蛾遊庵徒然草

おこがましくもかの兼好法師にならい、暇にまかせて日頃感じたよしなし事を何方様かのお目に止まればと書きしるしました。

「ロシア 新“罪と罰”~追跡 警察と司法の腐敗~」を視る。何と恐ろしい国だ!

2007-01-28 13:16:39 | 時事所感
1月27日(土)晴れ。暖。

  朝、何気にTVのチャンネルを回していたら、面白そうな番組にであった。

 BS1,10時10分から55分まで。BS世界のドキュメンタリー「ロシア 新“罪と罰”~追跡 警察と司法の腐敗~」である。

 NHKの番組紹介によれば、『ロシアでは、警察や司法機関の腐敗によって犯罪組織が野放しにされる一方で、ささいな罪を犯した一般市民が重い禁固刑を科せられている。番組は、食料品を盗んだ罪で5年8か月服役した女性が、刑期を終えて直面する厳しい現実を追う。』とあった。

  画面は、冬の殺風景な刑務所の鉄の扉が開くところから始まった。獄舎の前庭らしきところに無秩序に様々な格好の女囚が立ち並ばされて、看守から点呼を受けていた。囚人服がないのか、私服のようである。その一事から見ても、なかでの取り扱いのひどさが想像されるようだった。

  そして一人の50過ぎに見える女性が、アップで映し出された。彼女は、5、6個の缶詰か何かを盗んで5年8ヶ月の刑を終え、今、外へ出されるのだ。大きな安っぽいスーツケース二つを両手にさげて刑務所の外に出される。一面の雪野原である。バス停まで歩く。しかし彼女は一文なしだという。刑務所で8時間働いて受け取る報奨金は全部食料費に消えてしまったのだ。

 それでも通りかかった農婦が自分の馬が引く荷車に乗せてくれた。途中で降りてそこから2キロの雪道を歩いて漸く我が家にたどり着く。何年も空き家となっていた家には、誰かが家具を持ち出し、がらんどうの物置同然である。しかも何者かが居ついて暮らしていたらしく酒瓶やたばこの吸殻がちらかっている。呆然とする彼女。どうやって暮らしていくのだろうか。そこで画面は変わった。

  モスクワ市街の路傍にたむろする男たち、二人一組の警官が巡回してくる。警官は男たちに居住登録書の提示を求める。モスクワでは地方からやってくる人は、これをもっていないと、滞在することができないことになっているとか。携帯していないと直ちに連行されるのだ。ところが100ルーブル(約400円)の賄賂を渡すと見逃してくれるという。
  モスクワ市警の警察官の給料は、5000ルーブル、1万ルーブルないと普通に暮らしていけないそうだ。だから賄賂は生活費の一部というわけである。

  警察官の勤務時間は、12時間、残業代はなし。二人一組で10人の犯罪者を捕まえてくるのがノルマ。
 このきつい勤務のために、彼らは少しでも条件のいい仕事があれば辞めていくそうだ。残るのは、ますます悪い警察官ということになるのだ。

  この、ノルマがあるため、かたっぱしからどんな微罪でもでっちあげて捕まえていくとか。
 17歳の少年が、コーラ7本盗んで有罪。日本の家庭裁判所の裁判官が聞いたら憤死しかねないのではなかろうか。検挙件数をあげるため女性、青少年、貧しい人がターゲットにされるそうだ。こうして10万人の女性が刑務所に入れられているという。
  悪名高いスターリン時代でさえも、起訴されて無罪となるものが10%もあったのに、現在は0.8%だという。
  しかも、裁判では、検事が弁護士を買収して、被告の有利になるような弁護をしないとか。

  袋の底に拳銃や弾薬を隠し、その上に雑貨を入れた袋を、街角のホームレスに、「これちょっと、見ててくれ」と言い置いて、自分は立ち去り、別の警官が来て、そのホームレスを職務質問して調べ、武器所持で逮捕する。
  拘置所では巧妙に拷問が行われ、自白を強要する。
  
  新聞にはマフィアの大物を武器所持で逮捕したとでかでかとのる。仕掛けた警官たちはそれで出世していく。

  真面目な検察官が3年も内偵を進めて、家具の密貿易を大々的にやっていたブローカー一味を逮捕し裁判にかけようとする。密貿易者は、治安機関の上層部に賄賂を渡し、逆に当の検察官を職権乱用で逮捕、裁判にかけ免職にしてしまう。

  裁判官にも上から圧力がかかる。抵抗すれば、左遷か免職。そうして免職させられた元裁判官が、復職のための裁判を起こしても、その裁判をするのは元の同僚たちなのだ。
  今のロシアの裁判の判断基準は、金と権力だそうだ。  

  そしてロシアの治安機関は金(賄賂)次第でどうにでもなるという。っその治安機関の長の夫は、プーチン大統領の側近だという。今のロシアでマフィアや、高級官僚はまず刑務所に入ることはないそうだ。金を渡して済ますからである。
  そんな中で、全国の治安機関幹部を集めて、自白に頼ってはいけないというような奇麗事の演説をするプーチン大統領の何としらじらしくみえることか。

  最後に、画面は冒頭の女性に戻り、自分の服役中に、農場主の子豚を二頭盗んだだけで4年の刑期に服している夫の面会にでかけるところを写した。
月3000円足らずの年金を受給するために、何度も役所に足を運ぶ彼女。
  しかし、ロシアでも前科者には冷たい。近所の畑で野菜がなくなると、彼女に疑いがかかる。そんな生活の中で、漸く近所で工面した僅かなお金でささやかな差し入れを用意して、夫に会いに行く。皺だらけの初老の無表情の夫。
  彼とは、再婚だという。暴力を振るわないのがいい、出所したら、二人で野菜を作り、子豚を飼うのが夢だと語った。
  その声の先を、妻との面会を終えた夫が、鉄条網に囲われた中庭を獄舎の方へと立ち去った。

  驚いた。我が国では考えられないような、無法が白昼堂々と、まかりとおっているらしい。それにしても、反面、このような自国の恥部とも言うべき実態を、ロシア政府はよく撮らしたものである。
  そのいきさつもドラマとなるのではないだろうか。

  とは言え、外国が撮った一本のドキュメンタリーを見ただけで、こうなんだと決め付けるのは、問題だろう。
  
  しかし、過日、プーチン政権に批判的な元諜報機関関係者を放射線物質を使って殺害するなんて事件を聞けば、さもありなんとも思わされる。

  こんな国家であればこそ、先般の日本漁船員をいきなり射殺してしまうようなことを平気でするわけだろうか。
  こんな政権を相手に、北方領土返還交渉なんて、とてもまともにできる相手ではないとさえ思えてくる。

■追記:上記、元諜報機関関係者の殺害事件について、下記記事が出ていた。

 『ロシアが国家的関与=元情報員暗殺で英当局-米TV
1月27日23時0分配信 時事通信

 ロシアの情報機関、連邦保安局(FSB)の元スパイ、アレクサンドル・リトビネンコ氏が放射性物質ポロニウム210を盛られ、ロンドンで暗殺された事件について、米ABCテレビ(電子版)は27日までに、FSBが中心となって起こし、ロシア政府が国家的に関与していたと報じた。
 同テレビによると、英当局がこれまでの捜査から、このような結論に達した。FSBは、リトビネンコ氏に毒物を複数回盛らざるを得なくなったため、暗殺作戦はしくじったとみているという。また、ロシア当局は当初、暗殺に用いた毒物が何であるかが発覚することはないと予測していたと英当局は分析している。』 


    

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2 コメント

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恐ろしい話です。 (さくら)
2007-01-28 15:06:15
ロシアは政府に反対するジャーナリストを何十人も暗殺している模様、とある番組で見ました。

でも一般市民にもこれだけの苦難が降りかかっているとは知りませんでした。

盗みはもちろん悪いに決まっていますが、貧しい為そうしないと生きていけない人が多いのでしょう。
「10万人の女性が刑務所に入れられているという。」には本当に驚きました。

お金が全て、賄賂でどうにでもなる・・北朝鮮とまた少し違った感じですが恐ろしい国ですね。
警察官の現状にも絶句でした。

「このような自国の恥部とも言うべき実態を、ロシア政府はよく撮らしたものである。」にはわたしもそう思います。

想像ですが、これも「お金」で撮らせてもらえた?のかも知れませんね。






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早速にコメントありがとうございました。 (蛾遊庵徒然草)
2007-01-28 16:26:06
さくら様、早速にコメントありがとうございました。<想像ですが、これも「お金」で撮らせてもらえた?のかも知れませんね。>とのこと。面白い見方ですね。たぶんそういうことでしょうね。
 犯罪や裁判でさえもお金次第で同にでもなる国とか、自分の恥もお金にかえるのでしょうかね。

 こんな国に比べれば、なんだかんだと言いつつも、美しいかどうかはともかく、先ずはオマワリさんを怖がらずにうろうろできるこの国に暮らせることは、幸せというべきではないでしょうか。

 この山里では、警察官の姿など、畑を荒らしにくる猿ほどにも、見かけることはありません。(笑)
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