「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「北極のナヌー」

2007年10月27日 21時00分09秒 | 映画
 
 北極を舞台に、シロクマ・ナヌーの誕生,成長を描いた ドキュメンタリーです。

 構想から10年の 歳月を費やして、この映画を制作したのは、

海洋研究家の アダム・ラベッチと、

北極のドキュメント映像を 数多く手がけている サラ・ロバートソン。

 日本版のナレーションは 稲垣吾朗が務めています。

 ナヌーを撮影しながら ストーリーを構成し、

ストーリーに必要な 映像を求めて 動物を追い、

思いがけなく得られた 映像を元に 新たなストーリーが紡がれていく。

 自然の光景は 神秘的で美しく、動物たちは 可愛くもパワフルです。

 折しも、世界的に 地球温暖化が叫ばれ、北極の氷が解けていく 現実を前にして、

それが作品の メインテーマになっていきました。

 氷が減ると、氷の巣穴に入る アザラシがいなくなり、

シロクマの食料が なくなってしまうのです。

 動物たちは 氷を求めて彷徨し、何百キロも泳いで 海を渡り、

彼らの生存環境は 変動を余儀なくされます。

 ナヌーたちは 死活に関わる 窮地に追い込まれますが、

それでも 必死で生きていきます。

 しかしながら、苦境に立ち向かっているのは、動物だけではありません。

 氷点下50度に達する 極寒の中で、合計800時間に及ぶ フィルムを回し、

予測不能の 動物たちの生態を 捉え続けた作業は、

想像を絶する 困難の連続だったでしょう。

 宿泊所も電気もなく、食料や水も自給自足、ブリザードに見舞われ、

深夜シロクマに テントを襲われたこともあるといいます。

 水中撮影では、アザラシの息継ぎ用の穴から 海中に入り、

氷点下の海水の中で 40分も作業をますが、

穴を見失ったら 生きて戻ることはできません。

 まさしく命懸けの 仕事だったと思います。

 世界で初めて、水中で セイウチの親子の愛情を映したり、

シロクマはセイウチを襲わない という定説を覆す 映像を収めたりもしました。

 不眠不休のぶっ通しで 観たとしても、1ヶ月以上かかる計算の 膨大なフィルムを、

84分の作品にまとめた 編集作業も気が遠くなります。

 スタッフの 艱難辛苦の創作に、心から敬意を表する次第です。