「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

心子と両親

2006年02月16日 22時37分13秒 | 心子、もろもろ
 
 母親はそんな心子を、放っておいても大丈夫な子だと思いました。

 その代わり、一才年上の兄には何かと世話を焼いたそうです。

 心子の目にはひいきに見えたことでしょう。


 逆に父親は、跡継ぎとしての兄の才覚に見切りを付けていました。

 父親は兄には手ひどい暴力を振るいました。

 顔面を殴り、鼻血がしぶきのように飛び散ったといいます。


 父親は心子には完璧を課しました。

 心子をあまり学校へはやらせず、家や実地で勉強させましたが、学校の試験は満点を取らなければ承知しませんでした。

 99点だと目の前で答案用紙を破り捨てました。

 それは零点と同じなのです。

 100かゼロかという心子の性質は、或いはこんなところからも植えつけられたのかもしれません。


 心子は父親の愛情を得るため、完全な良い子である自分を無意識に作り出したのではないでしょうか。

 常に100%でなければ父に褒められない,自身の存在意義が見つけられないため、目的に向かって馬車馬のように頑張ってしまいます。

 でも、それはそもそもの自然な自分の姿ではあり得ません。

 人生の一時期を“仮の自分”を装うことで切り抜けたとしても、いつしか何らかの壁にぶつかったとき、意識下に抑圧していた矛盾は噴き出してくるのです。

(続く)