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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 687 週間リポート 読売ジャイアンツ編

2021年05月12日 | 1977 年 



♬ 北の宿 ♬ は昨年の歌なのに
昨年ヒットした都はるみの『北の宿から』みたいに未練タラタラで「私は諦めませんよ。正月三が日が明けたら私が直接交渉に乗り出します」と2年越しで原辰徳選手(東海大相模)に御執心なのが正力オーナー。既に交渉の日時は決定しているそうだ。昨年暮れの12月19日のスカウト会議で中尾スカウト部長が「もう諦めましょう」と進言したが正力オーナーは「いや諦めない」と交渉続行を指示した。翌日、正力オーナーの命を受けた中尾部長が原家に出向いたが母親・勝代さんに「主人も息子も一度言い出したら決して変えません。お気持ちは嬉しいですがお引き取り下さい」と巨人入りを断られた。

「私がこれだけ粘るのは原君が長嶋君の若い頃に生き写しだからだよ。見た目じゃなくて選手としての佇まいがソックリなんだ。原君が東海大学の入学式に出席するまで諦めない」としぶとさにかけては天下一品の中尾部長の上をいく正力オーナー。「松本君(早大・ドラフト5位指名)だって根気よく交渉して入団にこぎ着けたじゃないか。私と長嶋君と二人で説得すれば可能性はゼロではないと信じています(正力オーナー)」。正力・長嶋コンビの交渉は実績がある。先ず正力オーナーが政財界の人脈を駆使して選手が所属する組織のトップと接触し、外堀を埋めた後に長嶋監督が出馬して一気に陥落させる。

「だって今の野球選手で長嶋さんに『君と一緒に野球がしたい』と言われて断れる選手がいるでしょうか」と松本が述懐したように長嶋茂雄といえば少年時代に夢見た憧れの大スター。その人にヒザ詰めで口説かれたら誰もが陥落するのは当たり前だ。原選手にもこの作戦で挑む。例えるなら正力オーナーが先発、中継ぎがスカウト陣、抑えで長嶋監督が登場し勝利するストーリーだ。必要とあらば王選手が代打で登場するという全員野球だ。「巨人百年の大計からどうしても何が何でも欲しい選手(正力オーナー)」と球団の枠を超えて讀賣グループの総力を結集して挑む覚悟だ。



もうガマンできん。何を?
キャンプも中盤になった頃に宮崎に寒波が押し寄せた。そんな中でも新婚カップルは熱々ムードいっぱいで寒ければ寒いほど肩を寄せ合って選手らの練習を見守っている。そんな風景に選手が刺激されないわけがない。特に新婚の河埜選手や中畑選手の心中察して余りある。「次の休日にはこっちに呼ぼうかと思っているんだけど、他の人に知られるとカッコ悪いから迷っているんだ」と河埜選手。練習が休みの前夜は許可を取れば外泊することは可能だが躊躇しているのだ。女房が来たから外泊しますとは言い出しにくいらしい。スタンドの新婚カップルを見ては複雑な葛藤に陥っている。

河埜より若い中畑は奥さんを呼ぶつもりはないという。「もう半月も会うのを我慢したんだから、この際だから最後まで我慢しますよ。今年こそレギュラーになって来年は誰にも遠慮せず最初の休日に呼んでやりますよ(中畑)」と野球に全身全霊没頭する覚悟だ。そこへいくと浅野投手の場合は奥さんの実家が鹿児島とあって奥さんが里帰りしたついでにちゃっかりデートと洒落込んだ。「宮崎にもカミさんの友達がいるので僕に会うというより友達と会いたいんじゃないですか(浅野)」と照れ隠し。そんな若手選手の雰囲気を察した王選手が率先して家族を宮崎に呼び寄せた。いかにも王らしい気配りの行動だった。

青島のプリンスホテルに奥さんと3人の子供たちを呼んだのは第3休日前夜の13日。「プライベートなことだから邪魔をしないでくれよ」と報道陣に釘を刺して一目散に家族が待つホテルへ出かけて行った。だがしかし、やはり若手選手にはハードルが高いようで河埜、中畑、中山、平田の新婚ホヤホヤ4人組は「やはり一人前になるまでは…」と目の前を闊歩する新婚カップルを横目に練習に汗を流している。一方で小林投手(結婚3年目)のように新婚カップルに記念写真をせがまれて「もう熱々ムードにアテられるのには慣れちゃった(小林)」と達観した選手もいる。とにかく若手選手には目の毒な今日この頃だ。



どっちが来るのかなぁ…
待望の新外人投手がスポーツ紙にチラホラ出始めた。15日付けの紙面には第一候補がネッパー投手、第二がセルマ投手の名前が見出しになった。「名前がいいよね、ネッシーみたいで」とチーム内でも話題となっているが勧進元の佐伯球団常務は「スポーツ紙が独自に調査して書いたんだろう。僕のリストには30~40人も載っているから何とも言えないね」と肯定も否定もせずニヤニヤするばかり。そのリストの中から3月15日に終了した大リーグのスプリングロースターの最終選考に残らなかった投手、また残っても3A契約だった投手の中から選ぶ事になるので、正式決定にはもうしばらく時間がかかる。

しかしネッパーの見出しを書いたスポーツ紙編集部は「獲得の仲介をしている大リーグ・ドジャースのオーナー秘書を務めるアイク生原氏や在京の関係者の話を総合すると巨人が一番熱心なのはネッパーに間違いない」とかなりの自信を示している。ネッパーの正式名はロバート・ウエズリー・ネッパーで23歳の左腕投手。現在はサンフランシスコ・ジャイアンツに所属している。昨季はジ軍で4試合出場しただけでほとんどを3Aで投げていた。3Aでの過去2年の成績は11勝、14勝している。その前年の1974年には1Aで20勝している身長184cm・体重88kgの伸び盛りで将来有望な大型投手だ。

二番手のセルマ投手はリチャード・ジェイ・セルマという34歳のベテラン投手。大リーグ歴は10年でNYメッツを振り出しにパドレス➡カブス➡フィリーズ➡エンジェルス➡ブリュワーズを渡り歩いて1975年からド軍3Aで火消し役を務めてきた右腕。「いずれにせよ毎年毎年外人選手を探すのは芸がないから入団したら3~4年は新外人を探す必要がないような選手を選びたいね」と佐伯常務は言う。ネッパーことネッシーか老かいなセルマか、あるいは全く別の大穴が来るのか分からないが、選手を見る目は確かなアイク生原氏を前線にしての交渉だけにポンコツ投手が来る事だけはなさそうだ。

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