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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

国立演芸場・・・正藏「ねずみ」三平「悋気の独楽」

2014年04月12日 | 落語・講談等演芸
   久しぶりに、国立演芸場に行き、落語を聞いた。
   上席の千穐楽で、林家正藏がトリで、その前に、三平が出ると言うので、興味を持ったのである。
   国立名人会など特別な時には、興味がある噺家や外題が舞台にかかる時に出かけては行くけれど、大体、上席や中席で、面白いと思ったり夕刻に観劇など予定が入っている時に、開演が13時でその前なので、聞きに行くことが多い。
   この日も、客席は、5分の入りだったのだが、大体空いていることが多くて、気楽に楽しめるのが良い。

   三平の高座は、初めてだったが、兄の正藏よりも、親父さんの前の三平に似ている感じで、パンチの利いた軽快な語り口が、爽やかで良い。
   三平の落語は、「悋気の独楽」。
   ある商店の主人が、いそいそとよく出かけていくので、内緒で妾を囲っていると心配になったその妻が、丁稚の定吉に命じて、主人の後をつけさせる。見つかった定吉が妾宅で、妾から小遣いを貰って釘をさされて帰るのだが、後を女中につけさせたとカマをかけられた定吉が白状してしまう。妾から、花柳界での遊びだと言って三つの独楽を貰って来たのを妻に見つかり、定吉は、コマを妻、妾、主人に見立て、回した主人のコマが、妻・妾どちらのコマに当たったかで泊まる家を決めるのだと説明する。妻に命じられて、定吉がコマを回すと、主人のコマは妾のコマに当たり、ヒステリー状態になった妻は何度も廻させるが、妾ばかり。「肝心のしんぼう(心棒/辛抱)が狂うてます。
   三平、布団からずり落ちて、横になって、艶めかしい妾の姿を披露。
   とにかく、まくらで、親父の逸話を語るなど、面白くて楽しませてくれた。

   正藏の「ねずみ」は、去年聞いているので、二度目である。
   左甚五郎が、仙台の宿で、悪い後妻と番頭に旅館・虎屋を乗っ取られた貧しい父子が営む小さな旅館・鼠屋に泊まり、事情を聞いて同情して、ねずみの彫り物を残して旅立つ。
   そのねずみが、盥の中で走り回るので評判となり大繁盛となったので、嫉妬した虎屋が仙台の巨匠彫刻師に虎を彫らせて鼠屋を見下ろすところに置いたところ、急に、ねずみが動かなくなった。
   心配した父親が甚五郎に手紙を書いたので、飛んで来た甚五郎がねずみに、「ねずみよ、俺は魂を込めてお前を彫った。なぜ、あんなおかしな顔の虎に怯える?」ふと振り返ったねずみが、「え、あれ虎だったの? 猫かと思った」

   非常に味のある人情噺を、正藏は、語り部のように静かに、しみじみと語る。
   昨年、映画「東京家族」で、正藏を見たが、あの雰囲気は、どことなくこぶ平の世界。
   しかし、「ねずみ」を語る正藏は、どこか、功成り名を遂げた成熟した噺家の風格。

   正藏は、話の途中、すっくと膝起ち姿になって、左甚五郎は、私と同じで、いくら金を積まれても意に添わない仕事は絶対にしない、しかし、これぞと思った仕事は命を賭けてでもやる。もう一度言う。と言って、客を笑わせる。

   
   さて、前座だが、ロビーで昼食を取っていたのだが、舞台の方から、威勢の良い黄色い声が聞こえて来たので、気になって入場したら、実に可愛いヤングレディの噺家が、高座を務めている。
   父が、子供を寝かそうとして日本昔話をするのだが、無知な父に、ものしりの子供が逆に、物語の本意を教えると言うあの「桃太郎」を熱演している。
   林家正藏に弟子入りしたと言う新米の噺家で、前座修業中の林家つる子。
   中央大の記事によると、
   林家 つる子(はやしや・つるこ)さん 1987年生まれ、群馬県高崎市出身。2010年中央大学文学部卒業後、同年9月に 九代林家正蔵の元に入門、高座名は「林家つる子」(本名は須藤みなみ)。

   学生時代に、就職のインターンで、電話を架けたら本人が居なかったので、出社されたらお電話くださいと伝えるところを、出世されたらお電話くださいと言ったので電話が架かって来なかったと、兄弟子の林家はな平がバラしていた。
   とにかく、可愛くて頭の回転の速い歯切れの良い溌剌とした語り口が実に爽やかで、このようなレディの逸材が噺家になると、落語の世界も、益々、楽しくなってくる。
   前回、昨年真打昇進襲名披露公演を行った川柳つくしについて書いたが、男世界の落語界に、女訛りの女性噺家による落語の世界が、ぼつぼつ、本流に躍り出て来ても不思議ではなかろうと思う。
   先の「桃太郎」も、父親ではなく、母親にして語ったらどうであろうか。
   上方落語を、気風の良い江戸落語に換える世界であるから、何の不思議もない筈。
   
コメント
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