
一人前になった青エンピツ
5月21日の大洋戦(ナゴヤ球場)でプロ初完封勝利をあげた青山投手はマウンドから降りるなり涙を流して大声で泣いた。それから4ヶ月後の阪神戦(ナゴヤ球場)では初回から打線の援護で3点のリードをもらい、リラックスして投球すると5回表まで無得点に抑えて勝ち投手の権利を得た。6回表を終えても阪神打線は1人の走者も出せない。中日ベンチ内がザワつき始めた7回表に先頭の桑野選手に中前打を許し大記録達成はならなかったが1安打完封で勝利した。お立ち台に上がってマイクを差し出された青山投手は本当に嬉しそうな顔で笑い、アナウンサーの質問に答えながらスタンドのファンに何度も手を振った。
以前の大泣きしたのを知っている中日ナインはまた泣き出すのかと思ったが今度はケロリとしている青山投手を見て一人前になったと感心したのだ。「ノーヒットノーランなんて考えてなかった。惜しかったとか残念とか思わなかった」と青山投手は照れ笑いしたが、周囲は残念がった。特に中山投手コーチは青山投手を手塩にかけて育ててきただけに自分の事のように悔しがった。中山コーチの指導でノーワインドアップ投法に変更したのが1ヶ月前。ブルペンで毎日100球以上の投げ込みを続けた。「実力はあるのにマウンドに上がるとそれが出せない。シーズ中としては異例の投げ込みをさせた」と中山コーチは明かす。
投球フォームが安定し制球が良くなると持ち前のグンとホップして伸びる速球が一段とスピードを増した。「投げてみたら阪神の打者の打球がみんな詰まっているのが分かった。ハハァ~ン、こりゃ僕の球が伸びてんだなぁと思いました。木俣さんのリードに全て任せて思い切りストレートを投げたのが良かったんだと思います」と1安打完封劇を振り返った。マウンドに上がってから自分の調子が分かるようになったのはそれだけ成長した証拠であろう。球のキレの良さは今や中日投手陣の中でもピカイチの存在である。
お客さん
「調子の上がっている時は何をやってもツイてるもんよ」とエース・星野投手の顔に笑いが止まらなかった。対阪神24回戦は日曜日のデーゲームだったが、折悪しく試合前から降り始めた小雨をついて強行するという雨中戦となった。しかし、そこは今シーズン " お客さん " にしている阪神相手だけに、毎回のようにピンチを招いてもビクともしなかった。中日が2点のリードで迎えた7回表に2本の安打と四球で一死満塁と同点もしくは逆転のピンチ。「どうも肩が張って調子は悪く潮時だな」と鈴木孝投手に後を託し降板した直後に豪雨となって試合はコールドゲームとなり16勝目をゲットした。
