Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#187 12球団のチーム状況 ③

2011年09月28日 | 1981 年 
【阪神タイガース】 「世の中何が起こるか分からない」と中西監督を嘆かせた開幕投手・小林の左足の負傷。開幕のヤクルト戦で渡辺の打球を左足に受けた後も投げ続けた事で悪化させ6針を縫う全治2週間の怪我でローテーションを外れた。 小林の抜けた穴は新人の中田を抜擢し、中田の代わりに大町を中継ぎに固定する腹だ。一方、打撃陣での誤算はデードの野球ヒジ。当初から打撃は変化球にも対応できて評価が高く、軽快なフットワークで走塁も問題なかった。しかし、開幕直前にヒジ痛持ちであることが発覚して満足に守れず、定位置を北村に取って代わられた。うれしい誤算はもうひとりの助っ人オルトだ。 194㌢・94㌔の巨体から長距離砲のイメージが強かったがキャンプ当初は、まともにバットに当たらず加えて鈍足で守備範囲は狭く「5月には帰国やな」と酷評されていた。ところが甲子園での巨人戦で同点3ラン・逆転3ランを連発して評価は一変した。
        



【中日ドラゴンズ】 評価が一変したのは中日も一緒。昨年の最下位から近藤監督の下、見事に蘇った。投手起用に対する批判の
声は依然としてあるが、今はヤル事・成す事すべて上手く運んでいる。唯一の懸念材料はスパイクスの不在くらいだろうが、むしろ
スパイクスの不調のお蔭で代役の4年目・石井が大暴れしている。今の中日は何をやっても上手く行き過ぎて怖いくらいだろう。

              



【阪急ブレーブス】 開幕して8試合は全て先発メンバーが異なる。チームが過渡期であるのは明らかである。特に島谷の年齢から
くる衰えは顕著でキャンプ中から「疲労を配慮すればまだまだ老け込む歳じゃない」と言われていたが、開幕して3試合で右太腿は
肉離れ寸前なのだ。また大橋の右肩痛も長引き試合に出たり出なかったりだ。明るい材料は大橋の代役に入れた新人の弓岡に使える目処が立った事か。投手陣では山田の連敗が誤算だろう。山田は過去6年間の開幕3試合はオール完投で17勝1分けの絶対的エース。それがまさかの開幕3連敗とは上田監督も想定していなかっただろう。沈滞気味のチームの雰囲気を一掃したのは3年目の関口。山口の衰えが目立つようになって抑え役が不在だったが関口が若きストッパーに抜擢され大活躍だ。

   

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#186 12球団のチーム状況 ②

2011年09月21日 | 1981 年 
【横浜大洋ホエールズ】 ヤクルトよりも深刻なのが大洋で開幕早々主力投手に故障者が続出したのだ。平松・増本が右肩痛、
田中・藤岡が右ヒジ痛、門田は去年の右肩痛からの復帰に目処が立たない。もともと投手陣の層が薄く高卒新人の広瀬までも
一軍で使うつもりでいたが、その広瀬も左ヒジ痛でリタイアして苦し紛れで起用した2年目の前泊が巨人戦で初登板・初勝利して
救世主かと期待されたが次の広島戦では1回KOとまだまだ計算は出来ない。頼みの斉藤明も不調で土井監督は抑えの遠藤を
先発に回す事も思案中だ。

  




【南海ホークス】 大洋と似た状態なのが南海だ。打線はソコソコ点は取るが投手陣がそれ以上に失点してなかなか勝てない。
先発の柱・藤田学が風疹、抑えの切り札・金城が急性肝炎で離脱したのが痛い。貧打解消の為に西武からタイロンを獲得したが
交換相手がローテーション投手の名取だったのが痛し痒し。しかも外人枠の関係で高が二軍行きを余儀なくされた。名取と高は
去年二人で8勝しただけに、このトレードを希望したブレイザー監督に対する疑問の声が球団内に燻っている。

      




【日ハムファイターズ】 日ハムも投手で苦労している。植村コーチの目算では江夏の加入で防御率は去年の3.61より良くなると
していたが、フタを開けてみると木田・高橋里・杉山が滅多打ち状態でチーム防御率は5点台の体たらく。救いは工藤・高橋正の
若手がローテーションに名乗りをあげた事。一方の打撃陣は高代・島田誠の核弾頭コンビが共に打率3割をマークして出塁率も
高く、二人をソレイタ&クルーズの助っ人コンビと柏原のクリーンアップで還すパターンで得点をあげるなど絶好調だ。それだけに
投手陣、特に木田の復調が上位進出の鍵となりそうだ。

  



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#185 12球団のチーム状況 ①

2011年09月14日 | 1981 年 
   

  1981年のペナントレースが開幕して1ヶ月。予定通りに進んでいるチーム、思惑が外れて低迷する
  チームとそれぞれです。



【西武ライオンズ】 石毛にばかり注目が集まるが西武には他にも楽しみな新人が入団した。「あの恐い物知らずの新人たちの
機動力は脅威だよ(近鉄・梨田)」が代表するように岡村や広橋の足が西武の野球スタイルを変えようとしている。4月11日の
近鉄戦、中前安打した岡村は平野が見せた僅かな隙をついて単打を2塁打にしてしまった。この新人たちに後押しされるように
チームは5連勝で開幕ダッシュに成功したかに思えたが好事魔多し、左手甲に死球を受けた石毛と太腿肉離れでスティーブが
怪我するなど主力が離脱、彼らにチャンスが到来した。しかし、レギュラーとして毎試合に出続けるようになるとミスが目立って
くるようになった。ただ打つだけではレギュラーは務まらない。機動力が売りの彼らに走塁のミスが出始めたのだ。勢いだけで
定位置を取れるほどプロ野球は甘くない。もう一人二軍には根本監督の隠し球がいる。高卒新人の小野和幸投手だ。松沼兄の
肘痛の回復が思いのほか芳しくなく首脳陣は思い切って治療に専念させた方が本人にもチームの為になると考えている。その
穴を埋める投手に小野が抜擢される可能性が充分ある。中央球界では無名の金足農高出身のドラフト外入団だが、現在二軍
では敵無しの快投を続けている。後期を見据えて早い段階で一軍に上げて馴らし登板をさせるかもしれない。

  



【読売ジャイアンツ】 開幕4連勝を含めて4月は13勝6敗だった巨人は中日に次いで2位。上々のスタートを切ったが首脳陣の
気懸かりは新浦の調子が今ひとつである事。開幕前は「江川・西本・定岡・新浦・藤城」のローテーション構想だったが、新浦と
藤城、特に新浦が期待に応えていない。勝ち負けの問題以前に投球内容が悪すぎて、早くも3度目の登板機会は飛ばされて
新浦以外の4人のローテーションで回す事に変更された。今のところ1人減った影響は出ていないが夏場以降が懸念される。
先発が減ったことで中継ぎ陣の働きが重要になってくる。今の中継ぎ陣の中心は去年まで燻っていた浅野と加藤初。加藤は
登板機会を求めて契約更改の場で移籍を直訴したが藤田監督と話し合いを持ち残留した経緯がある。新浦離脱の皺寄せは
今やベテラン二人の右腕に頼らざるを得ない。

   



【ヤクルトスワローズ】 去年までのカモ相手に苦戦しているヤクルト。虎狩り得意の梶間や竜キラーの鈴木康が今年はサッパリ
なのだ。安田は二軍でも滅多打ち、最低でも5勝と見込んでいた竹本も「今年は無理かも(堀内コーチ)」と投手陣が散々。救いは
巨人キラーの尾花が健在な事くらいか。悪い事は重なるものでマニエルの不振に加えて若松が4月22日の広島戦で水沼の浅い
飛球をダイビングキャッチした際に右肩を負傷してしまった。診断の結果は右肩靭帯断裂で全治は2ヶ月の大怪我。 マニエルや
大杉の不振も一向に上向く気配もなく上位浮上のキッカケすら見出せない。

  

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#184 江川の助っ人一発病

2011年09月07日 | 1981 年 
   

プロ入り後しばらくの間、江川はマウンド上では意識的に無表情を装って淡々と投げるだけで喜怒哀楽の無い鉄仮面と言われていました。好投してもKOされても試合後に理路整然と投球を振り返る姿にファンもアンチも物足りなく思っていました。そんな江川が3年目になって変わりました。彼本来の打者を捻じ伏せる投球が蘇るにつれて表情が豊かになり感情を表すようになりました。

「球がよくキレてスピードが乗って三振の山を築いていると、自分の投球にポーと酔っちゃいます。この前の阪神戦がそうでした」2~3回の5連続を含め3回迄で6奪三振。いったい幾つ三振を奪うんだとネット裏がザワザワしだした途端、"ダメ害人" と酷評されていたオルトに軽々と勝ち越し3ランを被弾。自分の投球に酔った代償なのだ。

江川は外人に一発を喰らうケースが多い。「完全に力負けです。同点になって心理的に追い込まれたこともありますが、冷静さがもう少しあったならあの一発は避けられたかもしれません」「(外人選手に)ムキになるというか、自分のストレートが通用するかを確かめてみたい気持ちがムクムクと湧き上がるんです。変化球で緩急をつければ楽に討ち取れると頭では分かっているのですが」「打たせてとるのも投手の醍醐味かもしれません。でもボクは速いボールで勝負できるうちは速球で勝負していきたい。そう思ってくれているファンも多いと思うし、それで勝てれば言うことないのですけど」 オルトに打たれる直前に珍しく江川がマウンドの上で大きく笑った。佐野を会心の速球で三振に討ち取った時だ、その直後に劇的一発を浴びて落胆の表情に一変する。笑顔にファンは喝采し、落胆する姿にアンチは歓喜する。江川は間違いなくプロ野球界を面白くしているのだ。



江川の外国人選手に対してムキになる傾向はその後も直ることなく続きました。6年後のシーズン途中にボブ・ホーナーがヤクルトに入団しました。ホーナーはドラフト全米1位でアトランタ・ブレーブスに指名されマイナーを経験する事なくメジャーデビュー。その試合で本塁打を放つなどして新人王を獲得後も順調に成長しブレーブスの四番に納まりました。1986年オフにFA宣言したものの年俸高騰を嫌うオーナー達の結託によってメジャーから締め出されて日本に来ました。阪神戦で3連発を放ってホーナー熱で日本中が湧き上がった時に江川と対戦しました。結果は3三振。全盛期を過ぎて往年の速球は影を潜めていたがホーナーと対戦する姿は、かつての助っ人相手にムキになって投げていた頃の江川でした。

江川の自惚れさのエピソードを同学年の阪神・掛布が語った事がある。オールスター戦でベンチに隣り
同士で座っていた時に江川が「やっぱりプロって凄いな、高目のボールを空振りしないもんな」と掛布に
真顔で言ったそうです。高校・大学を通じて本気で投げた速球は、ヒットどころかファールにされた事も
なかったのでプロも大した事ないだろうとタカを括っていたそうで、謹慎期間に登板した2軍戦で名前も
知らない選手にも打たれて「このままじゃヤバイ」と気持ちを引き締めたと聞かされた掛布は「コイツは
次元が違う」と思ったそうです。野村克也氏も好投手ほど自惚れ屋が多いと言ってましたが江川も例外
ではなかったようです。



プロ入り最初に打たれたのがスタントンで、逆転3ランがラインバックとデビュー戦から外国人選手とは
浅からぬ縁があったようで・・まぁ若菜にも一発喰らってますけど。

      
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