一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

擬態うつ病

2008-01-21 | よしなしごと

医学都市伝説のエントリー「うつ病本三冊」から。

最近新聞か雑誌で「擬態うつ病」について見かけた記憶があるのですが、火付け役になった精神科医林公一氏の『擬態うつ病』その他2冊の書評です。

私はこの本は未読なのですが、最近(効果の高いはずの)抗うつ剤が効かずなかなか治療しない「うつ」症状の患者が増えていることを、著者は本当のうつ病でなくうつ病に成りすましている「擬態うつ病」と分類できるのではないか、と主張しているようです。

医学都市伝説のwebmaster氏も精神科医と推測されるのですが、

多分一種のレトリックなのだろうと思うが、そこで林医師が主張するのは、単純化するなら「治らないうつ病」はその多くが「擬態うつ病」であって、正常の悲哀反応や気分変調の持ち主が、氾濫する医療情報を逆手にとって、うつ病という逃げ込みやすいアジールに安住しようとしているだけだ、というのである。

林医師が「擬態うつ病」としているのは、古典的診断では「抑うつ神経症」とか「神経症性うつ病」、中には「抑うつ性人格障害」などを主に含むものだと思われるが、明らかな詐病ならいざ知らず(中にはホントにあるけれど)、治る病気だけ診ていればいいというのは、ちょっと違うような気がする。本気でそう言っているわけではないのだろうが、それ以外に受け取りようがない。

と切って捨てています。

精神科医療というのは素人も聞きかじりの知識で物を言いやすいという点があるので、専門家である医師が(素人ウケを狙って)学問的根拠の乏しいことを言うのはよろしくない、医師として新たな病気や症候群を分類するのであれば、きちんとした定義が必要であり、ひとつの仮説であるなら、素人向けに大々的にアピールすることは誤解を生むことになる、とwebmaster氏は言いたいのではないかと思います。

確かにトラブルの渦中にある某有名人の主治医など、ただでさえ(素人目には)胡散臭そうな精神科医もいますよね。

同書のamazonのカスタマーレビューでもセンセーショナルに言い立てていることについては多くの批判がされていますが、評価はけっこう高い点がついています。


この議論で気になるのが、職場などでのメンタルヘルスが重視される中で注目されてきたうつ病やうつ症状の人が、「擬態うつ病」の名の下に「甘えてる」云々と手のひらを返したように批判されることになりはしないだろうか、ということです。

このへん、「格差」や「自己責任」をめぐる議論と似たような危さを感じます。


コメント (1)
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