熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

大企業を元気にして投資を誘発しない限り日本の経済復興は有り得ない

2009年12月28日 | 政治・経済・社会
   鳩山内閣の新年度予算に対しては、賛否両論あって、その経済に与える影響について、大方のエコノミストは、日経報道によると、効果ありとポジティブに捉えていたが、私は、非常に疑問だと思っている。
   特に、子供手当てなどの家計を重視した鳴り物入りの補助金政策が、内需拡大効果があるとする政府見解だが、既に、ケインズ政策が有効に利かなくなって、乗数効果も加速度原理も逆スパイラル局面に入り縮小均衡への道を走り始めた日本において、更に、消費から退場して貯蓄に回る支出を増加させても、額面どおりの国民所得拡大効果など、期待できる筈がない。
   これが、これまで繰り返してきた私の持論であり、少なくとも、成熟国家日本経済に関しては、従来のGDP国民所得分析手法は、全く無益だと思っている。

   日本経済が、何故これほどまでに悪化してしまったのか。
   根本的な問題は、須らく、経済成長が止まってしまって、本来、投資に向かうべき筈だった膨大な貯蓄の蓄積が、活用されずに市場経済から退場してしまっているからで、35~40兆円と言われている需給ギャップの存在も、その一端であり、消費支出の拡大では埋められない日本経済の構造的な需要すなわち投資需要不足なのである。
   この需給ギャップを少しでも財政出動で埋め合わせれば、経済浮揚ないし押し上げ効果があるとするのが一般的な見解だが、今のような経済情勢であれば、いくら財政投入しても、投資を誘発する需要創造がない限り、今回の予算のように、国債発行額が税収を上回るような赤字財政蓄積の連続で、益々、日本経済を窮地に追い込むだけである。

   何故なら、膨大な財政赤字を解消したのは、古今東西歴史上においては、戦争か、超インフレかしかなく、あるいは、可能性として、高度な経済成長以外には、考えられないのであるが、
   既に、日本は、高度成長から見放された衰退国家に成り下がってしまっており、潜在成長力が精々2~3%にしか過ぎない現状では、いくら頑張ってみても、プライマリーバランスの達成はおろか、財政赤字からの脱却など考えられないのである。

   日経に、最近、日本の米国国債増加率が拡大して中国に近づきつつあると報道されていたが、日本の貯蓄や投資資金が、日本や米国の国債ばかりに向かうようでは、先が思いやられる。
   

   共産党など、企業の内部留保が厚くなって来たにも拘わらず、労働者への分配率が低下して賃金給与がダウンしているのが問題だとしているが、確かに、国民の可処分所得が減って消費需要が伸びないのが経済不況の一因かも知れないが、問題は、何故、このようになってしまったのかと言うことである。
   日本企業が、国際競争力を徐々に喪失して行き、かってのような成長も利益の実現も不可能となってしまって、分配率を高めることも、賃金給与水準を上げることも出来なくなってしまったからなのである。
   国民の給与水準をアップするためには、大企業を責めつけて「角を矯めて牛を殺す」愚を犯すのではなく、優良かつ世界に通用する大企業を育成強化して元気にし、利益基調を促進する以外に道はない筈なのである。

   韓国勢が、日立・GE連合を退けて、アブダビ原発を3兆6000億円で受注したと報じられている。
   日立、東芝、三菱重工など日本企業が技術と実績においてダントツの原発の入札で、何故、後塵を拝している韓国が勝利を収めたのか。官民一体の受注体制の効果はあったとしても、1割も安い提示価格だったと言う。
   東芝と米国WHが、発電設備を担当する斗山重工に、たった200億円で虎の子の技術供与をすると言うのであるから、日本の国際競争力の強化ないし国際入札戦略には、何か、根本的な大きな問題を抱えている筈なのである。

   日本経済が、再び、デフレ傾向が濃厚になったと心配されているが、経済成長が止まって不況に喘いでいる現状では、物価など上がる訳がない。
   何故なら、デフレは、最早金融現象ではなくなって、経済構造の変革そのものを体現しているからである。
   すなわち、新興国や発展途上国製品の価格破壊、IT革命による猛烈なグローバル・ベースでの生産性向上、強烈なユニクロ効果等々が猛威を振るえば、経済が疲弊して購買力と有効需要が激減した日本で、デフレが復活してデフレスパイラルに陥るのは当然なのである。

   誤解を避けるために、ユニクロ効果について付言する。
   イノベーション手法を駆使したビジネス・モデルの変換によるドラスチックな経営革新が、価格破壊と製品価値の創造によって快進撃を続けているのであり、企業経営においても、国民経済への貢献においても、文句なしに正しい経営姿勢ではあるのだが、残念ながら、日本経済、特に、ユニクロ関連ビジネスに付随する経済・企業環境が、全く、その動きに付いて行けなくて、振り回されて産業全体に齟齬を来たし、ジーンズ1本が、1000円をはるかに切ると言う驚異的な商業環境が現出されてしまっているのであるから、産業全体、ましてや、裾野の服飾関連中小企業などが生きて行ける筈がない。
   この傾向が、安全管理がぎりぎりかさえも疑わしい外食産業の価格破壊など、日本経済のあらゆるところに、広がり蔓延し始めていることこそ、正に日本経済が抱える問題なのである。

   結論を急ぐが、政府に金がなくなり、益々袖を振れなくなるのは必定で、この窮地を脱出するためには、日本の経済の屋台骨を支えて来た大企業に活力を与えて成長拡大を目指させて、日本経済を成長軌道に乗せる以外に道はない。
   今のように、法人所得税が世界一高くて(?)、労働法制が益々厳しくなって行き、大企業を締め付けるような傾向が増幅して来るのでは、歴史の針を逆行しているとしか思えない。
   早い話、利益を上げ企業価値を向上させる為には、最も適切な立地を考慮して、企業を海外へ脱出させれば良く、早晩、外人株主から要求が出てもおかしくない筈である。

   課題先進国日本の目指すべき方向は、極めて明確であり、少子高齢化、安全・安心社会の実現、地球環境の保全などであるならば、この分野に対する産業育成のために積極的に企業活動を支援して、創造的破壊を誘発するような投資環境を整えて、積極的に、需要を創造すると同時にグローバル・スタンダードを打ち立てることである。
   世界全体が同意すればなどと前提を置くような鳩山案では駄目で、日本自身が前進すれば良い。

   例えば、日本の家屋全体に太陽光発電パネルを設置するような積極的な財政・税制優遇措置を講ずるなど、抜本的な経済施策を打つことが肝要である。
   これには、例えば、小宮山試案の自立国債構想を実現すれば、眠っている膨大な老人たちが保有する金融資産が動き出し、イノベーション投資に動員されることになり、一石二鳥である。
   とにかく、行き場を失った日本の貯蓄を積極的に投資に回す経済環境を打ち立てることが先決で、最も起爆力と機動力を持っている優秀な日本の大企業を元気にする(ゾンビや崩壊企業は淘汰すべきは勿論必須)以外に、日本の明日はないと言うのが、私の今年最後の思いである。   
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