「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

認知-知覚症状に対する 薬物療法

2013年09月07日 21時42分43秒 | 「BPD最新ガイド」より
 
 BPDの薬物療法は、 

(1) 認知-知覚的症状, (2) 感情統制不全, (3) 衝動的行動に

 効果がありますが、 心理社会的治療のなかで 補助的なものです。

 性急に多くの薬を導入すると、 相互作用や副作用の危険が増します。

 BPDの薬の効果は 中程度のものであり、 人の性格を変えるものではありません。

 認知-知覚症状には、 妄想的観念, 離人感, 脱現実感, 奇妙な信念など、

 知覚や思考の異常が含まれます。

 神経伝達物質のドーパミンは、 軽度の思考障害や、

 興奮, 焦燥感, 怒りに 関係すると考えられています。

 抗精神病薬 (ドーパミン阻害薬) は、

 これらの症状に 最初に使用されるべきものです。

〈抗精神病薬〉

 認知-知覚症状や、 それに伴う怒り, 焦燥感, 敵意に対して 最も効果的です。

 数時間から数日で 効果が出始めるので、

 怒りや攻撃性に対して、 危機の時期にのみ 使用することがあります。

副作用

 筋肉のこわばりや 足を引きずるような症状,

 じっとしていられなくなることや、 四肢の震えが挙げられます。

 ハロペリドールやチオチキセンといった 力価の高い薬で多く起こります。

〈非定型抗精神病薬〉

 副作用が小さく、 低用量なら受け入れやすいもので、

 オランザピンとリスペリドンは BPDへの効果が研究されています。

 オランザピンは 体重の増加や 軽い鎮静の副作用があり、

 高容量のリスペリドンは 抗精神病薬の筋肉症状と同じ 副作用の可能性があります。

 最も効き目が強い クロザピンは、 思考や知覚の重度の混乱を 改善させ、

 衝動的な行動に 効き目があることがあります。

 稀ですが、 白血球の減少で 生命に危険を及ぼすことがあるため、

 最期の手段とみなされています。

副作用

 旧来の抗精神病薬を長期間使用すると、

 遅発性ジスキネジアという 神経的障害が発生することがあります。

 非定型抗精神病薬は これを起こさないと考えられています。

 抗精神病薬は 数週間から数ヶ月の期間のみ 使用するのが一般的です。

〔「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」星和書店(林直樹訳)〕より