「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

破壊的衝動性 (2) (未熟な防御規制)

2008年04月19日 22時57分11秒 | 「BPDを生きる七つの物語」より
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/53824253.html からの続き)

 BPDの人は フラストレーションに対して、

 未成熟な防御規制で 反応してしまいます。

 防御規制には 次のようなものがあります。

○行動化

 不愉快な感情に対処するため、自己破壊的な行為に出ます。

 飲酒やセックスなどがあります。

○退行

 ストレスを感じると、子供っぽい振る舞いをします。

○抑制と回避

 初対面の人に 不安を感じると、引っ込み思案になり、関係を避けます。

○受動的攻撃性

 怒りをカモフラージュして 間接的に示します。

 わざと遅刻したり、約束を忘れたことにして、仕返しをしたりします。

○分裂

 スプリッティングを起こして、全て悪いと決めつけ、関係を切ってしまいます。

○投影と投影性同一視

 自分の行動を 人のせいにします。
 

 以上のような 防御規制に対して、成熟した対処方法があります。

○抑圧

 不快なことを 意識的選択的に避けます。

 スカーレット・オハラのように、「明日のことは 明日考える」

○昇華

 不快な感情を 受け入れられる方向に変えます。

 激しいスポーツや エクササイズによって、怒りを発散します。

○ユーモア

 ユーモアには広い視野や、冷静な距離感が必要です。

 また、良い友人を 持つことも大切です。

 健全な人たちの中にいるほど、破壊的衝動に抵抗しやすくなります。
 

破壊的衝動性 (1)

2008年04月19日 00時07分18秒 | 「BPDを生きる七つの物語」より
 
 衝動性は BPDの中核的な 要素のひとつです。

 問題なのは、衝動行動が 自己破壊的な行動に 至ってしまうことです。

 拒食や過食,薬物乱用,あるいは、

 性的逸脱,ギャンブル,浪費などが それに当たります。

(心子の場合は、摂食障害と服薬がありましたが、

 残りの3つは ありませんでした。)

 BPDの自己破壊的衝動性は、他の精神疾患のそれと 異なるところがあります。

 自閉症の子の衝動性は、自分の内部から 起こってくるもので、

 外の世界には 関心がありません。

 ADHDの子供は、プレッシャーに対処できず、

 それによって フラストレーションを感じ、衝動的になってしまいます。

 それに対して BPDの衝動性は、近しい人への 失望の反応です。

 対人関係での 欲求不満の現れとして、感情を爆発させてしまうのです。
 

 幼少期のトラウマが、成人の衝動性をもたらす という仮説もあります。

 ある研究で BPD患者を、幼児期に虐待を受けた虐待群と 非虐待群に分けて、

 セロトニン 〔*注〕 への 反応を調べました。

〔*注: 情動に深く関連し、脳内のセロトニンが低下すると

 衝動的,攻撃的行動に 影響があります。〕

 その結果、虐待群は明らかに セロトニンへの反応が 低下していたといいます。

 また、社会的な影響も 考えられます。

 伝統や 地域社会との繋がりが 薄れたために、

 衝動性に対して 社会的抑制が弱まり、歯止めが効かなくなります。

 なお、診断基準の中で衝動性は、BPDが寛解したかを 見極める指標ともなります。

 年齢の高いBPD患者は 若い患者に比べて、衝動性を示すことが少なくなり、

 これが BPDの人が時を経て 「成熟を遂げる」 ことの 原理かもしれません。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/53838413.html
 
〔 「BPDを生きる七つの物語」 (星和書店) より 〕