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「働く」ということ-村上ファンドの提案-

2006-02-04 22:45:41 | アラカルト
一昨日のエントリーが、遅いものだったために昨日の話題となってしまったようだ。
共同通信社が発信した「村上ファンド、松坂屋に社員全員解雇提案」というのは、それだけセンセーショナルだったということだろう。
そのことに、コメントを下さった「カミナリ弟さん」ありがとうございました。
そして、昨日のニュース報道などから改めて「村上ファンドの提案」というモノは、なんだったのだろう?

今回の村上ファンドの提案は
1.銀座などにある店舗を売却する。
2.売却益を原資にして、全従業員に退職金を支払い辞めてもらう。
3.退職者の中から「松坂屋の株を取得し、働きたい」と思っている元社員を再雇用する。
というものだったらしい。
このことについては、テレビなどのニュース番組の取材の範囲を元にしていて、当事者の発言ではないが、これらのニュースソースを基に「働く」という意味を考えてみたい。

村上氏は「従業員の株取得によって、意欲的に『自社の企業価値を上げる努力を、積極的にする』」ということを、目的?として提案しているというのだが、本当に「自社株を持つことが、企業価値を高める努力の動機付けとなるのだろうか?
日本の企業には、従業員を対象とした「持ち株会」という制度がある。
月々のお給料から少額を積み立て、自社株を買うという制度だ。
このような制度を利用し、自社株を取得している社員も少なくないだろう。
だからといって「企業価値を高めよう」と、思っているだろうか?
むしろ、他に「働く」という意味を、見出しているのではないだろうか?
お客様と接する仕事であれば、「ありがとう」というお客様の言葉を聞くことを喜びとしているだろう。おそらく、それぞれの職務によって「使命」のようなものを持って「働いている」のでは、ないだろうか?
それらが集まって、最終的に「企業価値が上がる」ということに結びついているのでは、ないだろうか?
そこには「自社株を持っている」ということとは関係ない。

村上氏の提案に無理があるのは、全員解雇をしておいて「やる気のある社員は、再雇用する」という、発想である。
それも「自社株を持つ」という、制約つきで。
一端、企業から解雇された人の気持ちというモノを、理解していないように思うのだ。
「ビジネスに情はいらない」ということなのかも知れないが、人は情の動物でもある。
人を思い遣る視点があるから、「よりよい生活を提案したい」という百貨店の原点となるビジネスが成り立つ。
その視点が、村上氏の発言にはない。

これまでのような「シャンシャン総会」が、良いとは思わない。
株主であっても「社会の一員としてより良い企業」としての、提案を積極的にすることは大切なことだと思う。
むしろ、これからの株主は利益配当だけを楽しみにしたり、トレーダーといわれる投機的株主は、企業にとっては「良い株主」とは思われないだろう。
その意味では、カミナリ弟さんが指摘している通りだろ。
でも、それと社員の働く意味とは別なこと。
それを、シッカリ理解する必要があるのではないだろうか?