「椛田ちひろー影をおりたたむ」 アートフロントギャラリー

アートフロントギャラリー
「椛田ちひろー影をおりたたむ」 
11/29-12/22



アートフロントギャラリーで開催中の椛田ちひろ個展、「影をおりたたむ」を見てきました。

黒ボールペンを駆使して平面の他、立体、インスタレーションと多様な制作を展開する椛田ちひろ。同ギャラリーでは昨年冬にも個展を開催。ガラスにアルミ、樹脂、そしてアルミテープ。素材との関係においても表現の幅を広げています。

その椛田が本個展でさらに変化。また新たな境地を見せている。では変化とは一体何なのでしょうか。



まずは黒ボールペンによって塗りつぶされたモノクロームの深淵な世界。ここまでは基本的には同じです。しかしながらそこへある要素が加わりました。



端的に触れると色。つまり黒だけではなく別の色、金と銀が用いられているのです。一面に塗られた黒ボールペンのモノクローム面の上に、金や銀のボールペンによる細かな線が渦を巻きながら散っていく。闇の中に溶けていくのは仄かに明るい光の粒子です。鈍く照りながら重厚感のある面と、細く軽やかで動きのある線のせめぎ合い。黒と金と銀との関係。これが作品にまた新たな表情を生み出しています。



元々、黒のボールペンとはいえ、その写し出す色味は紫とも藍色とも言える深みがある。それはまるで宇宙空間のようでもありましたが、そこへ光の帯がかかるとまさに星の瞬き。天の川のように広がっているではありませんか。



一方でこれまでと同様、黒ボールペン一色で展開した作品も。一つ一つの筆致は繊細ながらも全体としてはよりダイナミックに。支持体の中を滔々と流れる姿はさながら水をたたえた大河です。思わず都現美にあるサム・フランシスの大作、「無題」(1985)を連想しました。溢れ出るエネルギーの帯。非常に動的です。

椛田は今年初旬、スイスでの個展を境にカラーのボールペンを使いはじめたそうです。近年の作家の展示をMOT、αM、あざみ野と追いかけてきた私にとっては、この色の導入、半ば衝撃的でした。



常に同じ地平に留まらない椛田の制作姿勢、改めて感じ入るものがあります。

12月22日までの開催です。おすすめします。

「椛田ちひろー影をおりたたむ」 アートフロントギャラリー@art_front
会期: 11月29日(金) ~12月22日(日)
休廊:月曜日
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:渋谷区猿楽町29-18ヒルサイドテラスA棟
交通:東急東横線代官山駅より徒歩5分。

*写真は全て「椛田ちひろー影をおりたたむ」展の会場風景。
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