蛾遊庵徒然草

おこがましくもかの兼好法師にならい、暇にまかせて日頃感じたよしなし事を何方様かのお目に止まればと書きしるしました。

「コロナ緊急事態宣言」と太平洋戦争「開戦の詔勅」

2020-05-26 00:32:16 | 時事所感

 本日、ようやく日本全国を陰鬱な気分に陥らせていた緊急事態宣言が解除された。
この間コロナ肺炎に苦しみ亡くなられた方々には心からご冥福をお祈りいたします。
しかし、我が身としては正直、ようやく雲間に青空を仰ぐ気分。

ところで今回の日本全国を閉じ込めたコロナ禍に対して安倍総理自らが私たち日本国民に宣した「緊急事態宣言」を聴いて、
私は何故か「あれっ、これって何かに似てるな…。そうだあれだ。先の世界大戦に際し昭和天皇が宣した「開戦の詔勅」だ。

一国の指導者が、全国民意向かって、一体となった覚悟と行動を求める…。
もっとも「開戦の詔勅」については、当時生まれたばかりの私は、その後の我が運命を劇的に変えたそれが、
いかなるものかその意味を知る由もなかった。

だが、当時、多くの国民は拍手喝采、歓呼の声を上げてこれを迎えたという。
私たちの祖父母が、この詔勅を前にしたときの反応について、故ドナルド・キーン著「日本の戦争―作家の日記を読む」によれば、
伊藤整は、日記とエッセイの両方で開戦を喜び、予想されるアングロサクソンの壊滅に期待をかけた。
高村光太郎、斎藤茂吉、吉田健一等々皆同じだったという。
戦争は、天災ではない。国家と国家が正気で相手が「参りました。もう抵抗は止めます…」と音を上げるまで殺戮しあうのである。
それを承知で、一般の我が祖父母をはじめ、当時の一流の知識人と言われる人々までもが、嬉々として歓呼の声をあげ喝采を叫けんだ。

ところが、今回のコロナ禍は、幸いにも我が国においては、千人を超える犠牲者を出すまでにも至らずに過ぎようとしている。
このコロナ禍に対しては、世界各国が我が国同様、緊急事態宣言をして当該国民の行動を規制し収束をみつつある。
この間、まさに全世界が一体となって取り組んだ観がある。

 ならば、このようないわば天災とも云うべきコロナ禍に対しては、世界中が一体となった行動により、
その災禍を最小限に押さえ込みながら、何故人間同士が、国同士が、白昼堂々正気ではじめる戦争を止めることができないのだろうか…。

 まさにコロナ禍よりも恐ろしく、かつ不可解なのは人間の心ではないか…。

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