「原田郁 ひとつの窓と醒める庭」 アートフロントギャラリー

アートフロントギャラリー
「原田郁 ひとつの窓と醒める庭」 
5/2-5/19



アートフロントギャラリーで開催中の「原田郁:ひとつの窓と醒める庭」へ行って来ました。

1982年に山形で生まれ、2007年には東京造形大学大学院美術専攻領域絵画科を修了。その後、山形や都内で個展などを重ね、2012年のULTRAにも出品のあった原田郁。色面を合わせ重ねて出来た建物や田園の景色。その幾何学面のような図像もまた印象的。全体としてはどこか牧歌的ながらも、線と面が鋭く交差して生まれる緊張感も魅力かもしれません。

そもそもDMの作品画像からして惹かれるもの。抽象と具象、その狭間。実際の作品を見る前から期待していました。

さて展示を見てどうだったのか。図像では分からない更なる面白さがあることにまたぞっこん。予想以上に魅せるものがあります。

さてその更なる魅力とは何なのか。まずは画肌です。


右:原田郁「HOUSE#003」2012年 キャンバス、アクリル

一枚の作品を見ましょう。上の写真右手の作品。澄み切った水色の空と瑞々しい緑の園を背景にして、ぽっかりと浮かび上がるように建つ黄色の家。何やら3D画像でも連想させるような独特の形をしています。


原田郁「HOUSE#003」(拡大)2012年 キャンバス、アクリル

さて家に近づくとどうなのか。一見、同じような質感で塗られていると思いきや実は違う。屋根と壁面が交差する箇所をアップしてみるとそこに秘密が。絵具に厚みがあるところと、そうでないところに分かれているではありませんか。

これが実に効果的です。光の当たる部分と陰っている部分で絵具の質感や色を変えることで、シンプルながらも思いの他に多様な表情が生み出されます。

さらにもう一つ。会場を見渡していくと気づく点が。それは各作品がそれぞれ結び合わることで、一つに繋がる世界が出来ていることです。

ネタバレになりますが、実はこれらの風景、元々は原田がコンピューターの画面で作った架空の世界とのこと。その景観を切り取り、それぞれ任意の地点に入り込んで絵画へ表しています。


原田郁展示作品

だからこそ先にも触れたような3D風。一昔前のCGのような風景は、不思議な郷愁を呼び起こします。架空の世界の架空の景色。そしてその中に入り込んで一つの絵画という平面に仕立てる。二次元と三次元が交差しています。

さらに会場では、言わば架空の架空、つまり架空の空間を再度架空の空間にかけてその様子を描いたという、一種のだまし絵のような作品も登場。まるでパラドックス。その風景を見ながら歩いていると、いつしかその3D世界と現実を行き来しているような錯覚さえ覚えました。

いくつかの仕掛けによって出来た絵画と風景。その狭間の揺らぎが何とも心地良く感じられました。

5月19日までの開催です。これはおすすめします。  

「原田郁 ひとつの窓と醒める庭」 アートフロントギャラリー@art_front
会期:5月2日(木) - 5月19日(日)
休廊:月曜日
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:渋谷区猿楽町29-18ヒルサイドテラスA棟
交通:東急東横線代官山駅より徒歩5分。
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