「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「包帯クラブ」

2007年10月18日 16時55分36秒 | 映画
 
 「永遠の仔」の 天童荒太の原作を元に、

堤幸彦監督が 再び話題作を送り出しました。

 主演は、カンヌ 最年少男優賞の 柳楽優弥 (ディノ) と、

石原さとみ (ワラ)。

 女子高生ワラは、奇妙な少年 ディノと出会います。

 ワラが傷ついた 想い出のある場所に、

ディノは 包帯を巻いて 傷を手当てしてやろうとします。

 それが何故か ワラの心を癒すような気がしました。

 ワラの友達・タンシオ (貫地谷しほり) たちは、

インターネットを利用して それを皆に広めようと、

「包帯クラブ」 というサイトを作ります。

 傷ついた体験を ネットで受け付け、その出来事があった場所に 包帯を巻きに行く。

 その手当てをした風景を デジカメに撮り、投稿者のアドレスに送る、という活動です。

「巻きます。効きます。人によります。」

 という キャッチコピーは傑作です。

 クラブのメンバー、ディノ,ワラ,タンシオ,ギモ,リスキたちは、

それぞれ自分の悩みや 傷を抱えています。

 活動を進めるなかで 彼らは、人の痛みに 共感しようとする努力をし、

どうしたら傷を癒せるか 一生懸命考えます。

 そうしていくうちに、自らの傷にも 向かい合わざるを得なくなっていきます。

 空中分解の危機にも直面し、やがて 壊れた友情を 回復していきました。

 ディノは、表向きは 奇行を重ねる 風変わりな少年ですが、

胸の奥に 癒しがたいトラウマを秘めています。

 そして最後は その無残な傷に立ち向かい、乗り越えていくのでした。
 

 トリッキーなコメディから、人生を真正面から 見つめる作品まで、

才能を遺憾なく発揮している 堤監督ですが、また新たな世界を 見せてくれました。

 思春期の そこはかとない心情も 見事に描いています。

 奇抜なカメラアングルは ありませんでしたが、

堤監督らしいカメラワークは 随所に見られました。

 柳楽優弥は、「誰も知らない」 では ドキュメントタッチの作品で、

その強い視線だけが 印象的でした。

 「星になった少年」 では 演出のつたなさで、

見るべきものが 感じられませんでした。

 しかし今回、堤監督の手によって 一皮むけ、

ダイナミックな魅力を 披露したのではないかと思います。