今も昔も甲子園大会はスカウトが注目する選手の品評会になります。この年は金村(報徳学園)と
槙原(大府)に視線が集まりました。
槙原寛巳(大府)…甲子園は昨年夏に続いて二度目だが昨年は背番号15の控え投手。沢監督は投げさせる機会を探したが
なにしろ投球がどこへ行くか分からない制球難だった為に槙原の登板は実現しなかった。それが僅か半年余りで別人の様に
変身した。球速145㌔は大会No,1。まだスピードガンが珍しかった6年前から球速を測定してきた広島・苑田スカウトによれば
「高校生は勿論、大学・社会人投手でも145㌔を出したのは槙原が2人目だよ。もう一人は法政大学時代の江川だけど、江川が
4年生の時だから槙原は間違いなく本物だよ」と絶賛。巨人・伊藤スカウトは「槙原を見るまでは秋田経済・松本がイチバンだと
思っていたけど槙原が頭一つどころか三つ・四つ抜けてるな」とこちらもゾッコンのようだ。そんな中、浮かない顔をしているのが
大府の地元球団の中日だ。地元の逸材が全国に知れ渡ってしまい痛し痒しなのだ。「これだけ名前が知られてしまうと、運良く
ドラフトで指名できても7~8000万円は必要になる・・」本人は「進路は決めていない。今は夏の大会の事で頭はいっぱい」と
いうことだ。さらに大きくなって夏の甲子園に帰って来て欲しい槙原に周囲の期待は膨らむばかりだ。 【→巨人】
松本豊(秋田経済)…高校球界では3本の指に入る本格派投手との評価は本当だった。1回戦・丸亀商戦での速球は138㌔で
これは出場30校のエースの中では大府・槙原に次ぐものだ。しかも松本は槙原には無い制球力を持ち合わせている。外角の
コーナーいっぱいに決まるカーブ・スライダーは高校生では簡単には打つことは出来ないであろう。 「精神面でも非常に安定
している。投手に必要な冷静沈着さを身に付けており、強打者に対して速球で勝負を挑む負けず嫌いな点などプロ向き」という
意見で一致するのがスカウト達の松本評だ。学業も非常に優秀で両親は大学進学を希望しているが、夏の大会後には進路を
巡って虚々実々の駆け引き必至の逸材である。 【→住友金属→横浜大洋】
古溝克之(福島商)…今大会では数少ない本格派左腕だったが1回戦で御坊商工に破れ早々と姿を消してしまった。「もう少し
見たかった」と評価を下げたスカウトもいたが、多くは「一級品」の評価のまま。福島商・黒沢監督の古溝評は「スピードだけなら
阪急入りした先輩の三浦の方が上だが球のキレなら古溝が数段上」だそうだ。しかも御坊商工戦で記録した136㌔は高校時代に
三浦が出した133㌔を上回っていて、まだまだ球速は伸びる可能性を秘めている。古溝と仲の良いクラスメイトによると 「好きな
プロ野球選手は江川なんです。理由は自分には無い『思い込んだら命懸け』の性格を持っているからだそうです。あんな騒動を
起こしても少しも動じない所が良いんだって」悪役・江川ファンを公言するとは古溝本人こそ動じない心臓を持っていると言える。
【→専売東北→阪急】
金村義明(報徳学園)…チームは大府・槙原に屈したが、金村は槙原から本塁打を含む3安打を放ち「打者・金村」の評価は
ウナギ登りだ。河合楽器で外野を守っている兄の広雄さんも報徳学園時代は関西では有名な強打者だったが学校関係者の
話によると「弟の方が柔軟性がありコースに逆らわずに打ち分ける技術もある」と兄より上だそうだ。スカウトの評価も「手首の
柔らかさは天性のモノ。今大会No,1打者」と高い。スカウトの意見は「投手ではプロは厳しいが打者としてなら充分モノになる。
プロ入りしたら三塁か外野へ転向になるだろう」が多勢だ。学校関係者は「あくまでも投手を続けさせる」と断言し、野手転向の
可能性は無い。ちなみに今大会での球速は136㌔と3番目だった事を付け加えておく。 【→近鉄】
槙原(巨人) 荒木(ヤクルト)
松本(横浜大洋) 竹下(横浜大洋) 古溝(阪急)
松本 西川(南海) 吉村(巨人) 佐藤(阪神) 荒木
金村(近鉄) 石井(阪急) 槙原 古溝