納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています
新人の大活躍は確かに楽しい。新しい夢をファンに与えてくれる。しかしまたベテラン達のいぶし銀のようなプレーもファンの胸を打つ。特に中堅サラリーマン諸氏たちには大きな勇気づけになるかもしれない。 " 老い " と謳ったのは失礼かもしれないが、その野球への一徹さでいつまでも " 老いぬ " とこじつけての激励と解釈して頂きたい。
リンド獲得で燃えた " 34歳のガッツ "
巨人のベテラン・土井正三選手(34歳)が首位を走る巨人を支える活躍を見せている。しぶとい攻守は流石にキャリアを感じさせる。今や巨人の陰の牽引者と言っていい。ルーキー松本の急成長、新外人リンドの加入という刺激を受けた土井はこれからも活躍を続けるだろう。「松本?リンド?そんな他人のことを考えている暇は無いよ。自分のプレーのことだけで精一杯だよ」と土井は謙遜するが、あくまでも表向きの話。内心は激しいライバル意識で燃えたぎっている筈だ。数年前までの土井ならファイトを剥き出しにしていただろうが、34歳の今はコーチ兼任という立場もあって分別をわきまえた言動に終始している。
言葉とは裏腹に新外人のリンドがシーズン途中に来日するや否や土井は左翼席へ、右翼席へと3試合連続本塁打を放つ。昭和40年にプロ入りし過去13年間で53本塁打だった男が見せた意地だ。その時の態度も印象的だった。「初めてかって?冗談じゃないよ、前にも3試合連発はある。俺のパワーも捨てたもんじゃないだろ」と勝ち気なところを見せると居並ぶ報道陣を横目にニヤリと笑った。その頃のスポーツ紙には「リンドは遊撃か二塁で使う」という長嶋監督のコメントが載せられ、土井としては心中穏やかでない日々が続いていた。何しろ過去2年はジョンソンの控えで冷や飯を喰わされ続け、ようやく陽の目を見る時が来たと喜んでいた矢先のリンドの来日だった。
雑談中に「リンドには負けない。負けてなるものか。リンドの獲得が決まった時からカッカしてるよ。どうしてもっと俺たち選手を信用しないかってね」とフッと本音を漏らしたことがあった。その時の土井の目はギラギラし、ある種の憎悪に満ちた感じを漂わせていた。実はリンドが来日するまでの土井は不調だった。打撃はそこそこだったが守備が酷かった。開幕から8試合で3失策。特に小倉での広島戦では真正面のゴロをトンネルするなど草野球並みの大失態を演じたこともあった。また記録上は失策にはならない " 拙守 " もあった。華麗なフィールディングを誇ったジョンソンの印象が強い分、余計に守備力の差を感じさせた。
ネット裏では「土井も衰えたな。早く後釜を育てないとマズイな」との声が聞かれた。それが好敵手の出現でガラリと変わってしまった。以後の土井のプレーは攻守ともにパーフェクトで何度も美技でチームを救った。「今シーズン駄目だったら潔くユニフォームを脱ぐ覚悟だ。ある程度納得できるプレーができたら、あと2~3年はやれるだろう。俺にとっては野球生命にかかわる大事なシーズンだからそのつもりで…」と宣子夫人に自分の決意を伝えたのは宮崎キャンプ出発の直前だった。そして開幕前の3月末にもう一度、宣子夫人に同じことを言ったそうだ。普段とは明らかに違う土井の表情に宣子夫人は「分かりました」と返事する他なかったという。
フルシーズン出場のスタミナOK
実戦向きと日に日に評価を上げてきた松本の存在も侮れなかったが結果的には土井の実力が優った。1㍍72㌢・62㌔とプロ野球選手としては恵まれているとは言えない身体で厳しい世界を生き抜いて来られたのは、ただただ気力のお蔭だった。類い稀なるガッツが無ければ今日の姿はなかった筈だ。リンドが来日する以前は松本を追いやったことに安閑となり、いつの間にか土井から売り物のガッツを消してしまっていたと言えはしないか。そんな土井の尻を叩いたのがリンドの出現だったのだ。「土井がよくやってくれている。心配していたけどあれだけやってくれれば言うことはない」と長嶋監督も土井の復活を手放しで喜んでいる。
懸念されるスタミナの維持にも気を配っている。球場入りする前にカロリーの高い肉類を摂り、夜は魚中心の食事。「ナイターの後に胃の負担となるようなものを食べると寝つきが悪くなるから肉は食べない。試合前は栄養価の高いものを摂ってスタミナをつけないとね(土井)」と。細身で体力不足に陥りがちな夫の為に宣子夫人が考案した苦心のメニューが食卓に並ぶ。「今の状態ならシーズンをフルに出場したってOKだ」と土井は言い切る。野球を知っていることにかけてはV9の生き残りでチームで右に出る者はいない。ベテランらしい味のある攻守はセ・リーグ連覇に欠かせない存在である。まさにベテランの一徹である。
予告先発という球団の演出に応えたヤクルトの人気者・サッシー。4月21日の颯爽たるデビューぶりには契約金三千万円の価値?があった。と同時にサッシーの売り込みに狂奔する球団の営業策もお見事と言うべきか。しかし、この18歳のルーキーへのPR作戦にこもごもの議論が出ている。
大成功の " 予告先発 "
ヤクルトの目玉商品・サッシーこと酒井投手の予告先発は大成功。先ずは見事なデビューだった。素質があるとはいえまだ18歳の若者である。ただでさえ緊張するのにあれだけマスコミに大々的に取り上げられた予告デビューに果たして実力を発揮できるか心配する声も多かった。だがその心配を蹴散らして7回無死一塁で降板するまで、打者23人・7安打・4奪三振・1四球・2失点に抑えた。堂々の投球内容でファンは大喝采し首脳陣は胸を撫で下ろした。「これくらいはやれると思った」と広岡監督は話したが本当だろうか?本心はここまでやるとは…だったのではないか。とにかく首脳陣は大仕事を無事に終えて一安心した。
ファン以上に大喜びし歓喜したのはフロント陣。この対大洋3連戦、観客動員数は初日7千人、二日目6千5百人だったのが酒井が登板した日は倍増どころか3倍以上の2万2千人を集めたのだから営業サイドは笑いが止まらない。ところで今回の予告先発についてある逸話が隠されていた。予告先発を発表した日に広岡監督は「本当は後楽園の巨人戦で投げさせるつもりだったが色々と事情があって変更したんだよ」と告白した。期待の大器をプロ野球のメッカである後楽園球場で、超満員の異様な雰囲気の中で投げさせることで大きく育って欲しいという親心だったが、当然の如くフロント陣を超えたヤクルト本社筋から " 待った " がかかった。
広岡監督は多くを語らないが「神宮まで待て」の指令があったのは想像に難くない。というのも酒井のデビューに関してはその10日前に " 初登板日当てクイズ " なるものが球団から発表されていた。球団には全国から応募のハガキが殺到した。この発表後に後楽園の巨人3連戦、次が神宮の大洋3連戦が組まれていた。「本拠地登板に限定していません」と球団はコメントを出したが営業面からいっても初登板は神宮球場でと考えているのは明らかだった。登板当日の松園オーナーは「広岡君も思い切ったなぁ。僕は酒井君のデビューはもっと先だと思っていたよ」と語ったがそれを信じる記者は皆無だった。
酒井騒ぎのプラス・マイナス
もう少し予告先発の成功を検討してみると対大洋戦は昨季ヤクルト主催ゲームで動員した128万4千人のうち1試合平均で7千人と他の4球団と比べて最低である。ちなみに巨人戦は4万8千人、阪神戦は2万1千人、広島戦は1万2千人、中日戦は1万人である。公称4万8千人収容の神宮球場では大洋戦の7千人はガラガラの印象が強い。それがサッシー人気で阪神戦に匹敵する2万人を超える観客を集めることに成功した。いつもなら一塁側の席から埋まるがベンチに座る酒井の表情が見える三塁側の内野席からチケットが売れた。また大洋戦では初めてとなるダフ屋まで現れるなど球場外でも大騒ぎだった。
昨年のドラフト会議前から酒井獲得の至上命令を下していた松園オーナー。客を呼べるスター選手が少ないヤクルトにとって酒井は松園オーナーと同郷で、願ってもない救世主だった。大々的な入団発表を長崎と東京で二度行ない、年が明けて長崎でのオープン戦後には松園オーナー主催の「ヤクルト激励会」が行われたが事実上は酒井のイメージアップの為の激励会だった。本拠地・神宮球場の阪急戦でもう一人の期待の新人・梶間投手がお披露目されたが「サッシーDAY」と銘打って主役はあくまでも酒井だった。とにかくサッシー、サッシー中心の営業方針だった。
予告先発には色々な意見が出ている。正統派は「プロ野球も商売だから選手を売り出そうとするのは結構だ。だが過剰な酒井推しはチーム内で反発が出かねない。本人の為にもあまり騒がないで欲しいというのが現場の願いだろう(ヤクルト担当記者)」。5月28日に長崎で行われる予定の中日戦用の宣伝ポスターにはエース・松岡投手を脇に従えた酒井が主役として中心に写し出されている。更に中日戦の収益を全て長崎に還元するという話まであるが、流石にそれには眉をひそめる人は多い。
「宣伝はどんどんして構わない。平均7千人動員が2万超えしたのは酒井のお蔭だろう。しかし地元への還元の仕方が問題。単にお金を渡すのではなく長崎の小中学生に野球道具をプレゼントするとか少年野球の組織を支援するとか子供たちの為に使って欲しい。それが将来のヤクルトや野球界の繁栄に繋がるのではないか」と地元新聞記者は言う。つまるところは将来有望な新人を一企業の宣伝材料にするのではなく、野球界全体の為に売り出すべきということに尽きる。このような議論が沸騰するのも流石サッシーが大物の証明でもある。
負けが込むとお決まりのウワサは監督更迭。開幕して15試合で12敗(4月28日現在)の中日に、またぞろそんなウワサが出てきて・・何しろ前例があるものですから。
色めき立ったネット裏
中日が2週間の長期ロードを終えて本拠地の名古屋に戻った4月25日は球団の定例役員会の日で、伝え聞くところによると親会社から厳しい批判の声が飛び出したらしい。その証拠に会議後の球団フロント陣は緊急のスタッフミーティングを招集して苦境打開策の検討を行なった。こうした一連の動きを見ているとチームおよびその周辺の雲行きは風雲急を告げる状態で間違いない。それにしてもいくら不振とはいえ、せめて4位くらいには留まっているだろうと思われていた中日がここまで低迷するとは誰も想像できなかったであろう。最近、地元の熱狂的な中日ファンも余りの不甲斐なさに怒りよりも呆れかえって諦めムードが街中を漂っていると嘆く。
そしてファンの間で話題になっているのは「与那嶺監督の休養も時間の問題だね」だそうだ。ファンだけではない。開幕して間もない4月10日、ナゴヤ球場での対巨人3回戦の敗戦後の報道陣が「こりゃあ昭和39年のケースにそっくりだ。監督休養は大いに有り得る」と色めき立った。昭和39年というのは杉浦清監督が今季のように開幕からつまずいて最下位に低迷し、6月中旬に休養に追い込まれたケース。今季は6月どころか4月中に休養説が流れる異常事態だが、それ相応の理由を中日が内蔵していたからだと見ることが出来る。オープン戦で期待された結果を遂に出せなかった助っ人のデービス選手に周囲は不安を隠せなかった。
大物OB評論家はその不安を代弁するように開幕前にこう話していた。「デービスの件はひとつ間違えたら大問題になりますよ。高額の年俸で活躍して当たり前、期待外れだったらチーム内に不満が噴き出し内部崩壊する危険すらある。私は与那嶺監督がもっとデービスと対話して一刻も早くチームに溶け込めるようにするべきだと思いますね」とデービスの特別扱いについて危惧を指摘していたが、どうやらその悪い予想が当たってしまったようだ。デービスのプレーは流石と思わせる走塁を何度か見せてくれたし、打率3割をキープし帳尻は合わせているが今一つ迫力に欠け物足りない。また時折見せる怠慢プレーにチーム内で不満の声は多い。
広島遠征の時に某主力投手が「あの野郎ふざけやがって!アイツのためにチームが滅茶苦茶になってしまうんだ。自分は一番高い給料を貰っているから涼しい顔をしていられるが俺たちは勝ち星ひとつを飯の糧にしているんだ」と怒りを爆発させた場面を目撃した人は多い。元々おとなしいタイプが多く、表立って批判することの少ない中日の選手でも流石に我慢の限界に近づいているようだ。「そもそも最初にピシャリと抑えつけておかないから大きな顔をするんだ。フロントも監督もデービスを神様扱いするから勘違いしてつけ上がるんだ」と某主力内野手。こんな状態ではいくら与那嶺監督が選手に「チームプレーに徹しろ」と叫んだところで説得力はない。
投手陣もガタガタ
更にチームを低迷に追い込んだのが投手陣の不振。昨年まで投手陣の手綱を締めていた近藤コーチが退団した為に「与那嶺監督は投手起用に迷いが生じている」と中日担当記者は指摘する。チームプレーも上手くいかず、投手陣も悪いではとても乱セを勝ち抜けない。だが、球団フロントや現場の首脳陣たちの思惑違いも確かだが選手も大いに反省しなくてはならない原因もある筈だ。「巨人の選手を見習うべきです。巨人の選手は打席で何とかして出塁してやろうという気迫が見ている我々にも伝わって来る。それにひきかえ中日の選手は簡単に早打ちして凡打を繰り返す。情けないったらありゃしない。最下位脱出は当分無理でしょうね」と地元の30年来の古参ファンは嘆く。
まだペナントレースは始まったばかり。20試合を消化した時点で悲観的な材料ばかり飛び出すのはいただけない。先は長いと悠長に構えているとこのままズルズルと深みにはまり込んでしまう。それは過去のプロ野球の歴史で数多くの例が証明している。こうした事態にようやく球団側もデービスを呼び出し、小山球団社長・与那嶺監督との3者会談を催しチームプレーの徹底を要請しデービスも快諾した。その後のデービスは見違えるようなハッスルプレーを見せ、1試合2本塁打などの活躍に引っ張られるようにチームも連敗を止めて今季初の連勝をするなど希望の光が僅かだが見え始めた。与那嶺監督の首が飛ぶか繋がるかはデービスの活躍次第だ。
止まらない快進撃と喜んでいたら今度は止まらない黒星街道。やっぱりダメかと泣いていたらまた勝ち始める。どうにも不思議なタイガースの試合っぷり、どうなってんだろう?
王敬遠にみる吉田采配
連勝、連敗、また連勝。ドラマチックでいいじゃないと笑い飛ばせる人には堪らないだろうが、普通の阪神ファンには『嬉しがらせて・・・泣かせて・・』と歌の文句そのままで精神衛生上あまり好ましくない。「ファンからしてみればどうにも理解できない。いったいどう阪神というチームを考えていったらいいのか。連敗するかと思ったら連勝するし、さっぱりチームの体質を計ることができませんわ」と嘆く阪神ファンの宝塚市・柴田達朗さん。柴田さんによると「甲子園で巨人3連戦3連敗した時にスタンドから罵声を浴びせたけど、家に帰って冷静になったら興奮した自分がアホらしくなった。去年の11連敗に比べたら大したことなかった」と。
勝つ時は派手でファンとしては嬉しいのだが、負ける時も派手というか、物凄いというかエラく目立つものだからファンは余計にカチンとくるそうだ。その八つ当たりが吉田監督に向けられる。ファンだけでなくネット裏の専門家でも吉田采配に首を傾げる人は多い。例えば4月27日の対巨人5回戦(後楽園球場)7回裏一死二塁の場面で谷村投手は張本選手を敬遠して王選手と勝負した。結果は左中間に2点適時打で吉田監督の賭けは失敗した。野球は結果で評価されるからこの王を巡る敬遠策についても様々な意見が飛び交った。
「かつてベーブルースが言っていただろ『ヒット狙いに専念させてくれたら打率4割を打ってやるぜ』と。王だってホームランを狙わずに打ったらいかにスランプとはいえヒットを打つくらい容易い大打者。その辺を理解できない阪神ベンチはダメだよ」と阪神OB評論家は手厳しい。これに対して吉田監督は「谷村には投げやすい方を自分で選べと指示したが迷っていたので相性が悪い張本を歩かせた。結果的にヒットになったが当たりそのものは打ち取った打球でウチに運がなかっただけ」と釈明したが少しおかしい。昨季の谷村投手の対戦成績は張本は12打数3安打、王は11打数5安打と王の方が相性が悪かったのだ。
あるベテラン評論家が対巨人戦の前にこんな話をしてくれた。「長嶋監督が『俺も下手だけど吉田さんも同じだね』と。お互いに裏表がなく分かり易い采配だと笑っていた。相手の裏の裏をかくような事はせず、ある意味清々しいじゃないか」と。だからこそ28日の試合のようにノーガードの乱打戦を見せてくれる。また別の評論家は「長嶋監督も吉田監督も3年目だが昨年優勝した長嶋監督には余裕が感じられる。奇襲作戦と言われる早い回からの代打策も一つの型が出来て我々ネット裏の人間を納得させるようになってきた。その点では吉田監督の作戦はまだ板についてきたとは言えないね」と。
伝統の一戦と言われて常に対比される両チーム。昭和48年の最終戦に勝てば優勝という甲子園での直接対決に代表されるように大一番に強い巨人、ここぞという試合に勝てない阪神と言われ続けてきた。阪神は相手が巨人だと必要以上に意識してしまう。「今の巨人の状態は万全ではなく圧倒的に強いわけではないのだから130試合のうちの1試合と考えて戦えばよいのにそれが出来ない」と阪神担当記者は言う。むしろ戦力は阪神の方が上なのに大一番では巨人に勝てない。特に地元の甲子園では余計な緊張感が頭をもたげてしまう。吉田監督はじめ歴代の監督たちが懸命に払拭に努めた阪神の伝統的な体質がどうしても現れてしまうのだ。
田淵の闘志に光明
吉田監督は不運だった。開幕10試合までの阪神は順風満帆以上のあれよあれよの快進撃ぶりだったのにその反動は大きく余りに痛ましい逆境が待っていたのである。開幕前は最大の弱点と言われていた投手陣が完投試合を続ける奮闘を見せた。それが急にガタガタと崩れてしまう。それに加えて野手陣の故障が相次いだ。特に痛かったのが成長著しい掛布選手が広島戦で手首に死球を受けて戦線離脱に追い込まれたこと。続いてラインバック選手が肩とヒジを痛めて欠場し自慢の200発打線に陰りが。更に下位打線を牽引していた佐野選手が川崎球場で外野フェンスに激突して頭部に大怪我を負ったしまった。満身創痍の阪神では吉田監督にも同情せざるを得ない。
そんな中で変身したと言われているのが田淵選手だ。今年から選手会長に就任し、チームリーダーとしての自覚からか傍目から見てもスリムになった。かつては相撲の " 阪神部屋の横綱 " と揶揄されていた出っ張ったお腹の肉もスッキリ落として、今は90kg 台をキープしている。均整のとれた身体で動きもスムーズだ。ただし持病の腰痛は完治しておらず体調そのものは万全ではない。にもかかわらずここまでフル出場し、先の巨人戦では初盗塁や左翼線へ痛打して二塁へ果敢にヘッドスライディングをするなど元気なところを見せている。「プロ8年間で11盗塁の俺だけど今シーズン1年で20盗塁してやるぜ(田淵)」と冗談が出るくらい上機嫌だ。
後楽園での巨人戦で田淵は対巨人60本目の本塁打を放つなど3連戦の勝ち越しに貢献した。その前の甲子園での3連戦・3連敗後の記者会見で質問に答えず無言を貫いた挙句に「そんなに言うならアンタらいっぺん監督をやってみなはれ」と捨て台詞を吐いて不評をかった吉田監督も田淵の活躍に「ペナントレースは始まったばかり。勝負はこれからや」と心境に変化も。なんといっても200発打線の猛虎阪神がモタモタしていたらセ・リーグのペナントレースの面白さが半減してしまう。