Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 511 猛牛番地獄耳

2017年12月27日 | 1985 年 



「留守番電話っていうのは感じ悪いなぁ。自分の家にかけてみて初めて分かったよ」とボヤくのは鈴木啓投手。先日の東京遠征の際に自宅に電話をかけたが、あいにく恵子夫人は留守にしていて鈴木は留守番電話相手に要件を伝えたのだが「こっちが喋っても返事をするわけでもなく、味気ないったらありゃしない」ちゃんと要件が伝わったか不安になりもう一度電話をしたとか。「よくよく考えたら留守にしといて電話をかけてきた相手に料金を払わせるとは失礼千万(鈴木)」と少々ご立腹。さすがの文明の利器も300勝投手にとっては無用の長物らしい。

今季改装された藤井寺球場。ロッカーの隣りには室温を一定に保ったうえに除湿装置も作動させバットを乾燥させるという日本では珍しい乾燥室が設置された。ここで乾かし反発力を増したバットで猛牛打線復活の恩恵を受けている野手陣。一方の投手陣は何の御利益も授かってないと思いきや、どこの世界にもちゃっかり者はいる。「雨が降っていても中止が決まるまで一応は球場に来なくちゃならない。靴もズボンもびしょ濡れの時はココで乾かしてもらってます」と話すのは高橋里投手。

6月初旬にデービスの息子は右手にギプスをした痛々しい姿で日本に降り立った。デービスJr もアメリカで野球をやっていてスライディングをした時に手首を骨折してしまったのだ。そんな息子の怪我を心配していたデービスパパも6月20日のロッテ戦で三塁へ滑り込んだ際に逆手の姿勢で体を支えてしまい両手首を痛めてしまった。親子揃ってスライディングで怪我をしてしまい「オレたち父子はスライディングが苦手」と父親の面目丸つぶれ。「今後、息子に野球を教えようとしても説得力が無いな」としょんぼりするデービスパパだった。

大阪市都島区にある自宅マンションから球場まで自動車通勤している梨田選手。今年の4月から助手席に鈴木康投手を同乗させている。ヤクルトから移籍して来た鈴木はこれまで大阪で単身暮らしだったが4月に家族が来阪し梨田と同じマンションに住むようになった。「ヤッさんは無口だけど一人の時より寂しくない。ウチの女房も俺が寄り道しないで帰って来るから喜んでいますよ(梨田)」と。ただし「ヤッさんの調子が今一つの時は車内でも反省会みたいな雰囲気になる事もしばしば(梨田)」らしい。

打線にオンブに抱っこ。弱投弱守の野球では確実性に欠ける
「チーム防御率が5点台でこの成績は健闘している方だと思ってますよ」と岡本監督は前半戦を振り返る。確かに4月・5月は猛牛打線の爆発的な打棒、石本投手に代表される中継ぎ陣の踏ん張りで大差をつけられたとはいえ西武に次ぐ2位をキープしたのは健闘したと言える。しかし6月に入ると中継ぎ陣に疲れが出始め、終盤に逆転されて落とす試合が増えた。中継ぎ陣以上に不安なのが鈴木啓、柳田、谷宏といった昨季36勝した三本柱が6月25日現在、僅か6勝という体たらくぶり。谷は自信喪失で二軍落ちしたままだ。「今は小山、村田、小野の3人でローテーションを回しているが厳しい。更に石本が相手に研究されて前半戦のような活躍が出来るか不透明」と不安を吐露する仰木ヘッドコーチ。

投手陣の不安に加えて守備力の弱さを指摘する声も多い。 " 動かざること山の如し " と守備範囲の狭さを揶揄される不動の三塁手・羽田、不慣れな一塁手・デービス、攻守ともに荒削りの遊撃手・村上、弱肩の左翼手・栗橋にチョンボが多い右翼手・仲根。更には捕手の梨田は強肩だがクイックモーションが出来ない投手が多く盗塁がフリーパス状態という惨状だ。相手のミスを突いて細かい野球をする西武と競り合いを演じた際には守備力の差が如実に現れる。ただ打つだけの野球では西武に勝てる確率は低い。「ある程度は覚悟していたがイザ実戦となって守りのミスが多すぎる。シーズン中とあって根本的な解決は難しい」と岡本監督は正直に語る。守りのミスを補って余りある猛牛打線の再浮上に賭けるしかないのが現状である。


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# 510 レオ番地獄耳

2017年12月20日 | 1985 年 



サイクル安打は逃したがナインから絶賛されているのが伊東選手の打撃。6月20日の阪急戦は両軍29安打が乱れ飛ぶ乱打戦だったが中でも伊東は4安打・5打点と大当たり。右前打・右中間二塁打・左越え本塁打を放ち、これで16日の日ハム戦から通算6打席連続安打。次打席は凡退し残された打席は第5打席のみ。「三塁打でサイクルだぞ」とナインに送り出されたが打球が飛び過ぎて3ラン本塁打。「三塁打は狙って打てるもんじゃないです」と頭をポリポリ。

伊東選手がサイクル安打を逃した同じ試合でナインから「暴走族だな」とからかわれた岡村選手。10対11と1点差に追い上げた8回表一死一・二塁の場面で石毛選手が放った中堅への飛球に二塁走者だった岡村はタッチアップで猛然と三塁へ突進した。熊野選手➡弓岡選手➡松永選手と中継された送球がそれて岡村は悠々セーフ。球が転々とするのを見た岡村は本塁へ向かうも三塁塁審の中村審判と交錯してスピードが落ち本塁寸前で憤死。結局、1点差で負けた為に「お前の暴走のせいだ」と冷やかされる羽目に。

6月22日の近鉄戦も勝利し開幕から破竹の10連勝となった東尾投手。だが東尾は5月半ば頃から右肩の違和感を訴えている。痛みはないものの登板後の張りがなかなか引かず「ほんと誤魔化しのピッチングで消化不良気味(東尾)」と。実は登板後の " アガリ " を利用して長野県諏訪市にある長生館まで足を運びマッサージ治療を受けている。「いつ負けるか、いつやられるか、そう思いながら投げている(東尾)」…東尾修・35歳。昭和50年にマークした自身の連勝記録の「8」を悠々とクリアしたベテランはエースの座を若手に譲る気はサラサラない。

西武では広岡監督以下、コーチ陣や選手の多くが西武球場近辺の所沢界隈に住んでいる。ところが中日から移籍して来た田尾選手は系列グループ企業の西武不動産が用意した所沢の住居を断り、東京・杉並区にある4LDKのマンションを購入した。本人曰く「球場の近くも良いかなと思ったんですが仕事を家に持ち込みたくないので試合後30~40分は車内で気分転換するのが今迄のスタイル。生活のリズムを崩したくないので離れた所に住むようにしました」と。でも家族の分も含めて高級車を複数台所有するカーマニアだけに「本当は所沢ナンバーが嫌だったんじゃないの?」との声もチラホラ。


首位堅守の影にチラついてきた投手王国の重大危機
開幕ダッシュに成功し独走態勢の西武特急に陰りが見え始めてきた。4月半ばに松沼弟が右肩痛で離脱。続いて抑えの森がキャンプでの調整ミスで本調子に戻らずミニキャンプで再調整を余儀なくされ、抑えの代役には19歳の渡辺を回すなど台所事情は外部から見ているよりも厳しい。10連勝中の東尾の踏ん張りで何とか首位を堅持しているが阪急や近鉄が迫って来ている。貯金が20近くあっても「残り試合を5割で行けば優勝?どこにそんな保証があると言うのか。勝負事は下駄を履くまで分からない。これからも2勝1敗ペースを守っていく(黒江作戦コーチ)」と首脳陣が慎重論を口にするのは投手陣の不安が解消されないからだ。

更にシーズン前から懸念されていた左腕不足は解消されていない。期待の工藤は今一つ波に乗れず、永射に至っては登板そのものが激減。挙げ句には巨人・角との交換トレードが報じられる始末。中継ぎも川村、黒原、高山ともに「試合に出してみないと調子が分からんし、信頼感はまだまだ(宮田投手コーチ)」である。梅雨時で雨天中止が多く今は東尾、松沼兄、郭、高橋直らでローテーションは組めるが梅雨が明けたら先発不足は明らか。二軍落ちした松沼弟に目途は立っておらず渡辺を先発に戻す必要が迫られているが、それには森の抑え復帰が必須条件。「よそ様が思うほど楽な状況じゃない。今の布陣では2勝1敗ペースは勿論、5割ペースすらキツイ。9連戦だとローテーションの谷間が2つ出来ますから」と宮田投手コーチは吐露する。
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# 509 ロッテ番地獄耳

2017年12月13日 | 1985 年 



爆撃ならお手の物?荘投手が意外な特技を披露した。「日本に来て暇つぶしにテレビゲームをやるようになったけど楽しいね」と話す。仙台遠征中のホテルのロビーに設置されている"来襲する敵機を戦闘機で迎え撃つゲーム"なのだが、軽く7万点を超すスコアをマークした。試しに他の選手がやってみた所、1万点はおろか5千点すら届かない選手が続出。ゲームに熱中する荘の周りを取り囲んだ選手は敵機の攻撃を華麗にかわして撃ち落とすテクニックにただただ呆れるばかり。来日する前に兵役経験がある荘投手だけに戦闘には慣れている?

もう一人ゲームの達人を。爆撃機のゲームは荘投手に敵わないと踏んだ佐藤コーチはお色気系のゲームに挑んだ。それは麻雀ゲームで点数の高い役で上がるとお相手の美女が1枚づつ服を脱いでいくというもの。看護婦、スチュワーデス、和服美人の中から相手を選んでイザ勝負!佐藤コーチは看護婦相手に高得点の役を立て続けに出して美女はパンティー1枚のあられもない姿に。それを見た梅沢投手が「よし、俺も」と挑んだが点数の低い役しか出来ず和服美人は足袋を脱いだだけ。しかも今度は相手に負け続けて美女は脱いだ足袋を履いて元の姿に。これには「佐藤コーチには敵いません(梅沢)」とすっかり脱帽。

2000本安打まで秒読み段階に入った有藤選手。由香夫人が内助の功をフルに発揮して記念写真集を製作する事になった。有藤の生誕から現在までを写真と由香夫人の文章で綴って一冊に纏めようというもの。目下、由香夫人は有藤の実母・八重子さんに有藤の子供時代の話を聞いて400字詰めの原稿用紙と格闘中。由香夫人が写真集作成を思い立ったのは「これまでお世話になった人達に恩返しをしたい」と思ったからだが、当初は「野球と私生活は別(有藤)」と反対された。しかし今では「少し恥ずかしいけど女房に任せてます」と協力している。早ければ7月上旬には記録達成が見込まれる。「どこであろうと必ず見届けます。達成の瞬間をメインに書くのですから(由香夫人)」と担当記者顔負けの張り切りぶりである。

唯一の気分転換がドライブなのが愛甲選手。白色のソアラを中古で購入し「休みの日はよく湘南までドライブをしています。海に沈む夕日を眺めるのが好きなんです(愛甲)」とか。愛車をこよなく愛して暇さえあればホースを持ち出してゴシゴシ洗車に余念がない。みっちり2~3時間かけてワックスをかけてピカピカにしている。「どうですか、とても中古車には見えないでしょ?」と御満悦。「まだ現金一括で新車を買える身分じゃないけど、一軍に定着して稼げるようになったら外車を買いたいですね」だそうだ。ただ現在は月賦の支払いに追われる日々が続く。


ベテラン2人に頼るしかない手薄なサウスポーの現状
昨季は2位に躍進し今季こそ悲願の優勝を果たしたい稲尾ロッテの最大の弱点は左腕不足。開幕ダッシュに失敗した要因は深沢と石川の15勝コンビの不調だと言われているが、実は左の先発投手不在も大きな要因の一つである。「確かに先発に左が一人もいないのは不利だよ。相手チームはオーダーを組むのに悩む必要がないからね。心理戦で楽をさせてしまっている(稲尾監督)」今季ロッテが対西武で大きく負け越しているのも左腕不足が要因の一つである。なぜなら日ハムの河野投手が新人ながら首位・西武から3勝をあげているように西武は左腕恐怖症。昨季途中でシャーリーが退団、水谷は今季から中継ぎに転向。大洋から佐藤を獲得したが本来は中継ぎタイプとあって先発が務まるか不透明。

「左投手が不足している事はウチの今後の大きな課題です。ドラフトでも左腕重視の戦略をとる。トレードも考えていますが相手のある事ですからなかなか難しい」と高橋球団代表は語る。そんな中、水谷が6月23日の南海戦で5回を2安打・無失点に抑えて勝ち投手となり先発要員に再転向する見通しが立ち、水谷に代わる中継ぎで佐藤が1勝するなどここにきて僅かではあるが光明が差してきた。「やっと自分で納得のいく投球が出来るようになってきた。今までは追い込んでから使っていたカーブを研究されて打たれる事が多かったので勝負球を変えたのが功を奏したみたい」と水谷は話す。だがこれでロッテの左腕不足が解消できた訳ではない。

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# 508 勇者番地獄耳

2017年12月06日 | 1985 年 



プロ野球選手の商売道具の一つでもあるユニフォームを忘れるなんてもってのほか。そんな出来事が立て続けに起きた。5月17日の西武戦、埼玉の西武球場に届いた荷物の中にブーマー選手のユニフォームは無かった。ブーマーは山沖投手のユニフォームを借りて出場したが西武ベンチからの野次にブーマーは大きな身体を小さくしていた。この一件はスタッフ間の連絡ミスが原因だったのだが、松永選手の場合は本人のミスだった。ユニフォームを西宮球場のロッカーに置き忘れたのだ。移動日だったので急遽、球団職員に大阪空港まで届けてもらい事なきを得た。

二世誕生を心待ちしている熊野選手。当初の出産予定日は7月20日前後だったが最新の診断では7月初旬には生まれそう。「もう男でも女でもどっちでもいいです。とにかく無事に生まれてほしい」と新米パパはヤキモキしている。佳子夫人は既に実家のある浜松に帰っており、「一人暮らしは大変だからとお袋が田舎から出て来てくれています(熊野)」。郭投手(西武)や荘投手(ロッテ)らと新人王争いを繰り広げているが、正直今は野球は二の次で頭の中は生まれてくる子供の事で一杯。

右ヒジの手術から半年、若きストッパー・関口投手は懸命にリハビリを続けている。6月12日に右ヒジ軟骨除去手術を受けた三重県の小山整形外科で最終チェックを経て、いよいよ7月13日から軽いピッチングを開始する事が決まった。現在は西宮第二球場で若手に混じり身体を動かし、練習後は近くのプールでひと泳ぎ。「肩の周りの筋肉が一回り逞しくなった。一刻も早く投げたくてウズウズしています(関口)」と久しぶりに白球を手にする日が待ちきれないよう。あの快速球が蘇る日も近い。

「車の事なら任せて下さい。もしも故障してお困りな時は私に御一報を」と話すのは山森選手。「高校生の時に免許を取得して以来もう車のない生活なんて考えられない(山森)」と言うほど車にのめり込んでいる。現在乗っているスカイラインRSも自ら改造の手を加えており、部品代を加えると総額は300万円を優に超えているとか。また山森は " 爆発物取扱い " の資格を持っていてガソリンスタンドの経営も可能。でも「スピードより運転する事自体が楽しい」と模範的なドライバーなのでご安心を。


右でも左でもいい、とにかく先発がもう1枚欲しいよ~
6月に入って独走する西武の背中がチラチラと見え隠れし始めた。山田・今井・佐藤の三本柱に山沖を加えたローテーションを組んでいるが今の時期は雨が多く雨天中止がしばしば有り投手の駒不足は露呈していないが梅雨が明けて夏場を迎えると先発4人では苦しい。特に左の先発投手が喉から手が出るほど欲しいのが本音だ。昨季は左腕の宮本が8勝と活躍したが今季はまだ勝ち星がなく二軍落ちしたまま。「オープン戦では今井や佐藤よりも良かったので今年の宮本は大化けするなと思っていたけど誤算やったね」と上田監督。また期待していたルーキーの古溝もプロの壁にぶち当たり戦力にはなっていない。

更に阪急投手陣を襲っているのが高齢化の波。山田36歳、今井35歳、佐藤も30歳の大台。南海の加藤や日ハムの津野のような活きのいい若手投手の台頭が望まれて久しいがなかなか育って来ない。その意味でも2年目の野中にかける期待は大きかったが右肩痛で二軍落ち。「主力の4人とその他の投手の差が大き過ぎる。左の星野は確かに成長しているが即一軍とはいかない(足立二軍投手コーチ)」今季もベテラン頼みが続く事になる。「幸いにも谷が抑えとして使えそうなので山沖を先発と抑え兼用でやり繰りしていくしかない。出来れば若い投手が出てきて欲しい。勿論、西武を倒して優勝するのが目標ではあるけど、一人でも通用する若手投手を育てるのも今季の目標だね」と上田監督は語る。


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