パーソナリティ障害は、 生物学的要因と生育環境的要因の相互作用で、
知覚, 認知, 感情, 行動に異常が生じる 複雑な症候群です。
学習による側面を 性格特性と呼び、 先天的な側面を 気質と呼びます。
パーソナリティの成り立ちは、
「生まれか育ちか」 という対立で 論議されがちですが、
全て発達の過程と 密接に関連しています。
例えば、 衝動的・ 攻撃的な気質の子供は、
回避的・ 恥ずかしがり屋の子供とは 異なる方法で世界と関わり、
周囲に対する 態度や対人関係を形成していくでしょう。
幼い頃に 虐待を経験すると、 脳の神経内分泌系に変化が生じ、
成人期にも持続します。
海馬や扁桃体が小さくなり、 セロトニン機能も低下します。
海馬は記憶, 扁桃体は感情 (特に怒り) の 制御に重要です。
セロトニン系は感情, 衝動, 行動の 制御に関わっています。
○ 脳の機能に 神経伝達物質が果たす役割
神経伝達物質は 世界ついての見方や考え方,
感情体験や その表現, 行動を制御します。
神経回路のバランスが 先天的, 後天的に失われると、
適応不全となるかもしれません。
これは 薬物に敏感に反応すると 考えられています。
BPDは パーソナリティ特性と行動の組み合わせによる 症候群です。
単一の病因を 指定できる疾患ではありません。
衝動性と感情統制不全が中心的な 生物学的要素が特徴です。
神経伝達物質の異常による、 思考や知覚の 軽度の障害が見られることがあります。
BPDは症候群なので、 薬物療法は それぞれの精神症状に対して、
多くの薬剤が必要となることがあります。
〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より