「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

家族の視点 -- ある母親の経験 (1)

2013年09月21日 21時09分26秒 | 「BPD最新ガイド」より
 
 学校の先生は、 発達上の問題についての知識は ごくわずかです。

 成長すれば治るという 神話が広がっています。

 BPDへの関心は深まりつつありますが、 実際に話をする人は誰もいません。

 ある種の秘密であるかのようです。

 BPDに苦しむ家族の 物語を紹介しましょう。

                   *

 娘は美しく、 すらりとした女性に成長しました。

 成績優秀で、 絵の才能がありました。

 しかし 彼女は自分のことを よそ者と捉えていました。

 彼女は自分の状態や、 何が起こっているのか、

 何の手がかりもないと 感じていました。

 私にはそれが なかなか理解できませんでした。

 BPDと診断されのは 20代の初めでしたが、

 それまで理解しがたかった症状に 説明ができるようになって、 安心しました。

 彼女は 摂食障害や過食症の症状を 示していましたが、

 自分の食生活について 嘘をつき、 標準体重スレスレに留めていたので、

 医師や私は まんまと騙されていました。

 薬物とアルコールの問題も生じました。

 にも拘らず、 娘は名門大学に入学しました。

 私は、 すでに病気が彼女を 蝕んでいることに思い至りませんでした。

 彼女が絵をやめてしまった時、 良くないことが起きていると気付くべきでしたが、

 勉強のために時間が必要と 彼女が言い張ったので、 安心してしまったのです。

 2年生になったとき、 娘は大学をやめて 自宅に帰ってきましたが、

 身長1m68, 体重39㎏でした。

 娘は助けを求めるのを ためらっていました。

 私と夫は、 良くないことに気付いていましたが、 なおも否認していたのです。

 優秀な娘が、 ごく普通の活動に対応できず、 自己破壊的な行動に走るなんて、

 どうしてあり得るでしょう? 

〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より

(次の記事に続く)
 
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