BPDの人の長期的な転帰や、 どの人が改善するのか、 またはしないのかについて、
ほとんど分かっていません。
統合失調症や双極性障害は、 長期経過を検証した研究が 多数ありますが、
BPDの経過を追った研究は ごくわずかです。
後方視的 (回顧的) 研究 〔*注1〕 では、
BPDの経過が 非常に変化しやすいことが分かりました。
〔*注1: 診療記録によって 対象患者を特定し、
現在の時点から 過去を振り返って、 その診断に関係する事項を 調べていく研究〕
患者によっては 職場や社会的状況で うまく機能できますが、
苦しみの続く人もいます。
3%から10%の人が 自殺によって亡くなっています。
前方視的研究 〔*注2〕 は ふたつ行なわれています。
〔*注2: 時間の経過とともに、 被験者の集団を 観察していく研究〕
マクリーン病院成人発達研究では、 BPDの症状の改善は 一般的に見られものの、
感情症状は衝動性と比べると 軽減のスピードが緩やかでした。
一方、 パーソナリティ障害経過共同研究では、
BPD患者で比較的早く 改善が訪れていることが分かりました。
1年後の追跡調査で、
患者の半数以上が BPDの診断基準を満たさなくなっていました。
これらの研究からは、
BPDの人とその家族にとって、 従来より肯定的な見通しが 明らかになっています。
研究が重ねられれば、 改善の要因が明らかにされ、
回復の新たな希望が 見えてくるでしょう。
〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より
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