一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『森林の崩壊-国土をめぐる負の連鎖』

2010-02-17 | 乱読日記
昨今のCSRや環境ブームで「わが社は木を植えています」と名乗る企業が増えていますが、実は日本の森林の蓄積量の増加は国内の木材需要量と同じくらいあるそうです。

ただそれは安心していられることではなく、間伐をされずに放置されている山が増えていること、そして国産材の切り出しの生産性が低くさらに流通経路が未成熟なために輸入材にか価格競争で負けているので完成材の出荷も頭打ちになっているからです。

そしてその原因には、補助金でがんじがらめになった林業の現場があります。補助金をいれてやっと収支がトントンになるという構造から補助金に依存する一方で、補助金制度はものすごく細分化され複雑化しており、林業の効率化や現場の安全に役立っていないといいます。
たとえば林道の整備率は国際的にも圧倒的に低い一方で、補助金で購入した外国製の高性能機械が雨ざらしになっている、自治体の担当者も法律や政令を理解して解釈運用し、報告書を作るので精いっぱいで現場の改善まで手が回らない、というような現状があります。

日本や外国の林業の現場に入って研究をする著者の話を聞きにきた林野庁の担当官が、話を聞き終えて「生々しいお話で」という感想を述べた、というエピソードがそれを象徴しています。

著者の話はさらに、国産材を生かした伝統的な建築の継承を阻む建築基準法の問題点などまで広がります。


現状への憤りが前面に出て筆が走っている部分もありますが、それも含めてほとんど取り上げられない、または表面的・情緒的にしか取り上げられない分野の問題提起としては重要だと思います。

こういう本を読むと、乱立気味の新書にも意味があるな、と思えます。



企業も「木を植える」だけでなく「森を維持する」ことがエコだ、という自覚が必要ですね。



コメント
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