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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 602 新戦力 / 阪急・日ハム・南海

2019年09月25日 | 1985 年 



勇者復活のカギを握る超大型右腕レスリー投手獲得
阪急にはどうしても変わらなければならない課題がある。それは今季壊滅してしまった投手陣である。特にストッパー不在の悲哀を嫌というほど味わった阪急に頼もしい投手が加わる。ブラッド・レスリー投手だ。198cm・101kg の超大型投手で、重い速球とカーブを武器に1982年と今年に3Aでセーブ王になっている。わざわざ自ら渡米してテストに立ち会った上田監督は「体は柔らかいし良いフォームをしている。期待通りに抑え役の役目は充分に果たしてくれるだろう」と投手陣再編のカギとして並々ならぬ期待を寄せている。ズバリ、来季の阪急の浮沈はこの助っ人の右腕の出来に大きくかかっている。

今季はパ・リーグでトップの得点力を誇りながらBクラスに低迷した。チーム防御率4位(4.98)がそのまま順位に反映した形だ。ただし先発陣はその役割を十分に果たした。佐藤投手21勝、山田投手18勝、今井投手12勝と3人で51勝もしながら弱投の汚名に甘んじなければならなかったのは、ひとえに抑えや中継ぎのリリーフ陣の踏ん張りが利かなかった為だ。チーム完投数が「59」とパ・リーグで断トツだったのも完投しなければ勝てない、とリリーフ陣が頼りにならなかった裏返しでもある。「頼りになるストッパーがいればなぁ…」と嘆く上田監督の姿を何度見た事か。苦肉の策として山沖投手を先発と抑えの両刀遣いをしたが、中途半端な起用で前年の成績(11勝8敗15S)を下回ってしまった(7勝14敗6S)。

レスリー投手の加入で山沖を先発に専念させられる事は大きい。次期エースとして山沖を独り立ちさせる事は阪急の将来にも関わってくる。佐藤と山沖を先発ローテーションの軸にすれば山田、今井の両ベテランに充分な登板間隔を与えて登板させる事が出来る。白井投手など台頭してきた若手投手を先発に組み込めばローテーションの谷間を埋められる。ところでドラフト1位指名の石井投手(日大)は目下のところ計算外だが「彼が大学2年生の頃の状態に戻れば充分戦力になる」と藤井編成部長は言う。いずれにしろこれまで不在だった抑えに新外人を迎える事が出来たのが今オフ最大の戦力強化となった。レスリー投手が期待通りの活躍をすればV奪回も見えてくる。



打線はパワーを補強。守りは鉄壁、投手は豊富。コリャ優勝だ !!
大砲不在で打線に今ひとつ迫力を欠いた日ハム。先のドラフト会議では残念ながら清原獲得はならなかったが広瀬哲朗内野手(24歳・本田技研)、田中幸雄内野手(17歳・都城高)、沖泰司内野手(24歳・スリーボンド)ら課題の内野手を指名することに成功した。更に新助っ人はブリュワー選手に続き大リーグ通算64本塁打のパット・パットナム選手(31歳・ロイヤルズ3A)の獲得も内定した。1位指名の広瀬に関しては「当然、適性を判断してからになるけどショート起用を考えているよ。何しろ社会人ナンバーワン野手なんだから開幕からレギュラーで使う気でいる」と高田監督の期待は大きい。

そもそも清原の存在が無ければ1位指名入札は広瀬だった。駒大時代から走・攻・守三拍子揃った好選手で1年生からリーグ戦にフル出場し、ベストナインにも四度選ばれた。また3・4年生の時は白井選手(現日ハム)と鉄壁の二遊間を組んでいた関係もあり日ハムの評価は大学時代から高かった。本田技研に入社後は打撃も向上し通算打率.446・20本塁打と結果を残した。この広瀬の加入で日ハムの野手の布陣にも変化が起きそうだ。故障がちの高代選手が控えに回る可能性も出てくる。しかし高代の渋い打撃と手堅い守備も捨て難く、二塁へのコンバートも。そうなると白井との定位置争いが勃発する。これに沖を加えた4人の二遊間争いはレベルが高い。

唯一無風状態なのが古屋選手がいる三塁と新外人・パットナムの一塁。また外野陣で不動なのが中堅の島田誠選手。シュアな打撃と5年連続ダイヤモンドグラブ賞の賢固な守りはチームに欠かせない。右翼は新外人のブリュワーで決まり。左翼は順当なら二村選手だが秋季キャンプで急成長し高田監督から「来年こそは一軍定着してもらわなければ困る」とまで言われたプロ8年目となる早川選手がどこまで二村に追いつき追い越す事が出来るか注目だ。投手陣ではドラフト2位指名の渡辺弘投手(22歳・九州産業大)の評価が高い。最速143km の速球とカーブ、スライダーの制球力が抜群で即戦力と期待されている。来季の日ハムの戦力図は新戦力の加入で大きく変わりそうだ。



右上手投げ投手陣に左腕と下手投げの加入でバランス取れるか
杉浦監督は「今年のドラフトは90点がつけられる」と言い切った。左腕投手2人、右下手投げ1人、捕手1人に外野手2人という補強に大満足。加えてトレードでロッテから右の変則タイプの田村投手を獲得。これらの新戦力加入で来季は8年連続Bクラスからの脱却はなるだろうか?南海投手陣の顔ぶれを見ると山内和・山内孝・加藤・藤本修・井上・矢野とズラリと右の上手投げが並ぶ。これに藤田学や大久保が入っても同じだ。期待された左腕の竹口や中条は力不足だった。そこで先のドラフト会議で指名した1位の西川投手(法大)、2位の中村投手(拓銀)はいずれも左腕で、更に5位指名の坂田投手(九産大)は右の下手投げ。

「ウチは右のオーソドックスな投手ばかり。これでバランスのとれた投手陣になる」と杉浦監督も満足げだ。来季の投手陣は競争意識が高まるだろう。両山内や加藤・藤本修・井上ら5人は間違いなく一軍だろうが、残る一軍投手枠5~6を巡って激しいバトルは必至だ。田口・中条・青井・竹口と秋季キャンプで著しい成長を見せた大久保・畠山・矢野、そこに新人の西川・中村・田村を加えた10人で争う。今季は先発どころか中継ぎやワンポイントですら使える左腕がいなかっただけに杉浦監督は「サウスポーが2人は欲しい」と。その点で西川は東京六大学リーグで鍛えられたマウンド度胸の持ち主だけに期待は大きい。

8年連続のBクラスを返上するには課題は多いが、とりあえず投手陣に関しては右投げ一辺倒からは脱却できそうだ。ただし野手陣は依然として課題は残したままだ。例えば捕手陣。香川選手をサードへコンバートする案が首脳陣にあるようだが、香川が抜ける捕手の補強はドラフトで高校生(上宮高・西山選手)1人獲得しただけ。もしも正捕手の吉田選手が怪我をしたら忽ち危機を迎える事になる。また野手に一発長打の魅力を持つ選手が少ないのも寂しい。秋季キャンプの紅白戦で本塁打を放ったのは香川と藤本博選手の2人だけ。相変わらずベテランの門田選手頼りとは情けない。長打が無いならスイッチヒッターに転向した湯上谷選手や足のある佐々木選手の活躍に期待するしかないようだ。
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# 601 新戦力 / 西武・ロッテ・近鉄

2019年09月18日 | 1985 年 



ズバリ ! 来季は『投高打低』で日本一の座を奪い返せる
12球団ナンバーワンの投手王国の再建は成った。しかし田尾選手、スティーブ選手、大田選手らクリーンアップは合わせても34本塁打でこれは12球団のクリーンアップの中で最低本数でパワー不足が否めなかった。今季、終わってみればパ・リーグ制覇はしたものの日本一には届かなかった。勝った阪神との差は打線。投手力は東尾、松沼兄弟、郭、渡辺久、工藤ら寧ろ阪神より上。その打線強化の為にドラフト会議で清原選手を指名し、更に新外人の目途も立った。その名はベン・オグリビー選手。M・ブリュワーズの四番打者で今季10本塁打に終わったスティーブに代わりクリーンアップの一員を務めることになりそうだ。

広岡前監督が数年来に渡り嘆き続けていた大砲不在。それでもパ・リーグを制覇できたのは12球団随一と言われている豊富な投手陣のお蔭である。少ない好機を生かして得点をあげ、投手を含めた堅実な守りで勝利に結びつけた。そこへ来季はバリバリの大リーガーが四番の座にデンと構えるとなれば、これまでの投手陣におんぶに抱っこの投高打低を返上できるかも。ただし「外人選手は来日してみないと分かりませんよ。故障持ちだったり日本の環境に馴染めずに持てる力を発揮できずにアメリカに戻った選手は数えきれませんから。最近の西武はハズレ外人も減ってきましたけど、こればっかりはね」と話す大リーグ通もいる。やはり来季も投手頼り?

また一部報道(12月3日付・AP電)ではオグリビーが日本球界入りを渋っているとの情報があるが、坂井球団代表は顔色ひとつ変えずに「ウチは勝算の無い交渉はしない」と新大砲獲得に自信を見せた。加えて先のドラフト会議で高校通算64本塁打・甲子園大会だけでも13本塁打を放った清原を指名し獲得した。退団するスティーブの後釜に一塁のポジションを開幕から得られればヤングレオの新しい目玉になる。また清原加入は先輩の大久保選手を刺激するのは間違いない。後輩に負けてたまるか、と一塁のレギュラーを虎視眈々と狙っている。今オフの補強は来季の布陣もさることながら、5年・10年先の西武に多大な影響を与えるであろう。



横田以上の大物新人・古川の加入で戦国時代に突入の外野戦争
ドラフト4位で亜細亜大学の主砲・古川慎一外野手を獲得した事で来季の外野陣は益々レギュラー争いが激化する。古川は東都大学リーグで15本塁打を放ったスラッガー。古川の加入で8人(高沢・有藤・芦岡・庄司・横田・愛甲・岡部・古川)で3つのポジションを争うハイレベルな戦いとなる。今季の布陣は左翼・有藤、中堅・高沢、右翼・横田だったが来季に関して稲尾監督は白紙を強調する。先ず古川につて「パワーは文句なし。即戦力で愛甲や岡部はうかうか出来ない」と得津スカウトは太鼓判を押す。また11月29日の納会で進退が注目されていたベテラン有藤選手が来季も現役でプレーする事が正式に決まり発表された。

更に今季三冠王に輝いた落合選手が一塁に再コンバートされる事で今季は一塁のレギュラーだった山本功選手が押し出される形で外野手に転向する。こうなると今季メキメキと力を付けてきた愛甲選手や岡部選手、そしてレギュラーだった高沢選手や横田選手もレギュラーどころか一軍に残る事さえ大変になる。稲尾監督は「ウチは実力主義。それは有藤も例外ではない」と言い切る。場合によっては有藤の二軍落ちの可能性も否定できない。それと並行してベテランの庄司選手や芦岡選手は今オフのトレード要員として名前が挙がっている。巷間伝えられている横浜大洋・田代選手とのトレードで庄司に関しては石川投手と共に交換要員として有力視されている。

新旧交代が一気に進む可能性が出てきた。しかし有藤の二軍落ちが現実のものとなったらチーム内外に及ぼす影響は小さくない。就任3年目で初Vに挑む稲尾ロッテに亀裂が生じかねない。かといって有藤を特別扱いすればチーム内に不満や反発が生まれる。稲尾監督の選択がチームの浮沈を握る事になる。新人・古川の参入とベテラン・有藤の残留、更に山本の外野コンバート。昭和37年生まれの愛甲、横田、岡部の左打ち同級生トリオに高沢。どの選手を選ぶにも甲乙つけがたい。「実力第一主義でいくがウチの外野陣は駒が豊富で、レギュラーを決める前に誰を一軍に残すかで頭を悩ますよ」と稲尾監督も嬉しい悲鳴。ただ、ひとつ間違えればチームが崩壊しかねないだけに大変な決断を求められる。



大量7人の投手補強でシノギを削る一軍争いは必至 !
有田選手の巨人とのトレード発表後に岡本監督は「もう今の時点で来季の青写真を描いとる。トレードもこれで終わり」と補強終了を宣言した。ドラフト会議で1位指名した桧山投手(東筑)を筆頭に5位指名まで全て右の本格派投手。更に巨人から山岡投手、ヤクルトから南投手と大量7人もの右投手を補強した。「来年は投手にとって大変な年になるだろう(岡本監督)」と言われるくらい一軍の狭き門を巡って激しい争いが繰り広げられそうだ。一軍の投手枠は11人前後。そこに20人を超える投手が凌ぎを削る事となる。しかも岡本監督は「全て白紙で現時点では横一線」と明言する通り、若手もベテランも皆にチャンスが平等に与えられている。

各スポーツ紙の近鉄担当記者が岡本監督ら首脳陣への取材により得た情報による現時点でのABCランク評価は
【A】鈴木康・石本・佐々木・小野・小山・村田の6名、【B】谷宏・久保・住友・依田・柳田・吉井・高橋・藤原・山岡の9名、【C】谷崎・山村・山口・加藤哲・山崎・南・桧山の8名 となっている。しかし、これはあくまでも目安であり村田、小野、小山、佐々木の先発4本柱も首脳陣から絶対的な信頼を得ているとは言えず、ほんの少しの躓きでB・Cランクに転落してしまう。「ワシも長いこと野球をやっとるが…」と苦笑いで前置きしながら岡本監督はこう続けた。「軸になる投手が一人もおらんというのが初めてなら、これだけ多くの一軍候補者がいるというのも初めて」と。

しかし今では不安よりも自信の方が日増しに膨らんでいる。その理由は日向での秋季キャンプだ。「ヒューズ臨時コーチの存在が大きかった。マスコミの皆さんはチェンジアップやムービングファストボールに注目しとるが、我々にとって一番大きかったのは意識改革。若手投手に投げる楽しさと闘争心を呼び起こしてくれたよ(岡本監督)」と若手投手陣の底上げに確かな手応えを感じている。正直言って来季も今季同様に細かな継投を余儀なくされるだろうが、無い袖は振れない。これだけの顔ぶれしかいないのだ。否が応でも彼らの中から投げる人間を選ばなければならない。しかし昔から " 家貧しうして孝子出づ " と言うではないか。今年の石本投手のような救世主が彗星の如く現れるかもしれない。
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# 600 新戦力 / 大洋・中日・ヤクルト

2019年09月11日 | 1985 年 



木田の加入、斉藤の転向で先発グループはかなり充実。抑えは石川だ !
こと投手陣だけを比べたら最下位ヤクルトに鼻で笑われるような実情だ。今季二桁勝利したのは遠藤投手ひとり。いくら遠藤が日本一の投手だと近藤監督が言おうが遠藤ひとりではチームを優勝させるなど無理な話。そこで球団が打った手が今ドラフトで1位指名の中山投手(高知商)をはじめ6人全ての選手が投手という荒療治。また今季絶不調に終わった金沢投手とプロ入りして3年が経過しても芽が出ない大畑投手に見切りをつけ、日ハムと交換トレードを行ない木田投手と高橋正投手を獲得した。「チームを強くするにはある程度の思い切りは必要。血の入れ替えで根本から手直しをしないと。目先に拘る余裕は今のウチにはない」と近藤監督は言い切った。

先ずは木田。左の先発としての期待が大きい。確かにここ数年はかつての輝きには程遠くすっかり低迷しているが、日ハムの大沢元監督(現育成強化部長)によれば「環境が変わればアイツはまだまだやれる。簡単にくたばるような投手じゃねぇよ」と太鼓判を押す。投手を見る目に長けている近藤監督もその点では同じ意見だ。だからこそ今季は低迷したとはいえ一昨年まで2年連続二桁勝利をした金沢投手を放出してまで木田を獲得したのだ。また近藤監督は密かにロッテの石川賢投手の獲得を画策している。石川は昨季15勝したが今季は2勝と低迷。原因は右肩の故障で完治しておらず来季も登板は難しいと言われているが近藤監督は田代選手を見返りに石川を獲る覚悟でいる。

先発転向を希望している斉藤明投手も加えると来季の先発ローテーションは格段に厚くなる。更に高卒ルーキーの中山に関して近藤監督は「早ければ6月に出て来る」と考えている。中山と久保投手を中継ぎに、石川を抑えに使えればかなり勝ち星が計算できる。それもこれも石川を獲得できればの話なのだが。守備面では3位で指名した大川投手(銚子高)を外野手として1年目から使う腹づもりだ。「大川は100m を11秒で走る足を持っている。彼をライトで使えば右中間は抜けませんよ(近藤監督)」と。ここまでの話が近藤監督の思惑通り全て上手くいったら今年の阪神のような奇跡が起きても不思議ではない。笑うことなかれ。思えば昨年の今頃、誰が阪神の優勝を想像していたか…。



来シーズン「サード・中尾」が登場すれば中日は手強いゾ !
来季の中日にアッと驚く三塁手が誕生するかもしれない。ただしそれには条件がある。今ドラフトで3位指名した内田強捕手(日立製作所)、もしくは阪急から移籍して来た有賀佳弘外野手が捕手としての起用に目途が立てばの話である。「来春のキャンプが待ち遠しいよ」これが現在の中日首脳陣の話題の中心である。退団したモッカ選手の後釜に誰が三塁の定位置を手にするのか。それは藤王選手か、伏兵の古谷選手か。いずれにしても現状は決まっていない。ポスト・モッカは中日の最重要課題なのだ。山内監督は以前から中尾捕手を三塁で起用したい考えを持っていたが、中尾をコンバートすると頼りになる捕手が大石選手ひとりになってしまい二の足を踏んでいた。

そこで球団は手を打った。ひとつはドラフトで社会人屈指の捕手と定評の内田選手を3位で指名し、もうひとつが元捕手だった有賀選手を阪急から獲得した。有賀については肘を故障し外野手に転向したのだが「調査した結果、回復したと判断したので獲った。阪急では1年目から捕手として出場し注目していた。怪我さえ治れば充分戦力になる」と田村スカウト部長。元々投手陣は小松投手を筆頭に粒ぞろいで他球団に引けを取らない。課題は野手。一塁手は谷沢選手、左翼手は川又選手、右翼手はゲーリー選手と3選手は定位置を確保しているが他は未確定。特に三塁手は決め手を欠いていた。内田なり有賀が大石の控え捕手として計算できれば中尾を三塁手として起用でき、数年来の課題は一気に解消する。

「これはチームの問題だから僕の口からは何も言えない。ただ何処を守りたいか、と聞かれればサードですよ」と球団の㊙作戦に渦中の中尾は控え目に答えた。「中尾が捕手じゃなかったら3割・30本塁打・30盗塁だって夢じゃない。彼はセンスの塊みたいな男だよ」と山内監督。来季へ巻き返しを図る山内監督としては投手力に関しては不安はなく、もっぱら打線の強化が不安材料。特に飛躍を期待した藤王が守りの不安が得意の打撃にまで影響を及ぼし今季は結果を残せなかった。西武へ移籍した田尾選手の後釜に右翼を守らせたが元々内野手でとてもプロのレベルとは言えなかった。中尾の三塁コンバートが実現しなければ藤王を再び内野手に戻すしか手はない。



マジで優勝の予感がしてきたぞ ! コラッ ! 笑っちゃイカン !!
今年のドラフト会議は大成功だった。1位指名が社会人ナンバーワン投手の伊東昭光投手(本田技研)。弱体投手陣立て直しにこれ以上ない即戦力投手。更に2位には全日本の四番・荒井幸雄選手(日本石油)の指名に成功した。これらに新外人の加入も決まり、土橋監督は最下位脱出どころか優勝も視野に入れた??伊東に関して多くの評論家が来季の新人王候補で最低でも5勝、二桁勝利も可能と評価している。「開幕一軍?いやいや開幕からローテーションに入ってもらわなければ困る」と片岡チーフスカウト。来季の先発ローテーションは尾花・梶間・高野・荒木は既に決定し、これに伊東が加わると盤石になる。

「伊東は高校時代から荒木と投げ合ってた実力派。荒木と同等以上にやってくれる筈」と土橋監督もベタ褒めだ。先発陣は伊東の加入で大きく若返る。更に4位指名の矢野和哉投手もワンポイント起用で一軍に近く、弱体投手陣返上に確かな手応えを感じている。野手に関しても同様だ。2位指名の荒井は昨年の全日本の四番を務めた超大物。身長170cm と小柄だがパンチ力は抜群で早くも " 若松二世 " の呼び声が高い。本家の若松選手に衰えが見え始めており荒井にかかる期待は増すばかり。また打線には新外人のブロハード選手が加わる。一番打者の若松から角・ブロハード・杉浦・広沢・八重樫・新外人(未定)・水谷と続く来季のツバメ打線。

「とにかくウチには走れる選手が少ないからパンチ力のあるブロハードを三番に入れて得点をアップするしかないんだ。あとはチャンスに右の代打陣(渡辺・小川・杉村ら)と左の代打陣(岩下・秦・玄岡ら)や池山・荒井の奮起を期待している」と土橋監督。今季は投手陣が踏ん張れず大量失点で大敗を喫した。「バースやクロマティのような選手が一人でもいればガラッとチームの雰囲気は変わる(土橋監督)」と過去の助っ人外人の失敗も大きい。マニエル選手やヒルトン選手以降はハズレが多かった。ハーロー、ダントン、スミス、ビーンなど枚挙にいとまがない。来季は伊東や荒井の加入で期待は大。最下位脱出どころかAクラス、いやいや優勝争いだって。誰ですか、そこで大笑いしているのは!
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# 599 新戦力 / 阪神・広島・巨人

2019年09月04日 | 1985 年 



清原が獲れず全てがパー。しかし柏原獲得に目途がつき右の代打問題が解決
昭和53年のドラフト会議では江川投手、翌54年は岡田選手の交渉権を獲得するなど強運を誇った阪神だが、今年は運に見放された。「清原君を獲れていたら… " たら " の話は禁物だがバース・掛布・岡田に清原が加わったら甲子園も沸いただろうね」と残念がるのは並木打撃コーチ。清原を外し、代わりの1位指名は熊本・八代高の遠山投手。「即戦力ではないが彼は3年くらいでウチのエースになれる逸材。中央では無名だけど文句なしに高校ナンバーワン左腕」と九州地区担当の渡辺スカウトは力説する。大型左腕獲得にしてやったりではあるが、来季セ・リーグの勢力分布図を塗り変える程の戦力加入ではない。

現状の戦力のままでも来季の首位争いは可能であろう。だが相変わらず投手陣は盤石とは言えず、打線にオンブに抱っこ状態は解消されていない。打線は阪神が誇るクリーンアップを中心に健在だが唯一の懸念材料が右の代打である。川藤選手は衰えが顕著で事実上戦力として計算に入っておらず、渡真利選手や和田選手ではまだまだ力不足。清原を獲得しベテランの佐野選手に代わり左翼手で使いながら育て、佐野を代打の切り札にするのが理想だったがクジを外して叶わなかった。「長崎選手みたいな選手が何処かにいないか?」と昨年トレードで獲得し活躍した長崎に味をしめて二匹目のドジョウを探しているのがトレードの仕掛け人でもある西山編成部長だ。

西山部長はシーズン中から極秘裏に動いていた。第1案が山村選手(南海)の獲得。南海は現在、香川選手を捕手から三塁手に転向させて野手としてドカベンの打棒を生かすコンバートを計画中で、トレードの見返りに捕手を要求してきた。白羽の矢が立ったのは山川捕手。しかし「山川を放出したら捕手が足らなくなる。ドラフトで吉田選手(5位指名・三菱重工)を獲得したがまだ海のものとも山のものとも分からず実力は未知数。山川は出せない」と土井ヘッドコーチの反対で御破算に。そこで第2案は柏原選手(日ハム)の獲得。当初は日ハム側は交換トレードを要求してきたが阪神は難色を示し破談しかけたが結局、日ハム側が折れて金銭トレードが成立した。ドラフトの完敗からちょっと盛り返した感じの阪神だ。



即戦力は長冨ひとり。若手間の競争が益々熾烈になってくるゾ !!
今オフの広島は「外人は獲りません、トレードもしません」とくれば残る戦力強化はドラフトのみ。ドラフト会議で5人の選手を指名した。阿南新監督は「3位まで無抽選で獲れた。100%のドラフトだった」と胸を張る。1位・長冨浩志投手、2位・高信二内野手、3位・河田雄裕外野手、4位・谷下和人投手、5位・足立亘投手。なかでも長冨投手は苑田スカウトが持参したスピードガンで球速を測定すると時速153km とアマ球界で最高の数字を叩きだした。一部にはヤクルトに入団した伊東投手(ホンダ技研)と比べると制球面で粗さが目立つとの声があるが、そうした外野の声を蹴散らしてしまう程の球威と伸びシロが魅力の剛腕投手である。

長冨を1位に指名すると広島の若手投手陣から「なんで投手を1位指名に?ウチは投手が豊富なのに俺たちは信頼されてないのか」と嘆きの声が上がった。確かに広島投手陣は粒が揃っていて他球団からは垂涎の眼差しで見られている。ただ今季は山根投手が怪我で戦線離脱し、津田投手も年間を通して安定していなかった。彼ら右の本格派2人が本調子でないと来季に不安が残る。古葉監督が勇退し阿南新監督の下で心機一転、V奪回を目指すには投手は幾らいても構わない。「制球や配球は練習すれば上達する。でも球速は鍛えても増さない天性のもの(苑田スカウト)」。それを受けて首脳陣も「球威があるので(長冨を)抑えで使ってみたい」と大変な惚れ込みようだ。

2位以下はいずれも高校生で将来を睨んでの指名だが、目につくのが皆が左打ちという点。谷下は左腕投手なので当たり前としても他の3人は右投げ左打ち。2位指名の高は九州では広く名前を知られた遊撃手で宮川スカウトによると「篠塚(巨人)に似たタイプで左右に打ち分ける。頭の方もクレバーでショートを守っているが二塁を守らせたら今のウチなら直ぐに使える」らしい。3位指名の河田は今年のセンバツ大会で準優勝した帝京の一番打者で通算31本塁打とパワーも兼ね備えている。またベース一周が13秒8と俊足の持ち主で「ウチの一軍選手と比べても彼の方が速い」と木庭スカウト部長もゾッコン。広島には伸び盛りの若手選手が多いが高と河田に関しては意外と早く出て来るとの評価だ。



弱体投手陣活性化に欠かせない桑田・広田の存在。有田・福王の加入で控えも充実
強引とも言える桑田投手のドラフト指名、5年越しで実った近鉄・有田選手の獲得。3年目のカド番を迎える王巨人は着々とチーム再建を行なっている。世間の非難を承知の上で決行した桑田の強行指名をはじめドラフト上位4人を投手が占めた。中でも1位・2位の桑田、広田投手は共に即戦力として評価している。今季は槙原投手と角投手が怪我で戦線離脱し来季の活躍に「?」マークが灯っている。加えて抑え役として期待した金城投手が1セーブも挙げられずに退団、更に近鉄とのトレード話の不手際で今季47試合に登板した定岡投手まで退団してしまった。星勘定どころか投手の頭数にさえ事欠く有様に新任の皆川投手コーチも頭を悩ましている。現状は新人の桑田や広田に頼らざるを得ないのだ。

「全て白紙。自主トレ・キャンプ・オープン戦を見た上で判断する」と皆川コーチは横一線を強調する。今季のチーム防御率はリーグ1位の3.96 だが、ここ一番の勝負所で弱さを露呈した投手陣。江川・西本・斉藤・カムストックの先発陣。加藤・鹿取・宮本の抑え役、岡本・中島らの中継ぎ陣に新人の桑田や広田が食い込めれば他球団にも引けを取らないバラエティに富む投手陣を組むことが出来る。その意味でも新人2人が今季の王巨人の浮沈の鍵を握る。正力オーナーが「狂喜・歓喜・乱舞」と最大級の形容詞で成功を自画自賛した今ドラフトで世間を敵に回しながらも強行指名した甲斐もあるということだ。

一方の野手陣は長年の課題だった捕手の補強に近鉄から有田選手を獲得した。定岡投手の退団という想定外の事態も起きたが有田の加入は表面的な効果以上のものがある。今季は山倉選手が101試合にマスクを被った。カムストック投手が登板する時は山本幸選手が起用されたがまだまだ一人前とは言えず山倉の負担は依然として大きかった。山倉に肉体的・精神的休養を与える意味でも有田の加入は大きい。また福王選手(明治大)の加入は石渡選手の引退で手薄となった内野陣の穴埋めには最適。また東京六大学時代に首位打者になった打撃は駒田選手ひとりになる左打ちの代打陣の強い味方になる。内野陣には川相や岡崎、外野陣には石井や仁村など有望な若手もおり来季の巨人は楽しみだ。
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