Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 863 週間レポート ヤクルトスワローズ

2024年09月25日 | 1977 年 



生涯忘れえぬ米田からの一発
大杉選手が去る8月11日の大洋戦で史上8人目の通算350号本塁打を達成した。「いろいろあったなぁ」と13年間のプロ生活を振り返って感慨深げに投手との駆け引きやタイトル争いの心理状態を披露した。大杉選手自身が一番印象に残っているのは東映フライヤーズに在籍し、初めて本塁打王になった昭和46年のシーズン。ホームランダービー常連の野村監督(南海)は残り3試合、大杉選手は2試合で共に42本塁打と並び終盤まで競り合った。野村監督は42本のままシーズンを終えたが大杉選手は最終戦となる対阪急ダブルヘッダーで2発放って44本塁打でタイトルを獲得した。

「神サマにすがる思いで打席に入る時に米田さんに声を掛けたんだ。『フォークボールを投げて下さい』って。言っておくけど僕はフォークボールが大の苦手で全く打てなかった。そうしたら本当にフォークボールが来た。苦手の球を打ってこそタイトルを獲らなきゃ意味ないじゃん」と。米田投手から43号を放ったのに続き、第2ゲームでも足立投手から44号を連発して野村監督との本塁打王争いに決着をつけた。「野村さんに勝った感激で涙が止まらず、汗にかこつけて溢れ出る涙を何度も拭った」と回顧する。念の為に言っておくが米田投手は " 打たせるため " にフォークボールを投げたのではあるまい。苦手な球を要求する大杉選手を意気に感じたのだろう。

プロ初本塁打は昭和40年9月17日の東京オリオンズ戦で迫田投手から。「シュートに詰まってバットが折れるかと思ったので慌てて左手一本で打ったらレフトスタンドに飛び込んだ。当時の東京球場は狭かったからホームランになったんだと思う」当時の月給は7万円。13年前とはいえバット1本は2千円ほど。簡単にバットを折るわけにはいかなかったので、咄嗟に右手を離してスイングしたことが柵越えにつながったようだ。こうなると次なる目標は史上3人目となる通算500号本塁打。「僕はいま32歳。あと5年はバリバリ働けると思う。年間30本なら軽くいけますよ」と腕をぶす。


ドロボー
神宮球場の右翼場外にあるクラブハウスがまた泥棒の狙い撃ちに遭った。去る8月13日午後4時頃、新宿区霞ヶ丘13にある「ヤクルトクラブハウス」内の更衣室が荒らされ、倉田投手ら選手5人が計6万1千円の窃盗被害に。これまでも毎年のように空き巣に入られて警戒をしているのだがプロフェッショナルの手口にはお手上げ状態なのである。

たまたま一軍選手は広島に遠征中で小森二軍監督以下、二軍の選手たちが練習中に忍び込まれて被害に遭った。高給取りが多い一軍選手がゴソッと狙われたら被害額はもっと多かったに違いない。一昨年には熱狂的なファンがクラブハウスに侵入して選手のグローブ、帽子、ストッキングなど練習用具一式を盗んだこともあった。
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# 862 週間レポート 中日ドラゴンズ

2024年09月18日 | 1977 年 



タイガース?キャッツだろう
「星野っちゅう男は役者やのう」これは野球評論家の鶴岡一人氏の言葉。またこうも続ける。「阪神と試合をやっとる中日を見てるとこれが5位あたりをウロチョロしているチームやとはどうしても思えまへんなぁ」と中日が阪神をカモにしている今シーズンを代弁している。西京極球場での阪神戦も2勝1敗とまたしても勝ち越した。その代表格は虎キラーの星野投手である。「コラー、星野ええかげんにしとけッ」と虎キチの絶叫が聞こえたのか分からないがマウンド上の星野投手は声のした方向に目をやり「うん、うん」と頷いた。これを見た阪神ナインは余計にカリカリ。こうなれば戦う前に勝負アリだった。阪神は1対8で惨敗した。

星野投手はこの勝利で今シーズン9勝目。阪神からはオール完投の6勝、うち完封が2試合。セーブも2つ稼いでいる。「今年の俺は阪神さんから給料をもらっているようなもの。この分では西の方向に足を向けて寝れんゾ」とニヤリ。阪神戦は通算でも24勝11敗とお得意さんにしている。「本当はね俺はいつもビクビクして投げているんだ。今年は体調が万全ではなくスピードが出ないからさ」と自分の右太モモをさすった。肉離れを起こした右足を庇うあまり投球フォームを崩して直球の伸びを欠いているのだ。

スピード不足をスライダーやフォークボールなど変化球を駆使してしのいでいる。これが強振する打者が多い阪神打線にはかわす投球が功を奏しているのかもしれない。中日ナインは「阪神相手に仙ちゃんが投げたら勝ったも同然」とばかりノビノビとプレーして思い切りの良い好打や守備でもファインプレーを披露する。逆に阪神ナインは「中日の連中はウチとやると、どうしてあんなによく打つんだろ。ホント不思議だわ」と嘆く。人間なにが幸いするかわからないものだ。


板についてきた田尾
デービス選手が8月2日の広島戦で三村選手が放った打球を捕球した際にフェンスに激突し左手首を骨折して戦線離脱した。その穴を埋めるべく後釜に入った田尾選手がようやく板についてきた。特に最近の守備について師匠役の中コーチが「短期間であれだけこなせるようになったのは大したもの。良いセンスの持ち主だね」と舌を巻く急成長ぶり。ただしバッティングについてはもう一息といったところ。「投球から早く目を離してしまうのが欠点。顎が上がりボール球に手を出してしまう」というのがネット裏の共通した田尾評だ。

ダイヤモンドグラブ
「実は僕、ダイヤモンドグラブ賞を狙っているんですよ」と冗談を飛ばすのは対広島18回戦で13勝目をマークした鈴木孝政投手。この試合、2対2の同点で迎えた7回に広島が一死三塁と勝ち越しのピンチに鈴木孝投手は好調のライトル選手と対戦した。初球、なんとライトル選手はバントの構えをした。スクイズである。意表を突かれた鈴木孝投手は一瞬出遅れたがすぐにダッシュでマウンドを駆け下り捕球するとバックホームし、間一髪でアウトにして失点を防いだ。

「てっきり打ってくるもんだと思っていたので驚いた。ライトルがバントの構えをした時は『エッ、送りバント?』と直ぐにスクイズだと分からなかった。ビックリして出遅れたけど運良く目の前に球が転がって来たので間に合った。ちょっとでも横に行っていたら負けていたでしょうね」と振り返った。調子の良い時は何でも好転する。果たして鈴木孝投手の幸運がいつまで続くのか。ダイヤモンドグラブ賞を獲るという軽い冗談が実現するかもしれない。
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# 861 週間レポート 広島東洋カープ

2024年09月11日 | 1977 年 



見えたぞ大記録達成の日
" 大記録 " といっても不名誉な方で、池谷投手が " 本塁打配球王 " に邁進中である。15日のヤクルト戦に先発し6回までは散発5安打と見事な投球を見せたが、7回二死一塁で若松選手に左翼ポール直撃の同点本塁打を浴びて試合は引き分けとなり勝利を逃した。この引き分けでチームの今シーズンの引き分けが12試合となりセ・リーグ記録を更新した。150球の完投をフイにした池谷投手は「若松さんにまたやられたなぁ。打たれた球は悪くなかったのに…」と何とも割り切れない様子。

決して失投ではなく外角低目いっぱいの左打者の死角に投げたのだが見事に弾き返された。この一発は池谷投手にとって今シーズン39本目の被本塁打。2位以下を大きく引き離す、不名誉な断トツのホームラン配球王である。これまでのセ・リーグ記録は昨年の平松投手(大洋)が記録した40本だから記録更新は時間の問題。「だからといって登板しないわけにはいかないし…もう覚悟はしているので開き直って思い切り投げるだけです」と少々ヤケ気味の池谷投手。


王の一発は我が広島市民球場で
" 世紀の本塁打 " をどこで打つのか。あと7本(8月19日現在)に迫った王選手の本塁打世界記録は話題となっているが、23日から地元で巨人戦を控えている広島もその余波を受けている。「ひょっとしたらウチの投手が打たれる場面があるかも」と球団関係者はソワソワしている。だからといって世紀の一発を打たれては困るというわけではないようだ。「勝負だから負けられはしないが記念となる本塁打がこの広島で見られるのは地元のファンにとって幸せだと思う」と関係者は寧ろ歓迎?している。

タイトル
6回途中で雨の為にコールドゲームとなった16日のヤクルト戦。勝ち投手となった高橋里投手は「これぞまさに天の恵み。調子が悪かったので、かわすピッチングに終始したけどそれ以上に雨がかわしてくれたね」とご満悦な様子。この勝利で4連勝の11勝目。ハーラーダービーで13勝でトップを走る安田投手(ヤクルト)を射程圏内に捉える一方で防御率も良くなり「こうなったら両方のタイトルを狙っちゃおうかな」と目を輝かせる。
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# 860 週間レポート 阪神タイガース

2024年09月04日 | 1977 年 



田淵はやっぱり怪物だった
長らく故障で試合から遠ざかっていた田淵選手。ベンチ入りしたとたん一発を放ち、やはり怪物だとの声が溢れた。田淵選手は休み明けに強く、よく打つというジンクスは生きていた。驚異の一発は8月13日の中日戦(西京極)の7回裏に飛び出した。代打に起用されると芝池投手から左翼席に放り込んだ。この一発で阪神の連敗をストップさせてファンは大興奮。右手親指の第一関節亀裂骨折で1ヶ月近く休んでいたが、9日の最終診断でドクターストップが解かれて二軍での練習を再開した。3日間の打ち込み後に12日の中日戦から戦列に復帰した。代打に起用された復帰第1打席こそ左翼フライに倒れたが、前述の通り2打席目に19号本塁打を放った。

過去にも死球禍で休んだ後に復帰するやたちまち本塁打を放ったことがある。「本当に休んだ後はよう打ちよる。やはり怪物の類ですワ。他の選手には真似できへん。ろくに練習せえへんでもあの当たりですワ」と吉田監督も舌を巻いた。待望のスタメン復帰は月末の巨人3連戦(後楽園)からで猛虎打線の中心に返り咲いた。「指の骨折なので送球には難がある。でも残り試合も少ないし少々無理してでもやらんとね」やはり猛虎打線に田淵選手は必要不可欠な存在であることが改めて気づかされた。


掛布もうすぐベスト10入り
掛布選手の名前がもうすぐ新聞紙上を賑わせる。左手首の負傷で1ヶ月半も休み、打席数不足だったが間もなく規定打席に到達する。8月19日時点であと10試合不足なので9月上旬には待望の打撃10傑入りし、打率 .344 は4位あたりに顔を出す勘定だ。期待はもちろん首位打者のタイトル獲得だが厄介なのが若松選手や張本選手といった首位打者争いの常連実力派の存在で、彼らを追い抜くのは至難の技だ。ちなみにトップを走る若松選手の打率は .368 もあり大変なハイアベレージでこの調子で走られては追いつけそうにない。

「首位打者なんて僕には無理ですよ。昨年の打率 .325 を少しでも上回れば上出来だと思っています。規定打席に到達すると新聞で自分の名前を見る楽しみが出来ますが、反面でプレッシャーを感じてしまいそうで怖さもある。規定打席にあまり早く届かない方が良いかなと考えてしまいます。案外、名前が出ないうちが花かも」と正直に話す。チームは不振だが掛布選手のバッティングは安定し、虎ファンにとって唯一の希望の星だ。


嬉しい悲鳴
古沢投手が二重の喜び。8月13日の中日戦で9勝目をあげたが、実に1ヶ月ぶりに美酒を味わった。この試合でもう一つ古沢投手が歓喜したのが左翼ポール際に放った2号本塁打。大阪厚生年金病院の黒津清明整形外科医長との間でノーヒットノーラン達成や自身が本塁打を放った場合は10万円のボーナスを受け取る約束をしている。第1号に続きまたも10万円を手にした古沢投手は「文句なしの一発やった。マグレも二度目となれば実力や。あんまり打つと先生が破産しよるから打ち止めにするかな」とニンマリ。残るは本職のノーヒットノーラン達成だが果たして実現することは出来るか。
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