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買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 688 週間リポート 阪神タイガース編

2021年05月19日 | 1977 年 



夜の特訓から英会話まで
安芸キャンプで田淵選手が9年ぶりの変身ぶりを見せている。先ずは練習内容の変化。初日から特訓につぐ特訓で山内コーチの指示通りの調整法で昨年までのマイペースとは大違いだ。初打ちのフリーバッティングは柵越えが1本のみと少々寂しい内容。ほとんどが詰まったボテボテの当たりで豪快な柵越えを見に来たファンは肩透かしを喰らった。しかし2~3日もすると打つわ打つわで、第2クールの13日の特打ちでは52本のアーチを放ち、さすが田淵と周囲を唸らせた。例年と異なるペースに田淵は「今年は課題を持って取り組んでいる。だから最初から飛ばさなくても焦ったりしない。中盤から徐々にペースアップすればいいかな」とドンと構えている。

山内コーチから指摘されている左脇をしっかり絞めて打つ、という打法も感触は良さそうだ。初日は不満げだったファンも号砲連発に拍手喝采で、外野スタンド後方に駐車中のマイカーを慌てて移動させる人が続出した。また練習後の宿舎・東陽館でも変化が。夕食後は昨年までは麻雀仲間と就寝時間まで雀卓を囲んでいたが、今年は山内コーチ主催の「山内塾」で素振りを欠かさない。素振りが終わると今度は英会話。田淵の自室に古沢投手、島野選手らが集まり「ハウ・ドゥ・ユウ・ドゥ」。これはブリーデンやラインバックら外人選手とコミュニケーションを図ろうと始めたものだが肝心の教えてくれる先生がおらず田淵が指導しているのが玉にキズ。

田淵が先生役とは少々心細いが『百万人の英会話』と『観光のための英会話』の2冊を大阪から持参し、「ワイワイがやがや皆で楽しくやってます(田淵)」らしいが " 田淵先生 " 自身が自己流の修行中で「田淵さんは大学を出てるんですから英語はペラペラの筈(笑)」と古沢らに冷やかされる。実は田淵夫人の博子さんは英語が達者で、どうやら田淵は博子さんに勧められての手習いらしい。それでも結構サマになっているそうでシーズンに入って外人相手に田淵流英会話がチーム内で流行るかも。「僕の部屋は日本語禁止です。たとえ監督やコーチでも一歩入れば英語で会話してもらいます(田淵)」と。成果の程は乞う御期待である。



200発打線というけれど
" 打高投低 " これこそ阪神の悩み。昨季から続く傾向で投手陣の不調が巨人に苦杯を喫した要因だ。打撃陣はオープン戦当初から好調で特に田淵選手、掛布選手ら中軸は急ピッチでペースアップして連日好打を飛ばしている。田淵は6日の阪急戦で2本塁打、特に2本目は速球王・山口投手から放った一発だけに価値がある。「ボールカウント0-3だったから好球必打で狙っていた。山口君の速球は確かに速いけどコースが甘ければ打てるよ(田淵)」と自信満々。10日の日ハム戦で3本目を放ち好調を維持している。田淵に負けず劣らずなのが掛布。阪急戦で連発した田淵に対抗するように掛布も2本塁打と昨季以上に逞しいバッティングを見せている。

阪神が誇るTK砲が順調で打線に関しては悩みは少ない。ただ対戦した阪急に比べると安打の割に得点の効率が悪く野球の質は落ちる。だが今後、ブリーデン選手、ラインバック選手の両外人が本調子になれば " 200発打線 " も夢ではない。一方で阪急打線の餌食となった投手陣の頼りなさは相変わらず。古沢、江本、上田ら主力投手は調整中で登板していないが、期待する若手投手の台頭が見られない。長谷川、池内、工藤、深沢投手ら中堅・若手の中で好投したのは阪急戦に登板した長谷川くらい。3年目の工藤はブルペンでは良い球を投げるが、いざマウンドに上がると委縮してしまい実力を発揮できない。

頭を悩ます皆川投手コーチが注目するのが新人の益山投手。2日のシート打撃で初登板して打者19人を3安打に抑えた。首脳陣は「これはいける」と色めき立ったが、5日の阪急戦では5連続四死球であっさりKO。いやKOというより完全な自滅だった。オープン戦も中盤になると徐々に若手投手も調子を上げてきたが、先発ローテーション入りを確実にするまでには至っていない。そもそもローテンション入り以前に一軍に残れるかどうかの段階で足踏み状態である。いずれにしても中堅・若手の中から一軍で通用する投手が複数出てこないと悲願の優勝への道は険しい。



ボクは何番でもいいっスよ
オープン戦も半ばを過ぎてボツボツ仕上げの段階なのに大爆発したかと思えばパタッと沈黙する阪神打線は山内ヘッドコーチの頭痛の種。そんな中でコンスタントに打ち続けているのが掛布選手。44打数14安打・打率.318(17日現在)をマークしている。「昨年の反動なんか考えられんネ。彼は心配いらんよ。三番だって充分こなせる」が山内コーチの掛布評。オープン戦では三番に座っているがシーズンが開幕したら三番か、六番か、はたまた二番か、掛布が何番を打つのかが注目の的だ。掛布本人は「僕は何番でもいいス。昨年以上の成績を残すことだけ考えている」と特定の打順に執着はないようだ。

三番を打つ予定のラインバック選手は来日が遅れたのに加えて風邪をひいて調整が遅れてオープン戦にも出場できない状態。二番候補の藤田選手は好調をキープしているので掛布の打順は現状では三番が有力になっていると思えるが「ラインバックが戻って来れば掛布は六番を考えている。ウチの四番・五番は足が遅いので出塁しても単打でホームに還すのは難しい。掛布が六番を打てば長打も期待できるので得点力が上がる。三番も打てる力はあるが打線のバランスを考えると掛布の六番が理想的」と吉田監督は語る。

だが好事魔多しの格言通り掛布に思わぬアクシデントが生じた。13日の南海戦で黒田選手が放った打球を左肩に当てて負傷退場し、翌日の試合は欠場。幸い軽い打撲で次に出場した試合に代打で登場し見事に右前安打し周囲を安心させた。昨年退団した " ヒゲ辻 " こと元ヘッドコーチの辻佳紀氏につかまり「おい掛布よ、今年は8割くらい打つんと違うか」と冷やかされてて「冗談はやめて下さい。いくらなんでも8割なんて。辻さんが出演している『欽ドン野球』じゃあるまいし(掛布)」と大照れ。

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