首吊りを買っていて、セールの時には客が殺到するが、良いものは精々10%程度のディスカウントである。
セール中ながら、1階の既製服売り場には人がいたが、礼服売り場の客は私一人で、礼服に関しては総べて私に任せてくださいと言った感じの紳士然とした店員が、まず、私に上着を着せてサイズを確認した。勿論、手の部分ははるかに長いが、肩から腹、胴回り関してはほぼ満足な様子であった。次に、試着室に入ってズボンを合わせろという。これも、恥ずかしながら、相当折り返さないと長すぎてダメである。
今日、ロンドンを発つので、手直しをして日本に送ってくれるよう頼んだら、明日、テーラーが来るのですぐに直せるから明日来てくれと言う。と言われても、シェイクスピア観劇を諦めるわけにはいかない。
結局、彼がピン留めしてくれた所をそのままにして日本に持ち帰り手直しすることにした。
ミラノのカナリ製の立派なモーニングで、免税価格で約9万円、安いのか高いのか分からないが、次に、次女の結婚式もあるので、2回レンタルするつもりで買った。
急いで、マイクに会うために、ホテル・リッツに向かった。
映画「ノッチングヒルの恋人」の舞台である。