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買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 686 週間リポート クラウンライターライオンズ編

2021年05月05日 | 1977 年 



オレたちが悪いんじゃなか!
昨年暮れから始まった契約更改交渉が難航している。ほとんどの若手選手は郵送方式で更改を済ませるが、年俸300万円を超える一軍クラスの選手は球団事務所で直接交渉に臨む。その球団事務所での交渉がさっぱり進まないのだ。昨年中にサインしたのは控えクラスの永射投手らほんの数人。どうしてこれほどはかどらないのか?どうやら原因は球団側の強硬姿勢にあるらしい。昨季は2シーズン制導入後、初の前後期ともに最下位という成績に終わり球団フロントは協議し「成績不振は球団、首脳陣、選手ら全員の責任。ライオンズを運命共同体として考えるのなら選手も個人成績とは別に責任を取る必要がある」との結論に達した。

つまり来季の契約方針として一軍選手は一律5%減から交渉を始めると決めた。例えば査定が現状維持の500万円なら25万円減の475万円になり、20%増の場合は15%増止まりとなる。当然の如く選手側の反発は大きい。「運命共同体とか言っているが選手だけが減俸なのは納得いかない。もとはといえばドローチャーの監督招聘に失敗し、チーム構想や方針が定まらないまま戦った結果の最下位。フロント陣の責任の方が大きいでしょ」と某ベテラン選手。またある若手選手は「首脳陣の好き嫌いで無茶な使われ方をされて調子を崩した。選手だけの責任じゃない」と交渉の席で球団フロントに詰め寄った。

越年組の中でも特に強硬なのが1100万円から大台割れを提示された東尾投手と2000万円から1800万円にダウンする土井選手だ。東尾は巨人から非公式にトレードの打診があったと噂されて騒がしいオフだが「野球以外の私生活まであれこれ言われるのは心外。話にならんよ」と強気一点張り。土井も「主砲として期待していると言われたがそれが金額に反映されていない」と粘る。数少ないアップ組も予想外に渋い金額提示に表情は冴えない。新人王こそ逃したが11勝した古賀投手は倍増を望んでいたが75%増を保留、ベスト指名打者の大田選手も35%増の提示で合意には至っていない。



あれ!ライターの火が消えた
投手陣は手薄だが打撃に関しては全く心配していない。それがキャンプ終了時点での首脳陣の総括だった。確かに昨季は前後期ともに最下位に沈んだライオンズだったがチーム打率はリーグ1位、本塁打数も2位と大当たりだった。ただし得点力が低く打線として機能させる事がキャンプの課題でそれを克服できたと首脳陣は胸を張っていたのだが3月10日現在のオープン戦のチーム打率は1割9分3厘でリーグ最低。打線の繋がり云々の前に選手個々のバットは湿ったままでライターの火は消えたままだ。

一方の投手陣は予想外に好調で防御率は1.88 とトップ。特にリリーフ陣の奮闘が目立つ。移籍組の左腕・竹田投手(前中日)、山下投手(前大洋)、倉持投手(前ロッテ)が好調だ。また意外な所では一軍残留スレスレと見られていた五月女投手と高垣投手(前大洋)が長いイニングを任せられるリリーフ転向に成功した。玉井投手、野崎投手、浜浦投手、永射投手らがオープン戦で結果を残せていないだけに移籍組の頑張りは首脳陣をホッとさせている。

スローガンに掲げた " 5点打線 " はおろか " 5安打打線 " にも届かぬ惨状だ。「打てない。打てなさ過ぎるよ。直球なら打てるが変化球にはお手上げなんて情けない」と鬼頭監督も怒り心頭だ。昨季の首位打者の吉岡選手、ベスト指名打者の大田選手、さらには一昨季の本塁打王の土井選手といった主軸打者が打ち込み不足を理由に欠場しているとはいえ、代わりに出場の機会を得た若手選手が揃って討ち死に状態に伊藤打撃コーチは「せっかくのチャンスをみすみす逃している若手は情けない」と。



チームをPRするCMが登場
オープン戦を例年になく好調に乗り切ったライオンズだが地元福岡の盛り上がりはいま一つで、球団フロント陣は観客動員数の確保に頭を悩ませている。そこで坂井球団代表が一計を編み出した。「ファンの皆さんと選手との繋がりを密にしたい」と地元テレビ民放3局に15秒のCMを登場させた。開幕戦の予告や年間予約席の告知を東尾、古賀、浜浦、基、土井、ハンセン選手らが画面からお茶の間に届ける。球団としては初めての試みだが、1000万円の予算を計上して地元密着をアピールする狙いだ。

「プロ野球選手が野球のCMをするのだから商品の宣伝をするのとは意味合いが違う」と坂井代表は自画自賛。どうやらチームぐるみで万年筆の商品名をテレビで連呼する巨人軍とは違うぜ、とでも言いたいようだ。さて、CM効果の程はどうか?地元ファンの間には「巨人みたいに自社商品を宣伝してほしいという企業がいないだけでは」「要するに勝てばファンは球場に行く。CMを見て球場に行きたいと思うファンが果たしてどれくらいいるのだろうか」など懐疑的な意見が多数で心もとない。

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