Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 802 週間リポート 近鉄バファローズ

2023年07月26日 | 1977 年 



とてもルーキーとは思えんな
ドラフト1位ルーキーの久保康生投手が10日の対クラウン戦で鮮やかなデビューを飾った。高校時代に何度も試合を行なった平和台球場。この思い出の多い地で久保投手は見事な投球を披露した。先発した仲根投手がKOされ降板した5回裏からマウンドへ。代わりっぱな竹之内選手を内角のシュートで三振。続くロザリオ選手もボールカウント2-1からスライダーでこれまた三振。しかも「(捕手の)梨田さんはカーブのサインを出したんですけど、打たれそうな気がしたので咄嗟にスライダーを投げました。梨田さんには悪かったかな」と並みのルーキーとは思えない発言に取り囲んだ報道陣もビックリ。

6回裏にちょっとした見せ場があった。同じ柳川商からプロ入りした立花選手が基選手の代打として登場し同級生対決が実現した。「絶対に打たせたらいかんと思った(久保)」そうで初球は思いっきり投げたストレートがすっぽ抜けた。2球目は打ち気にはやる立花選手の心理状態を見抜いてスローカーブ。1球ファールの後、4球目のカーブを引っかけて一塁ゴロに倒れた。僅か4球だけの対決だったがしたたかなマウンド度胸は見上げたものだった。ネット裏の記者席では「プロで5~6年投げてる感じだ」と称賛の声が上がった。結局、久保投手は2イニングをパーフェクトに抑える見事な投球で初陣を飾った。


のってる島本今度は満塁ホーマー
今年のプロ野球界は例年にないホームランラッシュとなっている。しかし幾らホームランラッシュとはいえ1試合に満塁ホームランが2本も出るとは。プロ野球史上六度目の快記録。それも貧打線と酷評される近鉄がマークしたのだから驚きだ。4月8日の対南海2回戦2回二死二・三塁で打者ジョーンズ選手の場面で野村監督は「山内投手はジョーンズに弱い。島本の方がリスクが少ない」とジョーンズ選手を敬遠し、島本選手との勝負を選んだ。「舐められてと思いカッとして頭に血が昇った」と島本選手はストレートに的を絞り4球目を強振すると打球は右翼ポール際に飛び込んだ。プロ入り初の満塁弾だった。

島本選手はキャンプ、オープン戦の頃は不振を極めていた。ライバルの栗橋選手が打ちに打ちまくった為に存在感が薄れていた。どうすれば打てるのか…迷いから覚めたのは簑島高時代の恩師・尾藤監督に会った時だ。「野球は気迫と根性だ。去年あれだけ打てて今年打てないのはおかしい。知識で頭でっかちになっていないか?先ずは体を動かせ」と激励を受け、気持ちが吹っ切れた島本選手は蘇った。11日のクラウン戦では自身二度目の1試合2本塁打も達成した。「尾藤監督に励まされて迷いがなくなった。打席で気迫を出せば打てないことはない」と島本選手は胸を張る。


ほんま後期が思いやられるワ
「こんなにモタモタしてたら後期も勝てん」と6月25日の南海戦に敗れた西本監督は吐き捨てた。頼みのエース・鈴木啓投手が打ち込まれ、打線も藤田投手の前に散発6安打の完封負けを喫したからである。前期優勝へ他力本願とはいえ勝ち続ければ…と微かな望みを持っていた西本監督だが、この日の敗戦で全てが終わった。「どうしたんかな。鈴木は体のキレが全然なかった」と西本監督は肩を落とした。それもそのはず、今季対南海戦は3勝0敗と相性の良かった鈴木啓投手が3回に突如崩れた。「自分でもよう分からん。充分な投げ込みもしたし満を持してマウンドに上がったんだけどね」と鈴木啓投手はうつむいた。

勝負は下駄を履くまで分からないと常々口にし、優勝に淡い期待を抱いていた西本監督も打線の不振にさすがに落胆ぶりを隠せなかった。前期シーズンの中盤、首位に躍り出た時は若手野手は面白いように打ちまくった。それが大詰めになるとパタッと打てなくなった。この日の6安打完封負けは打線の貧打ぶりを象徴しているかのよう。「こんなことでは後期シーズンが思いやられる」と頭を抱える西本監督。さて後期はどんなスタートを切るのだろうか。
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# 801 週間リポート ロッテオリオンズ

2023年07月19日 | 1977 年 



成田よ後期は本当に大丈夫か?
カネやんはじめロッテ首脳陣は成田投手の後期復帰の目途が立ちホッと一息ついている。6月20日に後楽園球場で行われたイースタンリーグトーナメント大会に成田投手は登板した。巨人の二軍相手に内容こそ目立ったものではなかったが、とりあえず無事に投げ切ることが出来て一軍復帰の見通しはグーンと明るいものとなったのだ。思い起こせば春の鹿児島キャプで右肩痛を発症してから成田投手にエースの面影は見られなかった。5月中旬に一度は一軍に合流したものの、3日ともたず再び二軍に逆戻り。本人が焦りや失望を感じるのは勿論だが首脳陣も「成田がいてくれたらなぁ」と何度となくため息を漏らした。

現状の投手陣は安木投手や田中投手の台頭で一応のやり繰りはついているが、実績のない投手だけに心許ない。後期シーズンに巻き返しを図るロッテには成田投手の復活が欠かせないのだ。成田投手は20日の降板後にこう切り出した。「巨人打線はよく振れていたねぇ」相手が二軍の面々だけにやけに自重めいて聞こえるが表情には暗さはなかった。湿気の多い梅雨どきで決して肩痛に悪影響がないとは言い切れない。「全力で投げた翌日に肩の状態に異常がなければ良しとします(成田)」と結果の内容は重要ではないそうだ。後期シーズン優勝には成田投手の活躍が必要となる。既に一軍登録され、間もなく試運転の運びとなる。


あの歌よ再び「オン・リー・ユー」
6月26日がリー選手にとって記念すべき日となった。18試合、実に69打席ぶりに21号満塁本塁打が飛び出した。「やっぱりダイヤモンド一周は気持ちいいネ。ことにグランドスラムは格別だ」と27日間ノーアーチだったリー選手は喜びを爆発させた。8年間の大リーグ生活でも満塁本塁打は1974年のインデアンス時代の1本だけで、自身2本目となる一発に細い目を一層細めた。両リーグ一番乗りとなった20号目は5月29日の対クラウン11回戦。この時の試合消化数は45試合目。およそ2試合に1本のハイペースに周囲は大騒ぎだった。

ところが来日して初めて体験する梅雨になるとリー選手のバットから快音が聞かれなくなった。風邪を二度もひくなどすっかり体調を崩した。「決して調子は悪くない。コンディション?エブリタイムOKネ」とリー選手は言い続けたが、それは大リーガーとしての模範解答でしかなかった。5月には13本塁打だったが6月は1本のみ。「自分のペースを忘れて調子に乗っていた。何がチームの為になるのか、この一発をきっかけにもう一度考え直したい」と謙虚なリー選手。本塁打を量産していた頃の口癖だったフォアザチームを真剣に考えている。


ダメ男のラク印返上するぜ
開幕間もない頃、監督であり兄貴でもあるカネやんから「トメ(金田留投手)はもう投手としては終わりやな」と三行半を突きつけられていたが、7月20日現在18試合に登板し徐々にではあるがベテラン投手らしく計算できる先発ローテーション投手として蘇りつつある金田留投手。何よりも気迫が感じられる投球を見せるようになった。「これでダメなら野球から足を洗わざるを得ない(金田留)」と断崖絶壁に立たされた男のひたむきな姿勢がマウンド上にある。

防御率は2.50 と及第点だが最後の踏ん張りに欠けて勝ち星に恵まれず現在4連敗中。ただし昨年泣かされた右背筋痛は完治しており「もう大丈夫。根気さえ無くさなければ勝ち星は時間の問題さ」と金田留投手に悲壮感はない。三井投手は依然として二軍で、成田投手は一軍に戻って来たとはいえ完全復調には程遠く投手陣は火の車状態。お家の事情を自らの右腕でとファイトを燃やし続ける毎日だ。「これまで勝てなかった分をオールスター戦明けから白星が転がり込んで来るよ」と胸をドーンと叩く金田留投手だ。
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# 800 週刊リポート 南海ホークス

2023年07月12日 | 1977 年 



1ヶ月ぶりに投げたものの
6回 1/3 を投げて5安打・4失点。忘れかけていた江夏投手が遂に今季初登板を果たした。4月18日の対近鉄3回戦で江夏投手は3月16日のオープン戦の登板以来、実に1ヶ月ぶりにマウンドに戻って来た。登板の2日前に野村監督に先発を申し渡された時に江夏投手は「プロ入り初登板の時のように感激した」という。しかし結果は冒頭のように芳しいものではなかったが本人は「自分としてはよくあそこ(7回途中)まで投げられたと思った。ブランクを考えれば先ずは良かった」とKOされたショックは見せなかった。

江夏投手の黄金の左腕が神経炎と診断されたのはキャンプイン直前の事だった。必死に治療に専念し開幕に間に合わせたが待てど暮らせど野村監督からのGOサインは出なかった。チームは開幕から好調で先発ローテーションも確立され、故障あがりの江夏投手に声がかかることはなかったのだ。だが徐々に先発陣に離脱者が出る。佐々木投手が足を痛め、大黒柱の山内投手も調子を崩してローテーションを維持するのがきつくなってきた。だがそれでも江夏投手に声はかからなかった。

業を煮やした江夏投手は「昨年はもっと悪い状態でも投げていた。それと比べたら今は全然大丈夫」と首脳陣にアピールしたが野村監督は「江夏にテスト登板させる余裕はない。いずれチーム状態も下降し江夏の力を必要とする時期は必ず来る。その時の為に今は焦らずじっくりやっていればいいんや」とサラリと江夏投手の意気込みをかわしていたが、とうとう江夏投手の出番がやって来たのだ。だが結果は今一つだった。先発して6回・4失点では首位争いをしている南海では次の登板は難しそうだ。


2人合わせて83歳
前期優勝はならなかったが阪急と熾烈な首位争いをした南海を牽引したのは若タカ連中ではなく野村監督と広瀬選手の " ベテラン40代コンビ " だった。野村監督が6月29日で42歳、広瀬選手は8月に41歳になる。2人合わせて83歳の超高齢プレーヤーだ。そんな2人に共通しているのは南海の黄金時代を知っているということだろう。「あの頃は優勝して当たり前やった。また強かった。南海はやっぱり強くないとアカンのや」と広瀬選手は断言する。パ・リーグを代表する強豪チームであることが当時の南海の宿命だった。

そのことが2人に何が何でも優勝という気持ちを強くさせている。前期シーズンの終盤に2人のハッスルぶりに他球団のスコアラーも「さすがにこのベテラン2人がやる気を出すと南海は怖いよ」と驚いた。残念ながら優勝は逃し、後期シーズンに再アタックをかけることになった。「ホンマに残念やったな。でも阪急がもたついたからウチに優勝の目が出ただけ。自力で相手を倒さないとアカンのや。きっぱり諦めなしゃあない」と野村監督の視線は既に後期シーズンに向けられている。


今は耐える時、忍の一字や
悪い時には悪いことが重なるもの。これを地で行っているのが今の南海だろう。先兵役の藤原選手が怪我からようやく復帰したと思ったら今度は主力組に怪我人が続出した。先ずはホプキンス選手。もともと腰を痛めていたが無理が祟って今度は膝を痛めてしまった。「休みたくない。プレーできる限りはやる」とホプキンス選手はヤンキー魂で強行出場を続けている。更に門田選手がロッテ戦で八木沢投手から死球を受け右手を負傷。そして成長著しい定岡選手が肉離れで離脱した。

投手陣ではエース・山内投手が2ヶ月ぶりに復帰したものの、中山投手の方はサッパリ。「(中山の状態は)どうなっているのか我々にも分からん」と首脳陣を嘆かせるほどスローペースの調整ぶりだ。こんなチーム状態では勝てるはずはない。「悪い時とはこんなもんかもしれんなぁ。それにしても怪我人が多すぎるわ」と野村監督は愚痴を吐露する。しかも穴を埋める救世主も不在でお手上げ状態。皮肉にもポジション的に怪我が多く年齢からくる衰えが顕著なはずの野村監督ひとりが気を吐いているのが物悲しい。
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# 799 週間リポート 阪急ブレーブス

2023年07月05日 | 1977 年 



殺しのテクニック教えます
阪神から移籍した笹本捕手がなんと5盗塁刺殺のパ・リーグ新記録を成した。思わずベンチから「よっ、殺し屋!」と感嘆の声が飛んだ。対ロッテ3回戦(西宮)で3回表から中沢選手に代わってマスクを被った笹本選手は弘田選手の二盗阻止を皮切りに4回表には末永選手、8回表には有藤選手と千田選手、9回表には代走の井上選手をいずれも二盗を許さなかった。試合は引き分けに終わりナインには疲労だけが残ったが笹本選手の強肩がなければ負けになりかねない展開だった。

捕球から送球までの素早い動き。手首を利かしたスローイングはコントロール抜群。まさに捕手にうってつけの笹本選手だが、前所属の阪神では外野手にコンバートされて捕手としては1年余りの空白期間があった。それだけに阪急に移籍後は外野手としてのスローイングから捕手の投げ方に戻すまで時間を要したそうだ。「まぐれですよ。たまたまです」と本人は謙遜するがまんざらでもなさそう。上田監督も「歯切れの良いリードをする。もちろん肩もいい。これからもドンドン使いたいね」と笹本選手に対する期待は大きい。


左と右。鋭く光る四つの目
加藤秀選手と島谷選手が熾烈な首位打者争いを展開中だ。6月30日現在、加藤秀選手は打率 .342 、島谷選手は打率 .333 と僅か9厘差で加藤秀選手がトップだが一時は島谷選手がトップをキープしていた。この2人は高知キャンプでは同室でトレードで中日から移籍して来た新参者の島谷選手を加藤秀選手が何かと世話をしてきた。「加藤さん、どうぞよろしく」と年齢が3つ上の島谷選手の低姿勢に加藤秀選手は「こちらこそ色々教えて下さい」と恐縮しながらもお互いの健闘を誓い合った。

「追い込まれてから逆方向に打つ加藤君のバッティングには舌を巻く」と島谷選手が言えば、「島谷さんはホームランバッターかと思っていたら、流し打ちも見事。むしろ打率を残す打法です」とお互いの実力を認め合っている。加藤秀選手が言うように島谷選手には上田監督や中田打撃コーチも「予想外と言ったらシマに悪いが安定して3割を打つとは思っていなかった。野球に対する姿勢も素晴らしい」と絶賛する。自身二度目の首位打者を狙う加藤秀選手、初の首位打者を目指す島谷選手。左右の強打者が揃い踏みしたら勇者は強い。


お次はタイ・カップだ
福本選手が遂に前人未到の600盗塁を達成した。去る19日の対クラウン後期1回戦(西宮)で初回の第1打席は古賀投手から右翼ポール際に先制本塁打を放った。口さがないファンからは「なんだホームランじゃ盗塁の見せ場がないじゃないか」と贅沢な不満の声が。その声に3回裏の第2打席で直ぐに応えた。一塁強襲安打で出塁すると次打者の大熊選手に対する初球からスタートを切った。若菜捕手の強肩をもってしても二盗に成功し、通算600盗塁(今季34盗塁)を達成した。広瀬選手(南海)が持つ596盗塁を破ったのが6日の後期開幕戦だったが、大台達成まで11試合を要した。「やはり意識してスタートを切りづらかった」と福本選手は述懐する。

600盗塁を達成した試合に福本選手は珍しく家族(美津代夫人・純也君・和也君)を球場に招いた。球場への道すがら「パパは今日こそ決めるよ」と予告したそうだ。対するクラウンは7連勝中で三塁側スタンドも多くのファンで埋まっていた。「これだけ多くのファンの前で達成できた良かった。選手冥利に尽きます」とファンを大事にする福本選手らしさも見せた。大リーグ記録はタイ・カップ選手の892盗塁。「ハミルトンという選手が900台を記録したという話もあるが1800年代のことで公式記録ではないらしい」次なる目標はコレだ。
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