Yahooのトピックスに、ジャーナリスト・後藤健二さんを殺害した「IS国の覆面男」についての記事が取り上げられていた。
Yahoo:後藤氏殺害の「覆面男」。彼はなぜ「殺人鬼」になったのか
この「覆面男」については、すでに様々なメディアが人物を特定していた。
一部では、イギリス出身のラッパーという説もあったようだが、どうやらそのような人物ではなく、ごくごく普通の青年だったようだ。
しかし、彼を「殺人鬼」へと変えてく過程を読むと、あるきっかけがあったのだと理解できる。
それは、中東出身者というだけで、警察などから不当に拘束され時には厳しい尋問にあい、そのような経験をするたびに、欧州社会に対して絶望していったようだ。
おそらく最終的に、彼を「IS国」へと向かわせたのは、仕事を失い結婚すらできなくなったことだろう。
彼が受けた不当な拘束や尋問の数々は、第2次世界大戦前~戦時中の「特高」と呼ばれた警察や、1950年代に米国で吹き荒れた「レッドパージ」を彷彿とさせる。
問題なのは、「なぜ彼が殺人鬼になったのか?」ということではなく「なぜ彼を殺人鬼へと変貌させたのか?」ということだと思う。
そして、彼が受けた様々な拘束や尋問が行われたのは「中東出身者=危険人物」という、ある種の「レッテル」だったのだということもわかる。
違う言い方をするなら、「人種的な先入観」による差別や偏見が、彼を「殺人鬼にした」ということになるように思えるのだ。
この「先入観」というのは、実は誰しもが持っているモノで、様々なところで「判断の基準」となることがある。
それは人物に対してだけではなく、商品や企業などにもあることだ。
商品や企業に対して使う言葉があるとすれば、それは「ブランド」というになるかもしれない。
ただ注意しなくてはならないことは、その「ブランドの良しあしを決めている」のは、自分の判断ではなく他者から与えられた情報などによる「バイアス」を素にしている、ということだ。
「認知バイアス」とか「確証バイアス」が加わることで、正しい判断ができなくなる、ということは知られていることだと思う。
その意味で、「ブランド構築」という戦略はとても難しく、生活者との公正で真摯なコミュニケーションが重要である、ということになる。
「情報化社会」と言われて久しいが、それらの情報の中には「様々な先入観を植え付ける情報が含まれている」ということを、十分理解する力が必要である、ということだけではなく、国という組織がそのような「先入観」で人を見る怖さということを感じさせる記事だと思う。