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「新幹線の貨物利用」は、進むのか?

2021-01-28 20:02:54 | ビジネス

毎日新聞のWEBサイトにJR東日本が、上越新幹線を利用して新潟の朝摘みの花を輸送する、という記事があった。
毎日新聞:新潟で摘んだ切り花 数時間後には東京駅で直売 新幹線輸送の力

「新型コロナ」の感染拡大によって、大打撃を受けた業種の一つが「人の移動の為の輸送業」だった。
JALやANAなどの航空各社会社はもちろん、JR各社にとっても「新型コロナ」による人の乗車率の低下は、これまでにない打撃だった。
特に新幹線依存が高いJR東海などは、民営化後初めての赤字となった。
日経新聞:JR東海、今期最終赤字1920億円  民営化以降初の赤字

「新型コロナ」によって、人の移動が制限されると同時に「テレワーク」による勤務が推奨されるようになり、わざわざ出張をする必要があるのか?という、疑問を利用者側である企業が持つようになった、ということが大きいだろう。
もちろん、観光利用の減少も大きな痛手だったはずだ。
「新型コロナ」が収束すれば、観光目的での新幹線利用はある程度回復するだろう。
もしかしたら、今のような「自粛状態」が長く続けば、「収束宣言」が出されたと同時に観光に出かける人が急増するかもしれない。
それは「Go Toトラベル」などとは関係なく、多くの人たちが「解放感を味わいたい」という本能的(というべきか?)な行動のような気がしている。

ただ、ビジネスでの出張利用は、思いのほか増えない可能性のほうが高い、と考えている。
理由は「テレワーク」などの利用が定着すれば、出張などの経費を使うことに疑問が出てくるからだ。
「経費削減」という点では、削減しやすい費目になる。
もちろん、対面でなければできない仕事もあるはずだが、出張の頻度そのものが減る可能性は高い。

そうなれば、今までのような「新幹線利用」を想定していては、経営的に厳しくなると考えられる。
減便するにしても、ある程度の本数を走らせ、利用者・利用機会を増やさなくては、収益面で厳しい状況になるだろう。
とすれば、JR東日本のような「新幹線の貨物輸送化」というのも、十分考えられる転換のような気がする。

というのも、JR在来線の車内販売そのものが減ってきているからだ。
時事通信:山陽新幹線の車内販売休止 JR西日本が2月から

JR西日本の山陽新幹線での車内販売休止の目的は、「新型コロナ」によるものだが、車内販売の為の物品車両(というのだろうか?)が、「空気を運ぶだけのスペース」となってしまう。
このスペースを「貨物」として利用しようとしているのが、JR東日本の「上越新幹線の貨物輸送」だ。
JR東日本は昨年、東北新幹線でも同様の「新幹線貨物輸送」を行っており、手ごたえがあったのだと思う。
とすれば、新幹線を持つJR各社が「新幹線の貨物輸送化」を進めるメリットはあるのではないだろうか?

例えば、JR西日本は沿線県の産業支援を事業の一つとして行っている。
支援産業の商品を通販カタログ化し、ECサイトで販売し、「新幹線お急ぎ便」のような割り増し送料でお届けする、ということも考えられる。
「広島の企業の商品を午前中に注文すれば、夕方には自宅に届く(あるいは、最寄りのJR駅で受け取ることができる)」というのは、便利なサービスだろう。
場合によっては、ヤマト運輸などの宅配事業者と協業することで、より特化した「物流サービス」ができるようになるかもしれない。

元々鉄道は、人を運ぶだけではなく、物を運ぶこと(=貨物輸送)も行っている。
SDGsという視点でも、メリットは大きいように思える。
「新型コロナ」によって、人の動きの流れに変化が起きた。
それは運送でも、変化を起こす切っ掛けとなるような気がしている。