「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

境界性パーソナリティ障害の長期経過

2013年09月15日 20時08分04秒 | 「BPD最新ガイド」より
 
 BPDの人の長期的な転帰や、 どの人が改善するのか、 またはしないのかについて、

 ほとんど分かっていません。

 統合失調症や双極性障害は、 長期経過を検証した研究が 多数ありますが、

 BPDの経過を追った研究は ごくわずかです。

 後方視的 (回顧的) 研究 〔*注1〕 では、

 BPDの経過が 非常に変化しやすいことが分かりました。

〔*注1: 診療記録によって 対象患者を特定し、

 現在の時点から 過去を振り返って、 その診断に関係する事項を 調べていく研究〕

 患者によっては 職場や社会的状況で うまく機能できますが、

 苦しみの続く人もいます。

 3%から10%の人が 自殺によって亡くなっています。

 前方視的研究 〔*注2〕 は ふたつ行なわれています。

〔*注2: 時間の経過とともに、 被験者の集団を 観察していく研究〕

 マクリーン病院成人発達研究では、 BPDの症状の改善は 一般的に見られものの、

 感情症状は衝動性と比べると 軽減のスピードが緩やかでした。

 一方、 パーソナリティ障害経過共同研究では、

 BPD患者で比較的早く 改善が訪れていることが分かりました。

 1年後の追跡調査で、

 患者の半数以上が BPDの診断基準を満たさなくなっていました。

 これらの研究からは、

 BPDの人とその家族にとって、 従来より肯定的な見通しが 明らかになっています。

 研究が重ねられれば、 改善の要因が明らかにされ、

 回復の新たな希望が 見えてくるでしょう。

〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より