2013年 私が観た展覧会 ベスト10

私的ベスト企画。展覧会編です。今年観た展覧会のベスト10をピックアップしてみました。

2013年 私が観た展覧会 ベスト10

1.「アンドレアス・グルスキー展」 国立新美術館



この一位は不動です。人はどこまで貪欲にモノを捉えようとするのか。広がる景色に遍在する神の視点を見る。そして時にトリッキー。グルスキーの意図による展示空間も面白い。今年一番刺激的な展覧会でした。

2.「貴婦人と一角獣」 国立新美術館



クリュニー中世美術館のタペスリー「貴婦人と一角獣」が初めて日本へやって来ました。触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚、そして謎めいた「わが唯一の望み」。行き来しながら前に後ろにと美しきタペスリーに酔いしれる。また作品がすっぽりと収まった国立新美術館のスペースも効果的でした。

3.「ル・コルビュジエと20世紀美術」 国立西洋美術館



これほど建築以外に関するコルビュジエの業績を追った展覧会はなかったかもしれません。冒頭のスロープに映し出されるのは「電子の詩」。彼の関心はアフリカのプリミティブな彫刻にもあった。タピスリーやブックデザインの仕事も紹介する。コルビュジエの設計した空間で見るコルビュジエの絵画。これが意外なほどに魅力的でした。

4.「夏目漱石の美術世界展」 東京藝術大学大学美術館



親和性があるようでなかなか展覧会として取り上げられて来なかった文学と美術との関係。それを漱石という存在を通して読み解こうとする試みです。漱石文学に登場する美術作品だけでなく、漱石が同時代に見て批評した日本近代絵画までを網羅する。さらには漱石自筆の書画も。足りないところがありません。まさに好企画でした。

5.「モローとルオー」 パナソニック汐留ミュージアム



師弟関係だったモローとルオーの交流を通して辿っていく。モローがルオーに与えたいくつかの影響。また一見、異なって見える両者の共通点と何だろうか。モロー美術館より大作も来日しました。練られた構成に良質な作品群。確かに小さなスペースではありましたが、非常に見応えのある展覧会に仕上がっていました。

6.「坂茂 建築の考え方と作り方」 水戸芸術館



私の尊敬する建築家である坂茂さんの個展。意外にも美術館では初めてだったそうです。初期作から近年特に知られる災害復興支援のプロジェクトまで。モック多数で坂さんの業績を体感的に知ることも出来る。屋外に展示されていた女川町仮設住宅のコンテナも印象に残りました。

7.「カイユボット展」 ブリヂストン美術館



ブルジョワに生き、ボートを愛して止まなかった、カイユボット。やはり比較的早い段階のパリの街や日常の室内風景を描いた古典的な作風が心にとまります。また複数の視点を取り込んだようなパノラマ的な構図感も特異的。国内初の回顧展でしたが、以後もこのクラスの展示は望めないのではと思うほどに充実していました。

8.「米田知子 暗なきところで逢えれば」 東京都写真美術館



写真をどう『読ませるか』という点において意味深い展覧会だったのではないでしょうか。現実の向うにある記憶や歴史が米田の強いメッセージとともに浮かび上がる。作家の世界観が会場全体を余すことなく支配していました。

9.「生誕130年 川瀬巴水展」 千葉市美術館



巴水はこれまでにも追っかけてきましたが、単独でかつ網羅的、さらにスケールにおいてこれを超える展覧会はそう滅多にありません。また巴水に関しては所縁の大田区博でも回顧展を開催中。(もちろん中・後期も見に行きます。)巴水好きにはたまらない年でもありました。

10.「MOTアニュアル2012 風が吹けば桶屋が儲かる」 東京都現代美術館



昨年末から年を跨いで行われた都現美恒例の企画展。想像力なり感性が作品を通して拡張していくような体験。グループ展ながらも一つのストーリーを追うような流れがあった。賛否もあったと耳にしましたが、私が今年で一番、都現美で面白かったのは他ならぬ風桶展でした。

次点 「会田誠展 天才でごめんなさい」 森美術館

去年のベストに挙げた方も多いかもしれません。待望の会田さんの個展です。何と言っても衝撃的なのは「電信柱、カラス、その他」。思わず息をのむような凄惨な景色です。ただ美術館ということもあるのでしょうか。全体としてはやや大人しい印象も受けましたが、考えさせるものは多々ある。貫禄の内容でした。

またベストには入れなかったものの、特に印象深かった展覧会は以下の通りです。(順不同)

「光の賛歌 印象派展」 東京富士美術館
「ジョセフ・クーデルカ展」 東京国立近代美術館
「描かれた都  開封・杭州・京都・江戸」 大倉集古館
「五線譜に描いた夢ー日本近代音楽の150年」 東京オペラシティアートギャラリー
「印象派を超えてー点描の画家たち」 国立新美術館
「六本木クロッシング2013」 森美術館
「特別展 京都」 東京国立博物館
「山口晃展 画業ほぼ総覧」 群馬県立館林美術館
「光悦ー桃山の古典」 五島美術館
「スペイン・アンフォルメル絵画の二つの『顔』」 国立西洋美術館
「Drinking Glassー酒器のある情景」 サントリー美術館
「興福寺仏頭展」 東京藝術大学大学美術館
「竹内栖鳳展」 東京国立近代美術館
「引込線 2013」 旧所沢市立第2学校給食センター
「日本の絵 三瀬夏之介展」 平塚市美術館
「第19回 秘蔵の名品アートコレクション展」 ホテルオークラ東京
「アメリカン・ポップ・アート展」 国立新美術館
「和様の書」 東京国立博物館
「エミール・クラウスとベルギーの印象派」 東京ステーションギャラリー
「千紫万紅ーいつも現代」 セゾン現代美術館
「梅佳代展」 東京オペラシティアートギャラリー
「仏像半島」 千葉市美術館
「アーウィン・ブルーメンフェルド展」 東京都写真美術館
「魔性の女」 弥生美術館
「新井淳一の布 伝統と創生」 東京オペラシティアートギャラリー
「アーティスト・ファイル2013」 国立新美術館
「飛騨の円空」 東京国立博物館
「勝坂縄文展」 神奈川県立歴史博物館
「井戸茶碗」 根津美術館
「ターナー展」 東京都美術館
「川合玉堂展」 山種美術館
「アントニオ・ロペス展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「牧野邦夫ー写実の精髄」 練馬区立美術館
「フランシス・ベーコン展」 東京国立近代美術館
「ミュシャ展」 森アーツセンターギャラリー
「BLACKS ルイーズ・ニーヴェルスン|アド・ラインハート|杉本博司」 DIC川村記念美術館
「若冲が来てくれました」 仙台市博物館
「エル・グレコ展」 東京都美術館
「白隠展」 Bunkamura ザ・ミュージアム

如何でしょうか。今年のベスト10には去年から開催されていた展覧会を2つランクインしています。また最後まで悩んだのはベーコンです。言わば歴史的な展示ではありましたが、さて強く惹かれたのかどうかと問われると、答えに窮するのも事実。最終的には入れませんでした。

西洋絵画展の充実した一年でした。ランクにも入れた「モローとルオー」や「カイユボット」をはじめ、都美館の「グレコ」に「ターナー」、新美の「点描画家展」、ステーションギャラリーの「クラウス」、シスレー祭りの「光の賛歌」、そして森美の「ミュシャ」など、いずれも見応えのある展覧会でした。

美術館の常設展にも見るべき企画が多かったように思います。そもそも西美のコルビュジエもアンフォルメルも常設での展開です。その他にも例えば今、ともに開催中の都現美のMOTコレクション(特に2部のつくる、つかう、つかまえる)や、東近美の所蔵作品展の「何かがおこってる:1907-1945の軌跡」。半ば見慣れたコレクションも切り口を変えると驚きをもって見ることが出来る。美術館の「顔」でもある常設展。これからも追いかけたいです。

遠方では仙台の「プライス展」やセゾン美術館の「先紫万紅」が今も強く記憶に残っています。とりわけセゾンの充実した現代美術コレクションは目を見張るものがありました。ただ西日本方面に全く行けませんでした。それゆえに評判の良い愛知の応挙展や京博の山楽山雪展を見られなかったのが心残りです。

さてみなさんは今年どのような美術や音楽との出会いがありましたでしょうか。印象深かった展覧会などについてコメントやTBをいただけると嬉しいです。

本エントリで年内のブログの更新を終わります。振り返れば一年も早いもの。今年もこの拙い「はろるど」とお付き合い下さりどうもありがとうございました。それでは良いお年をお迎え下さい。

*過去の展覧会ベスト10
2012年2011年2010年2009年2008年2007年2006年2005年2004年その2。2003年も含む。)

*関連エントリ
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コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (すぴか)
2013-12-31 17:47:25
こんばんは。
とても新しいものに挑戦なさっていらっしゃるのが印象的でした。特に坂茂さんが入ってましたね。改めて読ませていただきましたが、やはり感激です。日本にもこういう方がいらして世界で活躍されている、こういう方がどんどん増えてほしいと思いました。
いつも楽しみに読ませていただいてます。
来年もご活躍を期待しています。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2013-12-31 18:11:34
@すぴかさん

こんばんは。コメントありがとうございます。

坂さんの展示、一人でも多くの方が見て欲しいと思うような内容でした。
紙管から広がる可能性。「建築は社会に役に立っているか」と仰る坂さんの姿勢、そういうものがよく伝わってきました。

こちらこそ来年も宜しくお願いします!
 
 
 
http://blog.goo.ne.jp/franzbiberkopf/e/c71a7f9e21375eec07fcc57d9bc7c408 (道楽ねずみ)
2013-12-31 18:15:25
こんばんは。

TB有り難うございました。
私もTBをさせていただきました。

毎年恒例のベスト10とても参考になりました。
私もグルスキー、一角獣、コルビジェはいいと思いました。

よい年をお迎え下さい。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2013-12-31 18:24:10
@道楽ねずみさま

こんばんは。コメントまでありがとうございます。

今年もたくさんの展覧会がありましたね。
10展に絞るのがまた大変でした。

道楽ねずみさんも良いお年をお迎え下さい。
 
 
 
明けましておめでとうございます。 (M。)
2014-01-01 07:18:04
今年も宜しくお願いします。
読ませていただきました。
私のも一部重なるものを選びました。
一角獣は、頂いた招待券でリピートしまして、その時の印象も含めて非常に良かったです。
以下が私のものです、拙いですが・・・
2013年 美術館、博物館特別展企画展ベストテン|M。だねえ☆゛ |Ameba (アメーバ) http://s.ameblo.jp/mar518/entry-11738668143.html
 
 
 
Unknown (はろるど)
2014-01-01 12:47:51
@M。さん

あけましておめでとうございます。

一角獣、良かったですよね。
私も結局三度くらいは足を運んだと思います。

リンクありがとうございました。
後ほどお伺い致します。

本年も宜しくお願いします。
 
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