都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
2009年 私が観た美術展 ベスト10
ギャラリー編に引き続きます。私が今年観た展覧会の中で特に印象に残ったものを挙げてみました。
「2009年 私が観た美術展 ベスト10」
1.「根来」 大倉集古館
2.「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」 川村記念美術館
3.「伊庭靖子 - まばゆさの在処 - 」 神奈川県立近代美術館 鎌倉
4.「奇想の王国 だまし絵展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
5.「江戸の幟旗」 渋谷区立松濤美術館
6.「若冲ワンダーランド」 MIHO MUSEUM
7.「ヴィデオを待ちながら」 東京国立近代美術館
8.「やなぎみわ マイ・グランドマザーズ」 東京都写真美術館
9.「ゴーギャン展」 東京国立近代美術館
10.「鴻池朋子展」 東京オペラシティアートギャラリー
次点 「謎のデザイナー 小林かいちの世界」 ニューオータニ美術館
「根来とロスコ」
「朱」と「赤」を通した向こうに何かが開ける根来とロスコはどこか共通点があるのかもしれません。私の苦手な大倉の空間を一変させ、完膚なきまでのストイックな展示でその魅力を伝えた根来、一方でこれまでの作家観を半ば一変させる大胆な構成で攻めたロスコはともに忘れ難い展覧会となりました。この二つは別格です。
「伊庭靖子」
はじめて伊庭さんの作品をまとめて見ることが出来ました。神奈川県美鎌倉館の飾らないシンプルなスペースは、かえって彼女の清潔な絵画を引き立てることに成功していたようです。これも絶対にはずせません。
「だまし絵」
だまし絵展は過去、私が文化村で見た展示の中で最も滞在時間が長かったかもしれません。賛否はあろうとも描表装からアルチンボルドまで展開したこのエンターテイメントの企画には素直に大きな拍手を送りたいと思います。遊び心満点の今年一番楽しい展覧会でした。
「幟旗」
作品と美術館が完全に融合した展示としては幟旗の右に出るものはいません。半円形の展示室に足を踏み入れた途端、この美術館が幟旗のために作られたのではないかと錯覚したのは私だけではなかったのではないでしょうか。幟旗が時代を超えて輝きを取り戻した時間を共有することが出来て感動しました。
「若冲ワンダーランド」
改めて若冲の面白さに開眼したのは未見作も多く出ていたMIHOのワンダーランドです。名宝展での動植綵絵を含め、結局今年も若冲が日本美術の展観でかなりの話題をさらいました。静岡、千葉でのアナザーワールドにも期待したいところです。
「ヴィデオ」
あまり意識したことのなかったメディアアート黎明期(60~70年代)のビデオ・アートを、意外感のある演出で体験的に楽しめる展覧会でした。近美の展示で巧いなと感じたのはこれがはじめてかもしれません。
「やなぎみわ」
必ずしも大掛かりな装置がなくとも魅力ある展覧会が可能だという見本のような企画だったかもしれません。一枚の写真、そして簡素なテキストから開けるのは雄弁な物語でした。
「ゴーギャン」
ゴーギャンへの苦手意識を払拭させてくれた展覧会です。点数こそ足りませんでしたが、これぞという名品揃いで、ゴーギャンの特に鮮やかな色彩感に身も心も奪われました。メインの「我々~」以降の作品にも見どころが多かったのもまた付け加えておくべき点かもしれません。
「鴻池朋子」
今年一番作り込まれた展示ではなかったでしょうか。賛否はあったようですが、ただの一人の作家による有無を言わさない壮大なインスタレーションは、美術展の枠を越えて展示の在り方そのものを問う次元にまで達していました。感想を書きそびれてしまいましたが、ラストのベイビーへの流れるような空間はまだ頭に焼き付いているので、ベスト10の最後に挙げてみます。
「かいち」
次点は未知の作家ながらも一目惚れしてしまったかいちです。確か巴水をはじめて知ったのもニューオータニでの回顧展でしたが、今回もまたこうした作家を紹介していただいたことに感謝したいと思います。
如何でしょうか。これ以外にももちろん素晴らしい展覧会はたくさんありましたが、10点ということで一応上記の展示に絞ってみました。
年内の更新は本エントリで終わりです。改めまして最後になりましたが、今年もこの「はろるど・わーど」にお付き合い下さりどうもありがとうございました。それでは皆さま良いお年をお迎え下さい。
*過去の展覧会ベスト10
2008年、2007年、2006年、2005年、2004年(その2。2003年も含む。)
*関連エントリ
2009年 私が観たギャラリー ベスト10
「2009年 私が観た美術展 ベスト10」
1.「根来」 大倉集古館
2.「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」 川村記念美術館
3.「伊庭靖子 - まばゆさの在処 - 」 神奈川県立近代美術館 鎌倉
4.「奇想の王国 だまし絵展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
5.「江戸の幟旗」 渋谷区立松濤美術館
6.「若冲ワンダーランド」 MIHO MUSEUM
7.「ヴィデオを待ちながら」 東京国立近代美術館
8.「やなぎみわ マイ・グランドマザーズ」 東京都写真美術館
9.「ゴーギャン展」 東京国立近代美術館
10.「鴻池朋子展」 東京オペラシティアートギャラリー
次点 「謎のデザイナー 小林かいちの世界」 ニューオータニ美術館
「根来とロスコ」
「朱」と「赤」を通した向こうに何かが開ける根来とロスコはどこか共通点があるのかもしれません。私の苦手な大倉の空間を一変させ、完膚なきまでのストイックな展示でその魅力を伝えた根来、一方でこれまでの作家観を半ば一変させる大胆な構成で攻めたロスコはともに忘れ難い展覧会となりました。この二つは別格です。
「伊庭靖子」
はじめて伊庭さんの作品をまとめて見ることが出来ました。神奈川県美鎌倉館の飾らないシンプルなスペースは、かえって彼女の清潔な絵画を引き立てることに成功していたようです。これも絶対にはずせません。
「だまし絵」
だまし絵展は過去、私が文化村で見た展示の中で最も滞在時間が長かったかもしれません。賛否はあろうとも描表装からアルチンボルドまで展開したこのエンターテイメントの企画には素直に大きな拍手を送りたいと思います。遊び心満点の今年一番楽しい展覧会でした。
「幟旗」
作品と美術館が完全に融合した展示としては幟旗の右に出るものはいません。半円形の展示室に足を踏み入れた途端、この美術館が幟旗のために作られたのではないかと錯覚したのは私だけではなかったのではないでしょうか。幟旗が時代を超えて輝きを取り戻した時間を共有することが出来て感動しました。
「若冲ワンダーランド」
改めて若冲の面白さに開眼したのは未見作も多く出ていたMIHOのワンダーランドです。名宝展での動植綵絵を含め、結局今年も若冲が日本美術の展観でかなりの話題をさらいました。静岡、千葉でのアナザーワールドにも期待したいところです。
「ヴィデオ」
あまり意識したことのなかったメディアアート黎明期(60~70年代)のビデオ・アートを、意外感のある演出で体験的に楽しめる展覧会でした。近美の展示で巧いなと感じたのはこれがはじめてかもしれません。
「やなぎみわ」
必ずしも大掛かりな装置がなくとも魅力ある展覧会が可能だという見本のような企画だったかもしれません。一枚の写真、そして簡素なテキストから開けるのは雄弁な物語でした。
「ゴーギャン」
ゴーギャンへの苦手意識を払拭させてくれた展覧会です。点数こそ足りませんでしたが、これぞという名品揃いで、ゴーギャンの特に鮮やかな色彩感に身も心も奪われました。メインの「我々~」以降の作品にも見どころが多かったのもまた付け加えておくべき点かもしれません。
「鴻池朋子」
今年一番作り込まれた展示ではなかったでしょうか。賛否はあったようですが、ただの一人の作家による有無を言わさない壮大なインスタレーションは、美術展の枠を越えて展示の在り方そのものを問う次元にまで達していました。感想を書きそびれてしまいましたが、ラストのベイビーへの流れるような空間はまだ頭に焼き付いているので、ベスト10の最後に挙げてみます。
「かいち」
次点は未知の作家ながらも一目惚れしてしまったかいちです。確か巴水をはじめて知ったのもニューオータニでの回顧展でしたが、今回もまたこうした作家を紹介していただいたことに感謝したいと思います。
如何でしょうか。これ以外にももちろん素晴らしい展覧会はたくさんありましたが、10点ということで一応上記の展示に絞ってみました。
年内の更新は本エントリで終わりです。改めまして最後になりましたが、今年もこの「はろるど・わーど」にお付き合い下さりどうもありがとうございました。それでは皆さま良いお年をお迎え下さい。
*過去の展覧会ベスト10
2008年、2007年、2006年、2005年、2004年(その2。2003年も含む。)
*関連エントリ
2009年 私が観たギャラリー ベスト10
コメント ( 24 ) | Trackback ( 0 )
« 2009年 私が... | 謹賀新年 2010 » |
確かに美しいです。
そんな長い間使い込まれた「もの」の歴史に惹かれたのでしょうか。
根来展は行きたいと思いながら、行けなかった展覧会の1つでした。
江戸の幟旗展は、本当に会場の雰囲気とマッチして、とても印象深い展覧会でした。
本年も拙ブログにコメントを頂きまして有難う御座いました。
来年もどうぞよろしくお願い致します。
こんばんは。早速のコメントありがとうございます。
>長い間使い込まれた「もの」の歴史
それがずしりと感じられる展覧会でしたね。
あの剥げた地に景色が開けていました。
@palpalさん
こんばんは。
幟旗は本当に会場と見事にマッチしていましたよね。
松濤幟旗美術館と化していました。
こちらこそいつもブログにコメントをありがとうございます。
来年も宜しくお願い致します。
根来展、図録来年には発売だそうですね。
用の美とはよく言いますがあれほどまで
研ぎ澄まされた美しさを放っているとは
正直観に行くまで分かりませんでした。
佳いお正月をお迎えください。
ネギご入り用でしたらいつでも。
ちょっと遠いマーク・ロスコは別にして、人気の江戸の幟旗には是非行きたかった・・作品と展示空間が融合するというのはひとつの奇跡かもしれませんね。
来年は根津で国宝燕子花図屏風展がありますね。ようやく根津デビューできそうです(遅っ!)
こんばんは。
根来の図録はどんな感じなのでしょうね。
お値段も凄そうですが、手に取ってみたいものです。
それにしてもあの空間には打ちのめされました。
>佳いお正月
こちらこそ佳いお年をお迎え下さい!
@キリルさん
こんばんは。TBありがとうございます。
幟旗はびっくりするほどでした。作品のサイズと美術館のそれがまずぴったり合うことからして奇跡だと思います。
>燕子花
ようやく出てきますね。(てっきりオープニングで出るのかと思っていましたが…。)
既に大人気の根津(いつもかなり混んでいます。)ですが、
また大きな話題となりそうです。
来年も宜しくお願いします。
自分の嗜好では確実にスルーしていた展覧会ですが
会場と響きあったその世界は心に残ります。
鴻池さんも私は「否」サイドに立ちましたが
あのベイビーは大好きです。クラクラきました。
海谷慶の木彫も心奪われましたね。
伊庭さん見逃したのは悔恨。
今年の鎌倉館はすごい流れだったのだなと。
自分のベスト10に尽くせなかった気持ちをコメントしてみました。
だまし絵展ははろるどさんの熱い記事を読んで、楽しみに神戸巡回を待ったものです。
おもしろい内容でしたね~
若冲のゾウさん、本当にあれだけでもわたしには嬉しい展覧会でした。千葉の展覧会も楽しみです。
来年もよろしくお願いいたします。
残念なことをしました。
来年は悔いのないよう頑張ります!?
では、よいお年を。
大晦日の夜、今年はクラシックききながらのんびりしています。
すばらしいベスト10です。私はこの中で二つしかみていません。
鴻池さんとかミホの若冲などは、ほんとみてみたかったけど、また来年もかずかずの展覧会ご紹介してくださるのを楽しみにしています。
本年もよろしくおねがいいたします。
根来は好きなひとは上位にくるなあと思っていたものの、まさかはろるどさんの一位になってるとは。
伊庭靖子さんの作品は未見なので気になっています。
行きたかったけど、行けなかった「根来」「ロスコ展」「伊庭展」が上位にきてますね。やぱり行けばよかったと後悔してます。反省。
本年もよろしくお願い致します。
今年もよろしくお願いいたします。
はろるどさんセレクトのベストテン。
根来が一番とは驚きでした。
ロスコーも入っているので、
深い色合いに共通点か?と思いますが、
幅の広いセレクションだと思いました。
見ていないものが沢山ある中、
根来、幟旗、鴻池、皇室、だまし絵など
が入っていたのは嬉しいところです。
ギャラリーや、音楽のほうまで幅の広い記事に
今年も楽しませていただきます。
はろるどさんが2009年度の1位に挙げられたとなると
ますます後悔の念が湧いてきます。
鴻池さんの個展も、確かに作家のこだわりが伝わる
凝った展示で、記憶に残るものでした。
酔った展覧会はあれが初めてです(笑)
伊庭さんは数点しか作品を拝見していないのですが、
とても気になる画家。とりあえずDOMANI展でしょうか。
根来の図録は○万円と聞いてます。
はろるどさんのはいろんなジャンルに広がっていく
感覚があっていい感じですね!
# とてもうらやましいベストテンでした...(^^)
私は、今年はどういう方向で行こうかなぁ...
なんて考えているところです。
新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い申し上げます。
はろるどさんの幅広いジャンルからのランキングを見て、大変素晴らしいと思います。
川村記念美術館は、いつも気になっているのですが、つい後回しになっています。コレクションも充実しているので、近ければ何度も行くと思います。
「ゴーギャン展」は、全く同感です。《我々は・・》と最後の展示室が充実していましたね。
こんにちは。根来お出かけになられたのですね。
会場の場所性を意識した作品、また簡素ながらも作り込まれた構成など、
展示とはかくあるべしの見本のような展覧会でした。
鴻池さんは一番迷いました。
かなり批判もあるようですが、一見した時の鮮烈な印象が忘れられずにベストへ入れてみました。
こちらも作り込みに優れた展覧会でしたね。
仰る通り昨年の鎌倉館は内藤さんを含め見事な流れでした。
そろそろ八幡宮参拝とあわせて再訪問といきたいところです。
本年も宜しくお願いします。
@遊行さん
だまし絵は面白かったですよね。
文化村はもう凄まじい人出でしたが、
あまり苦にならなかったのは展示が楽しかったからでしょうか。気がついたら2時間でした。
若冲は今年もまた沸騰しそうですね。
今度NHKで放送予定の若冲特集も楽しみです!
本年も宜しくお願いします。
@へみおらさん
どうしても見逃してしまう展覧会がいくつも出てきてしまいますよね。追っかけるだけでも大変ですが、やはり自分の関心に則ってみたい展示へ行くのが一番かなと思います。
昨年は色々お世話になりました。
本年も宜しくお願いします。
@すぴかさん
年末は音楽三昧でいらっしゃいましたか。
私もNHKのクラシックベスト?を見ながら年を越しました。
(そして年始は少しニューイヤーを見ました。)
いつもすぴかさんの心温まる記事で感服しております。
本年も変わらずに宜しくお願いします。
@あおひーさん
根来はもうビビビと来ましたので…。たまりませんでした。
伊庭さんはまずDOMANIですね。
あちらの展示も壮観です。
東博では声をかけていただきありがとうございました。
今年も宜しくお願いします。
@イッセーさん
私もイッセーさんのベストを拝見してまだまだ見逃している展覧会が多いなと思いました。
ベストはそれぞれの趣向がストレートに出て面白いですよね。
今年も宜しくお願いします。
@あべまつさん
根来とロスコはどこか共通点があったのかもしれません。
根来の深い瞑想的な朱、逆にロスコの熱く煮えたぎるような赤の魅力にひかれました。
今年は音楽ももう少し頑張ります!
本年もどうぞ宜しくお願いします。
@YCさん
鴻池さんの最後は確かに酔いましたね。
進んで行くうちに次々と開けるその仕掛けに感心しました。
DOMANI、伊庭さんの作品と新美の空間が意外と釣り合っています。
是非ご覧下さい!
本年も宜しくお願いします。
@kazuponさん
こちらこそいつも参考にさせていただいています。
なかなか関西の展示まで手が回らないのですが、
くまなく歩いておられるkazuponさんの記事を拝見して、
いつも行きたいなと思うことばかりです。
本年もどうぞ宜しくお願いします。
@memeさん
根来の図録そこまでいきますか…。
とりあえず案内だけは届くようにしているのですが…。
ヴィデオ良かったですよね。
本年も宜しくお願いします。
@lysanderさん
単に雑食なだけです。
今年はlysanderさんのようにもう少し講演会にも足を運べればと思っています。(宜しければ誘って下さい!)
>どういう方向
変わらぬ方向で宜しくお願いします!
@Minnetさん
川村は今年ローランサンもありますね。
仰るように常設も優れているので満足度の高い美術館です。
ゴーギャンは苦手でしたが印象が変わりました。
色の魅力、彼の絵を見てはじめて美しいと思ったほどです。
本年も宜しくお願いします。
いつもはろるどさんの記事楽しみにしています。今年もよろしくお願いします。
あけましておめでとうございます。
根来とロスコは何か共通点があったのかもしれません。
互いに強く惹かれました。
こちらこそ今年も宜しくお願いします。
参りました。
今年もヨロシク御願いします。
TBしたのですが、エラーになってしまい、遅れませんm(_ _)m
いろんなジャンルを見られているので、すごく参考になります。
今年も宜しくお願いいたします。
こんにちは。
ゴーギャン、数は少なかったのですが名作が揃っていて楽しめました。
我々以降の展開が良かったですよね。
こちらこそ今年も宜しくお願いします。
@朱奈さん
こんにちは。TBの件申し訳ありません。
うまく送れない時は本当に何度やってもダメですよね…。
(特に制限もかけていないのですが…。)
本年も宜しくお願いします。