「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「オリオン座からの招待状」 (1)

2007年10月23日 23時54分20秒 | 映画
 
 浅田次郎・原作、三枝健起・監督作品。

 名女優になりつつある 宮沢りえと、

地味ながら 大きな存在感を感じさせる 加瀬亮の主演です。

 昭和三十年代、京都の一角。

 松蔵 (宇崎竜童) と 妻のトヨ (宮沢) が、

映画館 オリオン座を営んでいます。

 そこへ流れ着いた、身寄りのない 留吉 (加瀬)。

 写真 (映画) が好きなので 雇ってくれと、頼み込みます。

 最初は すぐに出て行くと 思われていましたが、

やがて 夫婦の信頼を 得ていきました。

 けれども 松蔵が病に倒れ、オリオン座を 閉める瀬戸際に……。

 公園のベンチに座って、語り合う トヨと留吉。

 留吉は、自分が先代の遺志を受け継ぐ と訴えます。

 日本映画では、わざとらしすぎる 溜めの 「間」 を作って、

観ていてイライラしたり、退屈したりすることが ままあるのですが、

この映画では 長い間も それを感じさせません。

 無言の時間でも、二人の心の間に 深い感情が流れていれば、

心ときめく 高揚感が伝わってきます。

 ベンチに座る二人の 距離と角度は、二人の心の 間と向きを、

絶妙に現しているように 思えました。

 オリオン座は 二人の手で再開されます。

 しかし、テレビの登場や 映画産業の斜陽。

 また、口さがない住民に、先代の女房を 寝取った雇い人,不貞な女将

という陰口を叩かれ、映画館には すっかり閑古鳥が 鳴くようになってしまいます。

 自分のために オリオン座がダメになった と悩む留吉。

 客のいない観客席に、少し離れて座る トヨと留吉を、

カメラは真正面から じっと映し続けます。

 何の てらった演出もありませんが、緊張感が伝わってくるシーンです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/50857808.html