一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

かんぽの宿の入札経緯

2009-02-11 | まつりごと

<2月11日 20:30 追記あり>

2月10日の日経新聞にかんぽの宿の入札経緯の記事が載っていました。ネットに出ていないので概要を書くと

購入希望者は27社。うち「趣意書」による審査で22社に絞って一次入札を実施。
しかし22社のうち15社が入札を見送り7社が応募。

残り7社が応募し、①譲渡の枠組みや価格②事業を発展させるための経営方針③取得後の従業員の扱い--の視点から審査。総合評価の高かったオリックス、ホテルマネージメントインターナショナル(HMI、神戸市)、住友不動産の3社が最終入札に進んだ。

その後住友不動産は不動産市況の悪化を受けて応募を断念、2社の争いとなる。

 最終入札は当初、「かんぽの宿」事業の70施設、東京都内のスポーツ施設「世田谷レクセンター」、首都圏の社宅9ヵ所の計80施設を対象に実施した。入札の結果、レクセンターは簿価を大幅に下回る評価しか得られなかった。このため、日本郵政は、①レクセンターを譲渡対象からはずす②それ以外の施設の譲渡価格も引き上げる--ことを二社に申し入れて入札をやり直した。
 オリックスは、再入札ではレクセンターを除く事業の評価を18億円上積みし、購入希望価格を108億8600万円と提示した。HMIは再入札に応じず、当初の提示価格61億4600万円(レクセンターを除く)を動かさなかった。・・・(中略)・・・結果的に両者の提示価格には50億円近い差がつき、オリックスへの譲渡が決まった。

これが事実だとすると、そもそも売却自体や想定価格が適切でない、というならともかく、入札自体には不正なところはないように見えます。
また、傍から見ると、オリックスは会長の意向を尊重してどうしても落札しようとして、日本郵政側の「最後の一声」に乗せられてしまったようにも思えます。

鳩山総務相は最終入札で条件を変更し、それに応じたのがオリックスだけだったことを問題視している。9日の予算委員会では「金額の提示が2者そろわないと入札とはいえない」と手続きへの懸念を表明した。

最終入札で条件を変更されて上積みを求められたオリックスやHMIが文句を言うならともかく、HMIは上積みのチャンスがあってもできなかったのですから、結局出来るだけ高値で売却する、という目的は達成したように思います。
HMIとオリックスが裏で手を握っていたとか日本郵政も含めた3者の出来レースだったというなら別ですが、鳩山総務相の主張はよくわかりません。

この市況下ではオリックスも高値掴みした、と内心では後悔しているとしたら、鳩山総務相の動きこそオリックスに味方しているようにも思うのですが・・・

<追記>
今日の朝日新聞によると、最終入札ではずしたレクセンターの評価額がオリックス23億6千万円に対しHMI43億5千万円だったそうです。そうなると、玉石混交のポートフォリオの中の「玉」だと思っていたレクセンターがはずれたことでHMIの入札意欲がそがれた可能性があります。そうすると上の鳩山大臣の発言も(引用している部分はいまひとつですが)的を得ているかもしれません。
入札手続きに不正があれば正すべきだは当然だと思います。

ただし、事業としては必要ないものであれば「地元優先で売却」というような「政策的配慮」はかえって全加入者のためにならないのではないかとは依然として思っているので、以下はもとの文章に戻ります)
<追記終わり>


それでもそもそも資産評価額が適切でないので売却自体がいけない、という主張もされています。
もし「適切な資産評価額」(それは今回の売却価格より高いということになります)まで減損したらかんぽの宿の運営は黒字化するとか、数年まって市況が回復すればその期間の運営赤字分を補う売却価格で売れる、というような事情があれば現時点での売却は適切でない、とも言えますが、その辺の分析がなく手続きがおかしい、という主張には無理があると思います。


そもそも簡保事業は保険事業だったわけで、旅館・ホテル業をやる必要はなかったはずです。たぶん「加入者の健康の増進に」などという名目で建てられたのでしょうが、それは保険事業の目的からは大きくはずれているように思います。
自分の加入している保険会社がホテル経営をやって赤字を出したら「保険料下げろ」と文句を言うと思います。損害保険会社ですが、先のバブルのときはゴッホの「ひまわり」を購入して批判された(あきれられた?)会社もありました(そういえばこの会社はその後グループの生命保険会社に「○○ひまわり生命」と懲りない名前をつけていますね。)。
簡易保険事業はより公益性があるので加入者の福利のために周辺事業を行うことが正当化されるとしても、過疎地域などへの健康診断の巡回事業とか健康を増進し直接保険金の支払減につながるような事業に限るべきではないでしょうか(ひょっとしたらやってりるのかもしれませんが。)。

郵政民営化になって、「かんぽの宿」事業は「かんぽ生命」から切り離され親会社の日本郵政の所管となり、将来的に継続する計画がないので順次売却するという方針の中で今回日本郵政が入札を行ったわけで、そもそもその方針がおかしい、というのでなければ、今回の売却自体は特段問題はないように思うのですが。

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かんぽの宿 今度はアドバイザー報酬に飛び火

2009-02-11 | まつりごと

「かんぽの宿」、メリルの成功報酬は6億円 総務相
(2009年2月10日 21:39 日本経済新聞)

宿泊・保養施設「かんぽの宿」の譲渡を巡り、鳩山邦夫総務相は10日の参院総務委員会で、日本郵政がメリルリンチ日本証券と結んだアドバイザー契約の成功報酬が6億円であることを明かした。オリックスへの譲渡が凍結されたので実際は支払っていない。日本郵政は当初の売却予定資産の簿価(約200億円)の約3%で「通常の相場水準」と話している。  

最終的には、簿価62億円の「世田谷レクセンター」が売却対象から外れた。このため、仮に譲渡が成立した場合でも、支払われる成功報酬は2億円程度減額される見通しだという。鳩山総務相は日本郵政にかつて質問した際には答えがなく、最近ようやく回答があったとして「どこまで隠そうとするのかという疑念がわく」と話した。

自分の資産を他人の手を借りなければ売れないような奴はそもそも安く買い叩かれたなどと文句を言う資格はないのではないか、と思ってしまうので、この記事の含意には賛成しかねます。
世間知らずの日本郵政の仕事を手取り足取り手伝ったら「こんな未通女(おぼこ)い会社をだますとはけしからん」と言われたようなものです。

確かに報酬の水準としては高いと思いますし、いいようにやられた感はあるのですが、それは実力差があった(役人のレベルが低かった)ので仕方のないことなのではないでしょうか。
納税者としては「エージェント」である郵政が無能である」というリスクを負っているわけで、安く売られたとしたら誰の判断が間違っていたか、それが法的責任の追及が可能なレベルかというあたりを事後的に検証するしかないと割り切らないといけないのではないかと思います。


PS
入札の経過については昨日(2/10)の日経新聞に詳しく載っていたので、つぎのエントリでそれについてコメントしたいと思います。

 

コメント (1)
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