2月3日(日)終日、雪降る。
「ねー、犬飼ってもいいでしょう?」と、先日、出先から戻って居間に入った私をみるなり、家人が突然告げた。
「また急に、どうして?」と訊く。
「役場で捨て犬を預かっているんだって。明日までに飼い主が現れなければ、希望者にくれるんだって」とのこと。
この山里に暮らすようになって、犬を飼う飼わないは、お互いの間で何度かやりとりがあった。赤松林の中の一軒屋に近い我が家。犬がいれば心強いことは確かである。
だが、排泄の始末、朝夕の運動、家を空けたときの餌やりの心配。
これから私たち自身が、どれだけの期間、人を頼らずに暮らしていけるか。それとおっかけっこをするような飼い犬の寿命等々を考えると、つい二の足を踏んでしまうのだ。
しかし、これまで家人に対して何でも我意を通してきた勝手さ加減が、この頃少々すまなく思われてきた。
そこで、「どんな犬か取り合えず見に行こう」ということになった。
軽トラで役場の裏庭に駆けつけてみると、隅に一坪ほどの頑丈な屋根つきの檻が置いてある。中を覗くと、その片隅にダンボール箱がおいてあった。
すると忽ちその中から黒い仔犬がクンクン啼きながら顔をみせた。と思うや、今度はその脇から一回り小さい白い子犬が、その黒いのを押しのけるように顔をだした。
瞼が二重になったようなつぶらな黒い瞳がくるくると可愛い。
私たちは、この白い方の仔犬をもらうことに決めて、役場の係りの人に頼んで帰ってきた。
それにしてもこんな可愛い仔犬を冬の真っ盛りに捨てるとはどういう人だろう。
捨て犬だというのに、結構好い首輪をつけている。小さな鈴もついている。近くの小学校の校庭で二三日うろうろしているのを、見かねた人が役場に連れてきたという。
元の飼い主は、何匹か生まれて処置に困り、小学校の運動場に置いておけば、子どもたちの誰かが飼ってほしいと親にでも言うだろうとの、魂胆だろうかと想像してみた。
あくる日、役場の担当者に連絡すると、飼い主は未だに現れず、ひきとっていいとのこと。すぐにでかけた。
係りの若い男性職員が檻の中のダンボールの中から白い方を抱き上げると、黒い方も伸び上がって自分も連れ出せとというふうに何度も跳びあがる。哀れである。できる事なら、二匹ともどもひきとってやりたい。
だが、家人は二匹いっぺんはとても無理よという。
幸い、黒い方にも引き取りたいという希望者が二三あるとか。それを聞いて安心した。
早速、獣医さんの所へ連れて行って診察をしてもらった。二ヶ月ちょっとのメスの柴犬の雑種で、極めて健康、蚤もついていない、暫くは外へ出さない方がいいとのこと。
家へ連れて帰って、さて何処に置くか。
母家と別棟になっているアトリエの片隅で飼うことにした。ここなら、床はタイル貼りなので、当面、どこで排泄されても始末しやすい。傍に薪ストーヴもあって暖かい。
物置から、以前、飼っていた家出猫の残していったサークルとキャリーがあったのを思い出してひっぱりだしてきた。タイルの上にすのこをしいて、その上に断熱材を挟んでキャリーを置いた。
夜は、そのキャリーの中に湯たんぽをいれてやった。仔犬は、その湯たんぽを枕にまるで母親に甘えるように身体を寄せて眠るようである。夜啼きもしない。
絵筆を動かす傍ら、時々、仔犬の方を見る。その仕草をみていると実には可愛い。見ていて厭きる事がない。お陰で筆が止まることしばしばとなる。
一匹の生き物が生活の中に入り込んでくるだけで、同じ家の中が何か暖かく柔らかな雰囲気になろうとは思いもかけなかった。
家人の私へのストレス解消の口砲が、心なしか随分と減ったようでもある。
ー追記ー(2月9日、今日も午後から雪降る。)
コメンをたくさんいただきましたので、遅ればせながら写真をアップいたしました。
「ねー、犬飼ってもいいでしょう?」と、先日、出先から戻って居間に入った私をみるなり、家人が突然告げた。
「また急に、どうして?」と訊く。
「役場で捨て犬を預かっているんだって。明日までに飼い主が現れなければ、希望者にくれるんだって」とのこと。
この山里に暮らすようになって、犬を飼う飼わないは、お互いの間で何度かやりとりがあった。赤松林の中の一軒屋に近い我が家。犬がいれば心強いことは確かである。
だが、排泄の始末、朝夕の運動、家を空けたときの餌やりの心配。
これから私たち自身が、どれだけの期間、人を頼らずに暮らしていけるか。それとおっかけっこをするような飼い犬の寿命等々を考えると、つい二の足を踏んでしまうのだ。
しかし、これまで家人に対して何でも我意を通してきた勝手さ加減が、この頃少々すまなく思われてきた。
そこで、「どんな犬か取り合えず見に行こう」ということになった。
軽トラで役場の裏庭に駆けつけてみると、隅に一坪ほどの頑丈な屋根つきの檻が置いてある。中を覗くと、その片隅にダンボール箱がおいてあった。
すると忽ちその中から黒い仔犬がクンクン啼きながら顔をみせた。と思うや、今度はその脇から一回り小さい白い子犬が、その黒いのを押しのけるように顔をだした。
瞼が二重になったようなつぶらな黒い瞳がくるくると可愛い。
私たちは、この白い方の仔犬をもらうことに決めて、役場の係りの人に頼んで帰ってきた。
それにしてもこんな可愛い仔犬を冬の真っ盛りに捨てるとはどういう人だろう。
捨て犬だというのに、結構好い首輪をつけている。小さな鈴もついている。近くの小学校の校庭で二三日うろうろしているのを、見かねた人が役場に連れてきたという。
元の飼い主は、何匹か生まれて処置に困り、小学校の運動場に置いておけば、子どもたちの誰かが飼ってほしいと親にでも言うだろうとの、魂胆だろうかと想像してみた。
あくる日、役場の担当者に連絡すると、飼い主は未だに現れず、ひきとっていいとのこと。すぐにでかけた。
係りの若い男性職員が檻の中のダンボールの中から白い方を抱き上げると、黒い方も伸び上がって自分も連れ出せとというふうに何度も跳びあがる。哀れである。できる事なら、二匹ともどもひきとってやりたい。
だが、家人は二匹いっぺんはとても無理よという。
幸い、黒い方にも引き取りたいという希望者が二三あるとか。それを聞いて安心した。
早速、獣医さんの所へ連れて行って診察をしてもらった。二ヶ月ちょっとのメスの柴犬の雑種で、極めて健康、蚤もついていない、暫くは外へ出さない方がいいとのこと。
家へ連れて帰って、さて何処に置くか。
母家と別棟になっているアトリエの片隅で飼うことにした。ここなら、床はタイル貼りなので、当面、どこで排泄されても始末しやすい。傍に薪ストーヴもあって暖かい。
物置から、以前、飼っていた家出猫の残していったサークルとキャリーがあったのを思い出してひっぱりだしてきた。タイルの上にすのこをしいて、その上に断熱材を挟んでキャリーを置いた。
夜は、そのキャリーの中に湯たんぽをいれてやった。仔犬は、その湯たんぽを枕にまるで母親に甘えるように身体を寄せて眠るようである。夜啼きもしない。
絵筆を動かす傍ら、時々、仔犬の方を見る。その仕草をみていると実には可愛い。見ていて厭きる事がない。お陰で筆が止まることしばしばとなる。
一匹の生き物が生活の中に入り込んでくるだけで、同じ家の中が何か暖かく柔らかな雰囲気になろうとは思いもかけなかった。
家人の私へのストレス解消の口砲が、心なしか随分と減ったようでもある。
ー追記ー(2月9日、今日も午後から雪降る。)
コメンをたくさんいただきましたので、遅ればせながら写真をアップいたしました。
湯たんぽを入れてもらってどんなに嬉しく、安心したことでしょう。
「散歩」はまだ先かと思いますが気候が良くなると楽しみですね。
名前は何とつけられたのでしょうか。
大事な家族ですね。
ブログの更新が間遠になってしまいました。
この頃、時事問題などについて、何か書くのが虚しく感じられようになりました。
この世間の混沌さに何を言ってみたところでしょうがないなーという気分です。
それよりも身辺のちょっとおもしろかったこと、嬉しかったかったことを、自分のメモとして残しておいた方が、わが身の丈にあったことのように思えてきました。
こうして書いたものに、さりげないコメントをいただくのは、また嬉しいものです。
今日も仔犬を雪の庭に引っ張り出してしばし一緒に遊んでしまいました。
童謡に「いーぬは喜び庭駆け回る」あるとおりです。
名前は、白を流行の韓国読みして、ペク→ペグとしてみましたが、本人(仔犬)はそんな自分の名前などに頓着なさそうです。
役場にあの黒い犬がどうなったか、見に行ってきました。まだもらいてはあらわれないとのことでした。
こちらを見上げて千切れんばかりに尾を振っているのが心残りでした。
こんなところで、こんなことをつぶやくのもばちがいかもしれませんが、イラク戦争といい、捨て犬といい、人間ほど身勝手ではた迷惑な生き物は、他にはちょっとみあたらないようですね。
私も3日は、しもやけになるのではとヒヤヒヤしながら雪に囲まれた体育館で、今年卒業する剣道部の先輩方の追い出し稽古でした。
入部以来、一番頼りになる方々でしたので寂しくもあり、不安でもありましたが、先輩達が居ない分自分達が暴れねば、と、恐らく後輩達には傍迷惑であろう身勝手な気持ちでいたりします。
ですが、恐らくはこんな気持ちがチームを盛り上げ、仲間を支えるのではと思います。今はほとんどが悪い方向に振れている身勝手さですが、いずれ必ず人の心の身勝手さも平穏のために使われるようになると信じていますし、また実行していきたいと思います。
たまには身勝手な想いを持った方が色々面白いかも知れませんよ。
子犬可愛いですよね。
きっと、ご夫婦の会話がワンちゃんのことばかりになるような予感。
癒されていることでしょう。
毎日の散歩、足腰しっかり鍛えてください。
家のワンコも今まで3匹はホームレス犬でした。
犬の親になって26年、困った事があったら、何でもお尋ねください。
名前はつけましたか。
寒稽古、先輩追い出し…、若い息吹と熱気がこちらまで伝わってくるようです。
文武両道。理想的な学生生活ですね。
そうした若さで思い立ったことに挑戦されるのは、身勝手なんかの類ではないと思います。
それこそ、立派な前向きの情熱だと思います。
大いにこれはと思うことをおやりになるようお祈り申します。
さと様、この記事がお目に止まっての暖かいご声援ありがとうございます。
ホームレスの犬を三匹も引き取って育ててこられたのですか。
1匹でも大変だなーと思っていますのに3匹とは凄いですね。
我が家までもこれまで、子供にせがまれたりして、断続的に何匹か飼ってきましたが、私自身としては、仕事の忙しさ等で、熱心にかまってはきませんでした。
しかし、今、多少の時間のゆとりが心のゆとりとなってか、このような小さな生き物にもじっくり接せする気持ちとなりました。
思うままに動きまわっている仔犬は、実にあどけなく可愛いものですね。
なお、名前は毛足が白っぽいので、ペク⇒ペグとつけてみましたが、家人は何だか呼びづらいと言っています。もとより、当の仔犬はそんな呼びかけなどに頓着する様子もありません。
何かありましたら、教えていただきたくよろしくお願いいたします。
王子様のブログの右肩にいつも斜めに構えて鎮座していられるのがご愛犬ですか。
おっしゃるとおり、ただ今のところ目が覚めていれば活発に動いて大いに楽しませてくれています。
今日はこちらも雪でした。寒かったです。
ペグちゃん、なんて可愛いのでしょう。
賢そうですね~。
雪もまた楽し!ですね。
我が家のハチは真っ黒(胸毛が一部白)で、人間で言うともう60歳~70歳くらいでしょうか。
顔は仔犬の時から老けた感じでした。(笑)
尻尾も太くていいですね!元気に育ちますように。
そんな風景を見ながら、仔犬を連れて散歩するのは中々良い気分です。
小耳を立てて我が足先を行く後姿はほんとに可愛いいものですね。
これからも時々登場させたいとおもいます。
ハチ君、私と同世代とのこと、よろしくお伝えください。(笑)